第5話、強さと痛々しさ
第5話、強さと痛々しさ
理恵は今までにないくらい仕事を頑張り優との面会時間を作った。
ジャージではないが、なるべく目立たない普段着と、少しだけ化粧をする。
そして、出来るだけ早い時間に病院に出掛ける。
早く会いたいのもあるが、マスコミが少ない時間を狙っての行動でもある。
一応、作家先生だからね、一応。
病院の表には、やはり何人ものマスコミがいた。
目立たないように裏口から病院に入る理恵。
受付で面会をお願いすると優のお母さんが来てくれて案内してくれる。
優のお母さんは普段は老人ホームで介護福祉士をしているそうで、家の家事とかは優がやっていたそうだ。
案内されながらも、お母さんは理恵に御礼を言う。
お母さんも、色々と大変だったのか、かなり疲れているようだった。
優の病室は個室だった。
理恵が病室を訪れると、何か左手で書いていた優は手を止めて、笑顔で理恵に挨拶する。
「あっ、先生。おはようございます。」
嬉しそうな優だったが、無理に笑顔を作っていて見ていて痛々しかった。
お母さんは気を使って病室から出て行って、理恵と優の2人きりになる。
優の左手は汚れていた、ノートに鉛筆で字を書いていたようだ。
右腕と右足がなくなっている以外は、大きな怪我はないようだが……
「休んでいる間に勉強遅れてしまうから、少しでも頑張らないと……」
「……」
別に頑張らなくてもと言いたい理恵だったが、何を言っても優を傷つけるような気がした。
優は笑顔のまま、涙を零す。
「あれ?」
優は涙を止めようとするが、理恵が抱きしめて言う。
「無理しなくていいから、泣いていいんだよ。」
「先生……うええええええええん‼」
泣きじゃくる優。
お母さんにも心配させないように泣くのを我慢していた。
優のいろんな未来の夢や可能性が奪われたのだ。
それだけでなく、仲のいい友達も失った。
普通に生活する日常も出来なくなった。
中学2年生の女の子が耐えられるはずがない。
それでも周りに心配させまいと、笑顔で我慢する優。
理恵の前で泣いたのは、それだけ理恵に心を許しているのだろう。
「ふえええええーーーーん、せんせーーーー‼」
「……………………………………………………………………………………」
何か優に言ってあげたい理恵だったが、いい言葉が思いつかない。
どんな言葉も虚しいだけな気がした。
一応、小説作家先生なのに……
優が泣き疲れるまで、無言で抱きしめる理恵だった。
それからは、優の面会に1度も行けていない理恵だった。
行っても何も話せないからだ。
このままでは駄目だと思う理恵は、困った時のツブヤイター仲間に頼ることにする。
いつもキャラクターの名前やスキルの名前など、ツブヤイターの意見を本当に作品に採用している。
今回は優の事なので、特に選ばれし3人のみに相談することにした。
「いでよ、我に選ばれし3人たちンゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
続く