第15話、今と、これから
第15話、今と、これから
優が学校の帰り、家の近くの公園に来ていた。
鉄棒のところで、一人で片手懸垂をしている。
「あいたっ、つう……」
1回も出来ないうちに、地面に尻もちを付いてしまう。
それでも頑張って立ち上がり、また鉄棒で片手懸垂をする。
特に誰かに言われてやっているのではなく、優が自主的にやっていた。
優は学校の体育は全部見学させられていた。
まあ、優の怪我のためなのだろうが……
だが、運動しないと筋力が付かない、片手片足で生活している優にとっては、残った手足は重要なうえに色々負担させるので筋力が大事だった。
学校側も優に何かあったら大変で、マスコミや世間に叩かれたくないのか、まるで腫れ物を扱うようだった。
クラスメイトとは、距離があった。
別にイジメられていないし、無視されてもいないのだが、気を使われたり遠慮されたりして、以前のように溶け込めていなかった。
優は、また片手で懸垂しようと頑張る。
「うんんんんんんん……」
やはり落ちてしまう優。
それを男の子が見ていた。
小学校の低学年だろうか、金髪碧眼の男の子だった。
ハーフのようだ。
初めて公園で懸垂した時は、もっと大勢の小学生の男の子にからかわれたが、親に怒られたのか、日に日に減っていった。
マンションや町内の人々との関係も、学校と似たような感じだった。
懸垂しようとして地面に落ちる優を、男の子はずっと見つめていた。
落ちた時に見えるパンツを見ているのだろうか……
しばらくすると、赤い長い髪をした女の子が走ってきて、金髪碧眼の男の子の頭を殴る。
女の子は小学校の高学年くらいで、おそらく男の子の姉のようだ。
男の子が頭を押さえながら、蹲る。
「いてえーーーーー!!!」
「何してるの馬鹿!また母さんに怒られるでしょ!!」
女の子は優にペコペコと頭を下げて謝る。
弟の頭を掴み、無理矢理弟も謝らせる。
優は平気だから気にしないで、と二人に言う。
それでも女の子は謝りながら、弟を引っ張って行ってしまう。
「……あっ、ポケットから落としていたや。」
優は落とした紙を拾う。
それは進路希望の紙だったが、志望校は白紙だった。
以前は、まだ将来の事は決めてなかったので、とりあえず公立の高校に進学してから、決めるつもりだったのだが……
色々出来なくなったが、それでも決めないといけない事もある。
私立のバリアフリーが充実している高校を、マリリンが優のために調べてくれた。
だが、お金が高すぎた。
一応、保険もおりて普通に生活するなら困らない程度には、お金があるのだが……
「……帰ろう。」
優は制服の汚れを手で払うと、鞄を持って松葉杖をついて自分の部屋に向かった。
部屋の近くまで来ると、廊下で変酋長の浜口に布団で簀巻きにされてる、まんじゅう先生がいた。
「ぐもおおおおおおおおおおーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!放せはまぐちいいいいいいいいいいいいーーーーーーーーーーーー、ふンゴーーーーー!!!」
「先生、俺を何回印刷所で土下座させるんや。」
また先生が執筆活動をサボって逃げようとしたようだ。
まんじゅう先生は優が帰ってきたのに気付いていう。
「優ちゃん助けてンゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!」
優は笑顔で笑いながら……
「先生、またサボろうとしたんですか?」
優は色々悩み、あまり時間が無く選択していくことになるだろうが……
もう優の選択に自殺という文字は無かった。
続く