胸は痛くても(物理的)が痛ませない(精神的)
(=^・・^=)
とことことこ。
ずるずるずる。
さっき見つけた町までの道を、ちょっとずつ進む。腰の剣が地面と擦れて邪魔臭いが、唯一の武器を手放すわけにもいかないので、意識から外してひたすらに進む。
「・・・・・・」
歩きはじめて少しして気づいたのだが・・・
「一人で歩くのってつまらん」
会話もなければ面白い景色もなく、代わり映えしない道のど真ん中を進んでいる。うん、やることない。なんだよ、せめて魔獣の襲撃の一つや二つくらいあったっていいじゃん。戦闘狂じゃないけども、この体を慣らすためにもある程度は動かしたいんだよ。あと資金調達にも役立つし。
ふと後ろを振り返ってみた。それなりに歩いてきたため、山は少し小さく見える。ちなみにあの木もばっちり見える。
あの後は大変だった。飛び降りれば確実に魔獣の餌になる運命しかないのがわかっていたため、苦肉の策として木にへばりついてちょっとずつ降りた。めちゃくちゃ時間がかかった上にまたまたアレが、ね。擦れて痛かったんだよ。さらに言えば、即興簡易服の胸部がボロボロになってしまい、直すのにも時間を割かねばならず半泣きになったのは、黒歴史にしっかり刻まれてしまった。
つい嫌な思い出に遠い目で山を見ていた俺だが、妙なものを発見した。
「土煙?魔獣が暴れてるのか?」
山を逸れた道のところで土が舞い上がっているのが見えた。しばらく眺めていたが、どうやら近づいてきているようだ。
まさか俺が狙い?いや、この場合は町の方か?どちらにせよ、魔獣だったら肩慣らしにちょうどいい。
しばらくして、土煙を上げるヤツの姿が見えてきた。大柄の熊型魔獣。
「なんだっけあれ。えっと・・・グレートベアーだっけ?」
ただ、見えたのはそれだけではなかった。
「馬車・・・しかも結構豪華なやつじゃん。お貴族様狙いだったってわけか。あれか、ブクブク太った貴族の方がうまいとか、そういう・・・」
考えててアホらしくなったのでこの思考はゴミ箱行きにした。どのみちここで人死を見過ごせるほど、俺は冷淡じゃないんでね。痛ましい光景は見たくない。
さて、やっと初めての獲物と遭遇できたわけだし。
「いっちょ狩りますか!」
なお、俺は(元)冒険者であって狩人ではない。
(=^・^=)