刺された・・・?
(=^・・^=)
「ふむ、想像以上にしぶとかったようだ。だが、残念だったな、剣聖よ―――――――」
「カー、ディス・・・?」
胸の剣は鎧を貫通し、背中から胸を貫いている。そこはちょうど心臓の位置で・・・
「ゲハッ・・・!」
吐血。喉からこみ上げてきた不快感は止まることを知らず、口からは絶え間なく血が溢れ出る。
「お、まえ・・・う、ぁぎり・・・!?」
「あぁそうとも、私は裏切り者さ。ま、君達からしたら、ね」
「ッ・・・」
「私達は始めから仲間でいたつもりもないのだよ!ああ!私達を味方だと信じて戦う君と勇者の、なんと滑稽だったことか!思わず殺そうとしたことなんて、両手両足の指の数でも足らないよ!」
どこか演技がかった口調で語るカーディスの言葉を、ぼんやりとした頭で聞く。俺の目には迷宮の石畳の上に広がる、ドロリとした液体が広がるのを見つめるので精一杯だった。
カーディスが闇色の剣を抜く。俺は自らの血溜まりに倒れ伏して、バチャッと赤い雫を跳ねさせる。直後、あの剣と同色の魔法陣が俺の下に現れた。
「安心したまえ。君の能力は全部いただくよ。これは吸収の魔法だ。見ているといい。面白いものが見られるぞ?」
そう言ってカーディスは俺の腰にある小型の鞄から能力板を取り出して俺の目の前に置いた。
「ッ!?」
目をみはった。ステータスボードに記されているのは上から順に名前、年齢、性別、職業、特殊スキルだ。それが、消えていく。特殊スキルの最下端から、一文字ずつ。まるでなかったかのように。
「フハハハハハッ!素晴らしいッ!腑抜けの剣聖だとばかり見ていたが、下手をすれば現状の勇者をも上回りかねない力ではないか!まさかこれほどとはな・・・感謝するぞ」
消える。
消える。
消えていく。
特殊スキルはもうとっくにない。職業は、もともと[剣聖/冒険者]と書かれていたのに、あとは[剣]の一字だけ。そしてそれもすぐに消えた。
「本物の賢者より力を奪ってからこれまで大した成長ができなかったが、ここで特大の強化ができた・・・これで、我らが悲願にまた一歩近づいたな」
カーディスが闇に呑まれ、僅かの後に見た姿は、悪魔の翼を背に生やした魔族―――――俺達の敵の姿だった。
いつの間にか性別や年齢も消え去り、残った名前が徐々に消えていく。
だれかにつたえなきゃ・・・
このままじゃ、せかいが、みんなが・・・
「さらばだ、愚鈍な剣聖よ。せいぜいあの世で世界の行く末を見ているがいい」
足音が去っていく。
名前もまた、消え去っていく。
もう、だめだ・・・
ごめん、リア。まもって、あげれなかった・・・
そして、最後の一文字が消えて
『死なせない。あなたは、私達の唯一の―――――――』
声が聞こえた。
それを認識した直後、名前もなくなり、俺の意識も途絶えた。
そこに残っているのは、血が流れ続ける名無しの死体と、全てが空欄となったステータスボードだけだった。
つまらんとか言わないで・・・(´;ω;`)