そうして、少女は孤独を選ぶ
前話よりはうまく書けました!
過度に期待はしてほしくないけど、少しだけ期待しててください!
明るくなってきて、人がまばらに出歩きはじめた街の中を駆ける。探すのは、魔力の痕跡。
「ソフィの魔力残滓が残っていればそれでよし・・・なくても、あの魔力と合致すれば・・・!」
子爵に強引に首を縦に振らせた後、俺はソフィの私室を訪れた。その時に、僅かに残っていた残滓。その屋敷の人間のどれとも一致しなかった魔力の持ち主が、今、俺の持つ唯一の手がかりだった。しかし――――
「くそッ!どっちも見当たらねぇッ・・・!」
一般に索敵魔法と呼ばれる、自身の魔力を周囲に薄く放つ方法を取りながら街を回ったものの、まったくそれらしき反応がなかった。
どうする。
ソフィはもう街の外にいる可能性が高くなった。
どうする。
俺だけじゃ情報が足りなさすぎる。
どうする。
屋敷の人間だけでもまだ足りない。
どうする。
もっと、沢山情報を持ってる人間は・・・
◇ ◇ ◇
「マスターはいないかッ!」
走ってきた勢いのままに、扉を足で蹴飛ばして建物に入る。日が昇りはじめ、次第に人が増えてきた時間帯。俺の目に映ったのは、驚愕と苛立ちの色が濃い冒険者達と受付嬢を含む職員達。その中で、一人の受付嬢が近づいてくる。昨日、俺とソフィを担当した人だった。
「あなた、子爵様のお客かなにかしらないけど、常識なさすぎるわよ。調子に乗りすぎなのよ。出ていきなさい」
・・・何を、言って・・・・・・?
「そうだそうだ!」
「ギルマスに気に入られたんだか知らないが、調子に乗るな!」
「お前のようなガキが俺ら冒険者の邪魔するな!」
「常識知らずは出てけ!」
なんだよ。
子供に僻んで、話も聞かないってか。
人の命がかかってるかもしれないんだぞ?
「まったく一体何の―――――」
視界の端にギルマスが一人で二階から降りてくるのが見えた。けど、もう、どうでもいいや。こんな連中も、その親玉にあたるギルマスも、信用しきれねぇ。コイツらのことだ。きっと聞いたって嘘しか言わねぇ。
「は、はは。はハハはハ。ハはハハハハハハハハ・・・!」
「な、なんだ・・・?」
冒険者の一人が、ポツリとつぶやく。
「ハハハハハハハハハハハハハ!そうかそうか!貴様ら冒険者ギルド関係者は揃いも揃ってクズ揃いだな!?あぁ!どうせこんな辺境のギルドなんて、犯罪者くずればっかなのか!なるほどそりゃあ納得だ!もともと真っ当なやつじゃねぇから、たかがガキ一人にそんなにムキになって嫉妬して怒って苛めるしか能がないのか!」
壊れたように次々と言葉を紡ぐ俺を見て、ある者は恐怖にか顔を青ざめさせ、ある者は怒りに青筋を浮かべ、ある者は反論しようと口を開く。
「テメェ!言わせておげば・・・!」
「あ゛?ウソを言ったか?事実、あんたらは話をきこうともせずに揃って俺を追い出そうとしたじゃねぇか?」
「それは・・・」
「待って。何があったの?」
ようやく声を出したのはギルマスだ。
「もう関係ねぇからいいよ、クズどものトップ。せめて、躾くらいはできるだろうからアンタを頼ろうと思ったが、もういい。腐った根性の奴らの手なんか借りねぇ。ソフィは、俺一人で助ける。邪魔して悪かったな。それじゃ、せいぜい俺が成功することでも祈っとけ。失敗したら、その時には―――――」
先程までの喧騒が何処かへと消え去り、訪れたのは沈黙。誰もが、目の前の小柄な少女の言葉に聞き入っていた。いや、聞き入れざるを得なかった。
「その時には、お前ら全員、子爵令嬢ソフィエラ誘拐の共犯者として喧伝してやる」
そう言い放って、少女はギルドを出るために歩を進める。そして、出る直前に振り返って。
「おい下衆ども。恨むんなら、ガキ一人認められない自分を恨めよ」
瞬間、解き放たれた少女の膨大な魔力。少女にとってはたかが片鱗に過ぎない力だが、それは冒険者達を圧殺せんとばかりに溢れ出し、息をすることさえ困難にするかのような錯覚を覚えさせる。
そしてその少女の顔を見れば、そこには激しい怒りに燃える蒼き双眸があった。ただし、それは小さく揺らめくだけの、一目見ただけでは気づかない程度の。だが、それで睨みつけられている彼らには、それがまるで自分達を焼き尽くさんとしているように感じられた。
ひとしきり恐怖を振りまいた少女は、ようやく踵を返してギルドをあとにする。ギルドの中では、職員達は恐怖で軒並みへたり込んで一部は涙さえ浮かべている。冒険者達はあまりの威圧に冷汗を滝のように流して震える足を抑え込もうとしている。
「・・・どうやら、私達は彼女の逆鱗に触れてしまったようだね・・・・・・」
唯一、ギルドの中で彼女の恐ろしさを予感していたギルドマスターがただ一人、苦々しい笑顔を浮かべていた。
なんか、自分の作品って、毎度主人公を苛めてる気がする・・・
自分にドS疑惑が浮かびそうで戦々恐々してます。
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