迷宮、冒険、そして・・・?
拙い文章ですが、楽しんでいただけると嬉しいです!
「はぁっはぁっ、うっ・・・」
走り続けているせいで足がつりそうになりながらも必死に走る。
チラリと後ろを流し見すればそこには、夜の闇にも負けない殺意を漲らせながら私に鋭い牙を突き立てんと迫る、私の倍もある大きな魔獣の姿があった。
「だ、だれかっ!助けッ・・・!?」
とうとう足がもつれてみっともなく地面に倒れ込む。
もう、駄目だ・・・
そう諦められたなら、楽だったのかな・・・
わかってる、救世主なんか現れたりしないって。
でも・・・
「まだ、しにたくないよぉ・・・!」
瞳から溢れた雫が頬を伝う。
仰向けに転がると、魔獣が口を広げて立っていた。
あぁ、結局、死んじゃうんだな・・・そう覚悟を決めた。
そしてとうとう私の頭は噛み砕かれ―――――――――ヒュッ
私の鼻先数センチのところにある魔獣の頭部。それが、胴体ごと真っ二つになった。切断面からはおびただしい量の血液が飛び散って、私を赤く染めてゆく。
「剣聖の技さえ必要なかったか・・・っと、大丈夫かい?」
両断された魔獣、その先に見えたのは、よく目を凝らさないと見えないくらいに夜闇と同化した人の姿。
「あなた、は」
過度の疲労が押し寄せてきたせいで頭が霞む。それをなんとか堪えながら聞いたのは
「お―――――いや、わたしはただの、悪役だよ」
鈴を転がしたような、幼げでいて美しい声色だった。
悪役を名乗る人間。夜闇がひらけて月明かりが照らし出したのは、長い銀髪を揺らす、青玉のように澄んだ瞳の少女の姿。
数日後、こんな噂が流れはじめる。
『男しかなったことのない剣聖の技を使う少女が現れた』と。
その正体を暴こうと躍起になった人間もいたが、ついぞ見つかることはなく、次第に噂は消えていった。
"剣聖ヘル"が死亡して、一ヶ月が経ったころのことだった。
◇ ◇ ◇
その日、俺達はある迷宮内を探索していた。
ヴァレンティア大迷宮。世界に5つしかないS級ダンジョンの一つだ。
「そろそろ7階のフロアボスだな」
「わかってるよ。ヘルってば、心配性だねぇ」
「お前が楽観的過ぎなんだよアティリア。勇者だからって、油断は禁物だぞ?」
アティリアは俺の忠告をカラカラと笑って受け流した。まともに聞く気はないのかよ・・・はぁ。
「おい、賢者に聖女も、こいつになんか言ってやってくれよ」
「私は面倒はきらいなのでな。御免被る」
「あはは・・・わたしも遠慮しておきます」
どうやら味方はいないようだった。
十数分後。
「リア!いつもお前は危なっかし過ぎるんだ!勝ったからいいものの、突貫するなと何度言ったらわかる!」
「えへへ〜、ヘルが守ってくれるから大丈夫だよ〜♪」
妙に機嫌よく反応したリアを見て、溜息を吐く。
「まったく・・・」
危なっかしくて見ていられない。普通なら投げ出すところだが、俺にはそれができなかった。
(はぁ、これが惚れた弱みってやつかねぇ・・・)
この殺伐とした世界に持ち込むべきではない恋愛感情。しかしそれ〜を一度抱いてしまった以上、それも折り合いをつけていくしかない。
そう考えながらリアの方に一歩近づいて―――――――――
崩れた
突然の浮遊感にただただ絶句したまま落ちてゆく。周りを見れば、賢者カーディスもまた落ちていっている。
「ヘルっ!?ヘルっ!!」
よく響く声が俺を呼ぶが、反応を返すような余裕もなく、勇者と聖女の姿が遠ざかっていく。
そして、永遠にも思えた浮遊の時間は唐突に終わりを告げる。
―――グシャッッ!
自分の体が奏でた生生しい効果音を最後に、俺の意識は暗転した。
・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
「ぅぐっ・・・!くそ、全身が痛くてたまったもんじゃないぞ・・・」
落下からどれほど経っただろうか。上体を起こして自身の状態を確認して
「ふむ、想像以上にしぶとかったようだ。だが、残念だったな、剣聖よ―――――――」
胸に、血で濡れた闇色の刃が生えていた。
期待できる、面白そうと感じた方!
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せめて一つだけでも・・・!
え?だめ?