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短いお話

カフェテリア・リプレイ

作者: 蒼井托都

コーヒーの香りに包まれたカフェの喧騒が、二人から遠ざかっていくように感じた。

ころころと、ストローでグラスの中の氷を転がしながら、

水野は向かいの席に座っている岩井を見ていた。

水野の左手に、そして岩井の左手にも、薬指には指輪が光っている。


「まさか、こんな所で会うとはねぇ」

水野は心持ち明るく、を心がけて岩井に話し掛けた。意識しなくても、すんなり笑顔を浮かべられた自分に驚く。

その昔、水野は一色燈子から岩井燈子になるのが夢だった。でもその夢は結局夢で終わった。そして彼女は水野燈子になった。

それからこんなにも長い時が経っていなければ、きっと岩井とは他愛ない会話すらすることが出来なかっただろう。

岩井も水野も、それぞれ別の相手と出会って新しい一日を歩み続けている。

この再会のタイミングは、きっと二人にとって丁度良かったのだろう。


来月に子供が産まれるんだと、岩井は少しためらいがちに切り出した。ためらいつつも、その表情は優しく、幸せそうだ。

昔の恋人への遠慮に、一握りの誠意が勝ったような、芯の強さを感じさせる強い口調だった。

水野は岩井が今の生活のことを話してくれたことが、素直に嬉しいと思えた。

きっと岩井と別れてすぐの水野だったら、こんな話題を振られても正気ではいられなかったと思う。

けれども、年月は確実に水野の人間性を変えてくれた。年月だけではない、岩井と別れた後に出会えた夫のお陰でもあるのかも。

彼は、夫の水野は、今こうして自分が昔の恋人と語り合っていることを知ったら、怒るだろうか。怒るだろうな。たまたま同じ空間の中で再会しただけだ、という言葉を頭の片隅で用意しておく。

きっと、それでも受け入れてくれるだろうなんて、都合の良いことも思ってみたりするのだけれど。

やっぱりあたしは岩井との日々はこれからも忘れられないだろうと、水野は思った。

でも、ここで、少しは吹っ切れそうな気もしている。


そしてそれは、いつまでも水野の胸の中だけに秘められることだろう。

やっぱり言うべきじゃなかったろうかと、少々不安げな表情を浮かべている岩井に、水野は心から贈ることができた。

おめでとう。

それからは微笑んだまま、言葉にすることはなかった。

あなたとも、幸せになりたかったな。

どうか、幸せに。

2006年頃に書いていた短いお話が続きます。えーと・・・うん・・・うん・・・(自分自身で非常にコメントしづらい

当時の自分がどんなことを考えて書いていたのかはもう思い出せないのですが、この話の前後とかを考え出したりしてしまいそうです。若干まず全年齢で公開していいのか考えるテイストになりそうなのでいろいろ慎重に考えよう。うん。

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