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隣の港南中央ちゃん!  作者: なっかのう
シーズン1
3/4

第2話「接近」

 理科の授業。クラスでの席とは変わる。実は、2年になって最初の理科なので、誰と同じ席になるかは知らない。


「えっ千南さん......!?」

「あら、同じ班じゃない。よろしくね神尾くん」


千南さんと同じ班になった。

 千南さんは、同じクラスではあるものの、夏休みまで関わったことがなかった。それなのに、なぜ急接近してきたのか。俺にはよくわからなかった。まあでも、特に悪いことはないようだし、しばらく関わってみることにした。


最近、新人教師で入ってきた先生が理科を担当するらしい。


「ねえ神尾くん、なんかあの先生すごいぎこちないわね」


さすがに新人教師なので結構緊張しているようだ。


「うん。まあでも、新人だからしょうがないんじゃない? 全然関係ないけど、この先生なんかインドカレー屋にいそうな顔だね。」

「ほんとに全然関係ないわね」

「ごめんなさい」


 なんだか、インドカレー屋さんにいそうな顔なので、バイト経験があるかめちゃくちゃ気になる。先生がぎこちないのもあったが、インドカレーのせいで授業には集中できなかった。


「お腹すいたなぁ。インドカレーのせいだよ」

「いつまでそれを引っ張るわけ? いいかげん、授業に集中したらどう?」

「ごめんなさい」


 今日何回千南さんに謝ったかわからないが、ここでチャイムが鳴った。


 すると、轟音が校舎に鳴り響いた。そう、毎日お昼の時間になると、「昼食ダッシュ」と呼ばれる購買部への集団がダッシュする光景が見られる。


「すごい音だなぁ。まあ今日は弁当だし、関係ないけどね。」

「行くわよ」

「ええっ!? 今日俺弁当だよ?」

「ほら、行くわよ」


 千南さんは、俺を強引に購買部に連れて行った。

そのとき千南さんの後ろに居てふと思った。千南さんはいい香りがする。俺は香水について詳しくないので、会社の名前1つだけしかわからないが、なんというか桃のような、ほのかに優しい香りがする。


「なにボーッとしてるの? 行くわよ?」

「わっ、ごめんなさい」


階段を下って、購買部に到着した。


「あーあ。もう全然ないじゃないの」

「うう。弁当食べたかったのに」

「あなたのせいよ。パンを奢りなさい」

「ごめんなさい、奢ります」

「って言うのは冗談よ。さあパン買えたし、いきましょ」


 なんというか、千南さんがめちゃくちゃ可愛く思えた。俺が港南ちゃんなのが好きなのを知っているのに、めちゃくちゃ接近してくる。どうする、神尾? 俺は本当にこれでいいのだろうか。


 千南さんと知り合ってまだ3時間ほど。初めて近くで一緒にご飯を食べることになった。

「千南さん、それ何のパンですか?」

「クリームパンよ。購買部のクリームパンは、クリームが多くて、コーヒーと合って最高なのよ......」

「へぇ......今度買ってみます。」

「ところで、神尾くんはコーヒー飲めるの?」

「えっと、結構苦手ですね」

「じゃあ飲んでみなさい。私のコーヒーを」

「ええっ! 流石にまずいですよ!」

「あら、私の選んだコーヒーがまずいとでも?」

「そうじゃなくて、ちょっとそれは!」

「なにを嫌がってるの? 嬉しいでしょ?」

「うぅっ!」


 千南さんが口付けたコーヒーを無理やり飲まされた。これは間接キスというのだろうか。いや、正真正銘そうだろう。このままでは、本当に千南さんのことが好きになってしまう。俺は港南ちゃんのことが好きなのに。


 今、とてももどかしい。港南ちゃんが好きだったのに、千南さんにチヤホヤされて、本当にもどかしい。これが葛藤なのか。初めてこの感覚がわかったような気がする。嬉しいようで辛いような、なんだか頭が混乱してくる。


「どう? おいしい?」

「お、おいしいです」

「なによ、なんかまずそうに言うじゃない」

「だって」

「言ってごらんなさい」

「間接......キッ」


「はーい授業始めますよー」


 ジャストなタイミングで授業が始まった。

千南さんは少し席が離れているので、教室移動するときしか喋れない。


「神尾くん! なんか千南ちゃんと話してたでしょ!」

「う、うん話してたよ」

「なに話してたの! わたし気になる!」

「えっとぉ、あの、その......」


 まずい。港南ちゃんが追求してきた。このままだと、港南ちゃんに嫌われてしまう!


「はっきり言って!」

「一緒にご飯食べてただけだよ。他は何もしてない」

「なら許す!」

「なにを許すの」


 なんとか、その場をしのいだ。本当に危なかった。ただ、港南ちゃんは僕のことが気になっているような気がした。気になってない人に何を話してたか追求するわけがないので、これは脈アリ、つまり俺に興味があるのかもしれない。


 もうこの時点で相当濃い1日だが、まだお昼だ。午後はどんな風になるのか。楽しみでもあり、怖くもある。


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