表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
95/177

拍手 095 百九十二 「別れ」の辺り

 自分の部屋に閉じ込められて、もう半日。彼がいなくなってから、そんなに時間が経っているのかと思い知らされる。

 もう、この里のどこにも、彼はいない。その事が、こんなにも苦しいなんて。

「ツイクス……ツイクス……」

 自分がつけた、彼の名前。その名を呼べば、ぶっきらぼうな彼が振り向いてくれた。それが嬉しくて、何の用事もないのに彼の名前を呼んだ事も多い。

 でも、もう振り向いてくれる彼はいない。

 あの時、あのユルダの女は、彼をなんと呼んだか。確か……

「ヤード……」

 それが、彼の本当の名前だったのだ。でもいい。ユルダの名前など、彼には似合わない。自分がつけた「ツイクス」という名の方が、似合っている。

「う……うう……うええ……」

 先程から、彼の姿を思い出しては泣いてばかりだ。きっと、自分はこの先一生彼を思い続ける。

 祖父や両親などは、時間が経てば忘れるだろうと思っている。でも、この想いは決して消えない。時間になんて、負ける訳がない。

 他のウェソンの里から、嫁にほしいと言われているのも知ってる。でも、この里を出る気はないし、他の男のところに嫁に行く気もない。

 決して忘れない。彼の事は。きっと彼も、私の事を憶えていてくれる。

 そしていつかきっと、私を迎えにきてくれるのだ。種族の壁なんて、なんてことない。子供が出来なくたって、どうとでもなる。

 そうだ、彼が迎えに来てくれるその時まで、自分は自分らしくいればいい。

「そうよね、ツイクス。私達の絆は、そんな簡単に切れたりしないわよね?」

 いつまでも泣いていては駄目だ。ちゃんと前を向こう。

 前を向いて、彼が迎えに来てくれるのを待とう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ