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拍手 061 百五十八話 「懐かしくない故郷」の辺り
しろやぎさんからおてがみついた
くろやぎさんたらよまずにたべた
しかたがないのでおてがみかいた
さっきのてがみのごようじなあに?
「って、やったら怒るんだろうなあ」
セロアは、ティザーベルからの手紙到着時に、つい童謡が頭に浮かぶ。珍しい相手から珍しいものが届いたものだ。
ギルドが郵便業務を担っていると言っても、使う人は多くない。基本的に自分が生まれ育った街を出ないので、余所の街に手紙や小包を送るような相手がいないのだ。
セロアにしても、今回のティザーベルからの手紙が初めてもらった手紙だった。嬉しいような、悲しいような、複雑な気分だ。
「やっぱり携帯……戻ったら、絶対作ってもらわないと」
魔法道具の開発は難しいのだろうけれど、知った事ではない。本人は怒るだろうけれど、それもまた一興。
「頑張れよ-」
誰もいない通りから空を見上げて、セロアは呟いた。
寮の自室に戻って中身を読み、仰天するのはもう少し後。誰かに相談したくても、相談出来る相手がいなかった。




