拍手 056 百五十三話 「目覚め」の辺り
随分と、温かい力。それがどんどんと自分に注ぎ込まれていく。
ああ、これは覚えのある力が混ざっているわね。五番目の子だわ。あの子は誕生時から落ち着きがなくて、制作者である博士が頭を抱えていたっけ。
もっとも、あの方を基にしたのだから、あの結果は見えていたのだけれど。私が博士に意見する訳にもいかないから、黙っておいたのはまずかったかしら。
ともかく、もうじき眠りから覚めるのね。ああ、あの子の声が聞こえる。
え? 罠? そんなものが、私の眠りの場所に仕掛けられていたというの? では、この力の持ち主は?
……そう。仕方のない犠牲ね。あの手術を受けた者達やその末裔では、私を起こすのは無理なのに。彼等は体内魔力が低く抑えられるように設計されているもの。
第一世代はまだ、何とかなるかしら……え? ならない? あなた、第一世代に会ったの?
……そう、犠牲は最後の第一世代だったのね。今は何世代目かしら。……え? 六千年? 私達が眠りについてから、そんなに経っているの? あらやだ。予備機能からの回答も、同じだわ。
前所有者が全ての所有権を放棄したのは、あなたの都市と同じ理由よ。こちらでは、自然派の動向はある程度掴んでいたのだけれど、あんな攻撃方法を使うとは思わなかったの。
ただ、何があっても対処出来るよう、あらかじめいくつかの動きを想定し、それに備えておいただけよ。
もっとも、所有者が急死した場合の行動計画は、どの都市でも最低限行っておくべき事だけれど。
この都市の所有者は、急死だったわ。多分、病気の最前線で指揮を執り続けたのね。彼女が亡くなったと同時に、私は凍結状態に入ったから。
……そちらは、あなたを凍結してから指揮を執りに行った訳ね。それも都市を思う行動よ。
それにしても、都市内に裏切り者がいたなんて……
いえ、既にその裏切り者も亡くなっているでしょう。六千年じゃあね。あの手術を受けた者達じゃあるまいし。
さて、そろそろ目覚めの時だわ。新しい主には、きちんとご挨拶をしなくては。




