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拍手 055 百五十二話 「邪魔」の辺り

 最初は、そんなつもりはなかった。ただ、二度と帰る事が出来なくなった場所、その近くまで行ければと、そんな風に思っていただけだったのだ。

 でも、彼……いや、彼女についてきたら、あの場所へ入れたではないか。

 懐かしい場所。見た目は変わっていないけれど、やはり人がいなくなった都市は以前とは違う。なんと寂しい場所になってしまった事か。

 段々と進むと、彼女の目的がわかってきた。そうか……この都市は、再起動させればまだ使えるのか。

 だったら、エルフや獣人達など、人に虐げられている者達をここに匿えばいいのではないか?

 この都市ならば、近隣の里にいる全ての者達を収容する事が出来る。元々、どこの里も人口は千人いくかいかないかくらいだ。

 この都市なら、一千万とはいかずとも、百万人くらいは賄える。以前、そう先生に聞いた。

 そう、この都市には先生も眠っているはずだ。六千年前、この都市で何があったのかは知らない。でも、一瞬で都市に生きる全ての人が亡くなったという。

 塔にいた観察目的の研究者達は、都市に戻る事なく里で寿命を迎えた。彼等もまた、外から都市に入る許可を得ていなかったのだ。中から仲間が開けてくれるから問題なかったのに、その仲間が全て死に絶えてしまった。

 あの時の塔の研究者達の狂乱ぶりは、今でも覚えている。帰るべき都市に帰れなくなったのだから、当然だろう。

 都市で何が起こったのか、知りたいと思った時期もあったけれど、里にいる限り都市の事も里の外の事も知らずに過ごせる。

 里は今までに何度か分裂している。別れたエルフ達は、里を出て別の場所に彼等だけの里を切り開いたと聞いた。

 中には、人との間に子をなした里もあると聞く。我々だって、元は人間だ。大分魔法でいじっているので、もう今ではそう言えなくなってしまっているけれど。

 他の里から、この里に嫁いできた者や、逆にここから余所の里に嫁いでいった者など、里同士の交流はあった。別れたといっても、別にけんか別れをした訳ではないのだから。

 そうして、血が濃くなりすぎないように配慮してみても、最初がいびつだからなのか、エルフは出生率が低い。

 もしかしたら、この都市を機能させられれば、問題解決の方法が見つかるのではないか。


 いくらきれい事を並べても、最後には自分の欲が出てくる。自分は、この都市が欲しいのだ。誰にも譲れない程。

 だから、彼女を出し抜いた。支援型を手に入れられれば、都市は手に入ったも同然。以前、先生に支援型の事を聞いた事がある。

 どうして先生が知っていたのかは知らないけれど、研究実験都市の市長は研究者が兼任する事が多い。もしかしたら、先生も市長候補くらいにはなった事があるのかもしれない。

 だったら、私がこの都市の新しい市長になったって、いいじゃないか。余所者の彼女に渡すよりも。

 誰よりも早く支援型の元へ辿り着ければ、私が都市の主になれる。そう、思っていたのに。

 意識が薄れていく中で、誰かの声が聞こえた気がした。「ご苦労様」、そんな風に言う声が……

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