拍手 051 百四十七話 「特産品」の辺り
エルフの里は、いきなりやってきた珍客の話で持ちきりだった。
「聞いたか? あの客、族長の屋敷に泊まったらしいぞ」
「本当か!? ユルダなんぞを族長の側に置くなんて……」
「だが、カルテアンが、あのユルダはいいユルダだって言っていたぞ?」
「ふん! 里一番の剣士だか何だか知らないが、あいつは外に出てばかりいるからユルダの影響を受けてるんだろうよ」
「お前、剣の腕でカルテアンに敵わないからって……それはないだろうよ」
「ちが! 違うっての!! おい! 本当に違うんだからな!!」
あちこちで固まっては、奇妙なユルダ「ベル」の話題で盛り上がる里の者達。そんな彼等を横目に見ながら、フローネルは自宅への道を歩いていた。
それにしても、こんなところでも「彼」に助けられるとは。「彼」の話題で持ちきりになったおかげで、誰もフローネルに気づかない。おそらく、夕べのうちに塔に入ったハリザニールも、そこまで辛い視線にさらされはしなかっただろう。
妹を思うと胸が張り裂けそうになる。両親が消えてから、自分が妹を守らなくてはと必死だった。剣を取ったのも、妹を守る力が欲しかったから。
両親がいなくなった時、ハリザニールはまだ幼かった。親との思い出も少ない妹が不憫で、甘やかしていた自覚はある。その結果がこれとは。
これからは、塔が妹を良い方向へと導いてくれるだろう。そして、自分は里を出る。今までも外に出る事はあったが、最後は里に帰ってきた。でも、これからはそうはいかない。
それでも、ハリザニールが追放を食らうより、自分が追放された方が生き残る確率が上がる。命を落としたとしても、それが自分の罪故なら致し方ない。
フローネルは、自宅に戻って一息吐く。これから荷物を整理して、この家も処分しなくてはならない。
空き家になったら、この家は取り壊されるだろう。里ではあまり家は壊されない。中古の家屋に手を入れて、何年も大事に住むものだ。
だが、この家はフローネルの両親が建てた家で、彼等もまた、里の者達からは疎まれていた。
それに、今回のハリザニールの件もある。フローネルも、女だてらに剣士を務めている事に対して、眉をひそめる者も多い。
本当は誰かに家を引き継いでもらいたいけれど、誰も望まないだろう。 フローネルは少ない荷物をまとめると、残りは処分するよう手続きをする為家を後にした。




