拍手 049 百四十五話 「裁き」の辺り
荷馬車に揺られながら、道を行く。晴れ渡った空は青く、見上げた目に染みた。
「参ったね……」
まさか、言葉の通じない場所にいたとは。よもや何かおかしな術でも使われて、こっちの頭が変になったのかとも思ったが、試しに拾った棒きれで地面に文字を書いてみたが、相手には読めなかった。
これはもう、全く違う言葉の場所にいると思う他ない。
レモは、ちらりと御者席の方を見る。まだ若い男女で、おそらく夫婦だろう。時折何かを話し合っては楽しそうに笑っている。
とりあえず、普通の暮らしをしている人が笑っていられる場所なら、何とかなるだろう。ここにも魔物は出るようだが、先程程度のやつなら、自分一人で問題ない。
御者席にいる二人は、魔物から助けた事に恩義を感じたのか、身振り手振りで荷馬車に乗れと言ってきた。このままどこに運ばれるのかわからないが、多分彼等の住む村なり街なりだろうと思う。
いい人そうに見せかけて、実は悪人という類いは、なんとなく「臭い」でわかる。御者席の二人には、そうした臭いは感じなかった。どちらかと言えば、そうした悪い連中に騙される側ではなかろうか。
そんな事を考えつつ荷馬車に揺られていると、前方から悲鳴が聞こえた。女性のものだ。
「★@※*◎!!」
何を言っているのかはわからないが、緊急事態らしい。男性もこちらを見て叫んでいる。
今度は何が出たのやらと思えば、どうやら再び魔物のお出ましのようだ。
「意外と忙しいねえ……」
場所が変わっても、やる事は同じだ。魔物なら、多少痛めつけても文句は言われまい。
レモは愛用の武器を構えて、急停車した荷馬車から降りて前方へと歩き出した。




