拍手 047 百四十三話 「里の中」の辺り
道を歩きつつ、レモは周囲を見回した。
見知った植物が殆どない。もっとも、彼がいた故国ユラクットも帝国も、これ程湿度がある場所は珍しい。
「気候が違えば、植生も変わる……か」
だとするなら、自分は随分と遠くにいるのではないだろうか。帝国内でなくとも、モリニアド大陸のどこかであれば、自力で帝国まで帰る手もある。
だが、ここは本当に自分の知っているモリニアド大陸なのだろうか。背筋に嫌な汗が流れる。
魔法に関して、レモはあまり詳しくない。だが、昔小耳に挟んだ話では、こことは全く別の世界へと人を飛ばしてしまう術があるという。
「……そういや、嬢ちゃんも生まれる前に別の世界で暮らしていた記憶があるとか何とか、言っていたな」
ここでそれを思い出すのは、偶然なのか。嫌な考えに囚われそうになったので、レモは頭を振って追い払う。
自分が弱気になってどうする。どんな場所でも生き抜いて、ヤード達と合流しなくてはならないのだ。
もう一度前を見据えて、一歩足を踏み出した途端、道の向こうから何やら騒ぎが聞こえる。
走って行くと、どうやら荷馬車が魔物に襲われているらしい。オオカミ型の魔物だ。レモは愛用の武器を構えて、魔物に向かって行った。
決着はあっという間についた。襲われていたのは、荷馬車で移動していた若い男女の二人組だ。若夫婦か兄妹といったところか。
怯えて震える二人に、レモはのんびりと声をかけた。
「怪我はないかい?」
だが、返ってきた声に、彼の目が見開かれる。
「☆@△◎*!」
「☆@△◎*! @◆○★◎※!!」
彼等が何を言っているのか、全く理解出来ないレモは、思わず空を見上げた。




