表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「オダイカンサマには敵うまい!」拍手の中身  作者: 斎木リコ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

171/177

拍手 171 二百六十八「思い煩う」の辺り

 帝都に戻って日常が帰ってきたと思っていたセロアだが、そうは問屋が卸さなかった。

「情報共有制度の構築……? 今頃?」

 手元に来た辞令を見て、ふるふると震える。

 確かに、自分が帝都に呼ばれたのはこれを提案したからだが、確か各街を物理的に結ぶ手段が見つからずに、暗礁に乗り上げていたはずだ。

「問題が解決されたのかしら?」

 ともかく、辞令が出た以上部署異動をしなくてはならない。ギルドに入ってここまで、ずっとカウンター業務を中心にしていたので、少し寂しい思いがある。

 今のギルド本部は、カウンターも裏も本当に優秀な人材で一杯だ。一時期はどうにも使えないような者ばかりになっていたけれど、数度にわたる人員整理の結果らしい。

 そんな働きやすくなった職場を後にするとは。そんな事を考えつつ、荷物整理をしていると、三ヶ月前に帝都に来た同僚ターシャが声をかけてきた。

「おはよう、セロア。……どうしたの? 何だか暗い顔をしているけれど」

「ああ、ターシャ。実はね……」

 先程受け取ったばかりの辞令を見せる。彼女は文面を見ていき、段々と顔をこわばらせた。

「え……これ、噂では聞いていたけど、本当にやるんだ?」

「うん、まあね」

「しかもこんな中途半端な時期に異動なんて……セロアも大変ね」

「……まあね」

 システムの提案者だという事は、ギルドでも一部の人間しか知らない。セロア自身、吹聴しないので、ターシャも知らないのだ。

 その後もあれこれ話しながらも、お互い手を動かす。そろそろギルドを開ける時間だ。ギルドはどこも、朝が一番忙しい。

 割のいい依頼を受けようと、冒険者達が殺到する。その姿を目の端で見ながら、セロアは最後の荷物をまとめた。

「あ、セロア! おはよう!」

 友達の冒険者、ザミとシャキトゼリナだ。彼女達の後ろには、パーティー「モファレナ」のメンバーも勢揃いしている。

「おはようザミ、シャキト。依頼を受けに来たの?」

「うん、ちょっと長くお休みもらっていたからさ」

「新しい依頼を探そうって事になったの」

「そっか。いい依頼がある事を祈ってるわ」

「セロア、その荷物、何?」

 シャキトゼリナが、めざとくセロアの手元の荷物を見た。

「うん、部署異動があって」

「部署異動!?」

 ザミとシャキトゼリナの声が、朝の忙しいギルド内部に響く。一瞬、辺りが静まりかえった。

 何事かとこちらを見てくる冒険者に愛想笑いをし、ザミ達をカウンターに引き寄せた。

「詳しい事は後で話すから!」

「う、うん」

「今日の晩ご飯、一緒出来る?」

 訳がわからず頷くザミと、ちゃっかり夕飯の予約を入れるシャキトゼリナ。セロアは笑って頷いた。

「今日は他に予定がないから大丈夫」

「じゃあ、その時に」

 そう言うと、彼女達はカウンターから離れていく。ギルド内は、いつの間にかいつもの喧噪に包まれていた。


 その夜、異動の事やティザーベルの事を洗いざらい話さざるを得なくなり、大変な思いをしたセロアだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ