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拍手 159 二百五十六「イネスネル」の辺り

「さあ、皆の力を合わせて、さっさとやってしまいましょう」

「了解っす」

「そうね!」

「このままでは、イネスネル姉様がお可哀想ですもの」

「あの、あの、が、頑張ります」

「ふっふっふ、待っていてね、姉様! このレポザレナが――」

「ヤパノア、いっきまーす」

「ちょ、ちょっとおおお?」

 支援型が七体そろい、イネスネルの記録媒体に干渉する。目的は六千年分の記録の消去だ。

「感情、認識、事象、全てが削除対象です。間違っても、六千年前の記録には触れないように」

「姉様、消去箇所の一番過去の部分は、どこに設定するっすか?」

「そうね……事象をオープン。六千年前まで遡って」

 ティーサ達の前に、六千年前の一年間の記録が浮かび上がる。

「ああ、ここ。ここなら問題ないわ」

「襲撃の一週間前っすね。でも、目覚めたイネスネル姉様に、混乱が生じる危険性があるっすよ?」

「問題ありません。この後、騒動が起こって都市ごと眠りについたと上書きしておきます」

「記録改ざん……さすがっす」

「これは、私にだけ許された力ですからね……」

 一番都市は、地下都市の中でも最高の防御力を誇った。故に、他の都市が制圧された時の事を考えて対処出来るだけの力が支援型のティーサにも搭載されている。

 もっとも、その一番都市も襲撃者達に陥落したのだけれど。

「あの場合、陥落は仕方ないっす。どう考えても、都市の上層部が裏切って内通していたとしか考えられないっす。僕達は、人間を直接殺すにも主の許可が必要っすから」

「ええ……そうね……」

 伝染病により都市機能が麻痺。そこを突いて、内通者に導かれた襲撃者達が都市機能を奪いに、もしくは破壊しに来た。

 だが、二番都市以外はギリギリで襲撃者の手に渡る前に都市が凍結される。そうなっては、外部からの一切の制御を受け付けない。

 だからこそ、破壊を目的に多くの罠を仕掛けたのかもしれない。

「それにしても、何で内通者も襲撃者も、都市を壊滅させたのと同じ伝染病で死んだんっすかね?」

「さあ? 彼等の薬が万全ではなかったのでしょうよ」

 自分達が仕掛けたもので自分達が滅びる。愚か者達には似合いの最期だ。

 七人総出で行ったせいか、イネスネルの記録消去と一部改ざんは無事終了した。

「さあ、後は主様に起こしていただくだけですね」

 そう呟き、ティーサは全員を連れて二番都市を後にする。明日になれば、ティザーベルにイネスネルを起こしてもらえるだろう。そうすれば、また妹達と賑やかな日々を過ごす事が出来る。

 明日の事を思い、ティーサは清々しい笑みを浮かべた。

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