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「オダイカンサマには敵うまい!」拍手の中身  作者: 斎木リコ


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131/177

拍手 131 二百二十八「西へ」の辺り

 シミュレーターの運転適性判断は、ティザーベル、レモ、フローネル、ヤードの順で良かった。

 というより、後ろ二人はほぼ「適正なし」の烙印を押されている。

「これ……どうしよう?」

「二人でなんとか回すか?」

「うーん……長距離の運転って、疲れるんだよね。だからなるべく交代でいきたいんだけど……」

「じゃあ、適性とやらを無視して、覚えさせるだけ覚えさせておこうぜ。体で覚えりゃなんとかなるだろ」

「そう……かなあ?」

「馬だって馬車だって、そんなもんじゃねえか」

 レモの言葉に、馬や馬車と車は大分違うと言いたかったが、どこがどう違うのか、うまく説明出来る自信がない。

 結局、レモの言う通りに運転技術を覚えさせるだけ覚えさせた。前世の教習所でも、どう見ても免許与えちゃだめでしょって人も、何とか取っていたのを思えば、彼等でもどうにかなるかもしれない。


「そんな事を思った頃が、私にもありました……」

「嬢ちゃん、何ブツブツ言ってんだ? 気色悪いぞ?」

「うん、多分疲れてるんだよ。そうだよ」

「そ、そうか……」

 レモはそれ以上何も言ってこない。ティザーベルが疲れている一番の原因は、彼の甥でもあるヤードの運転のヤバさだ。

 何故、障害物に突っ込んでいくのか。いくら頑丈に作ってあるとはいえ、大木に突っ込んで無傷でいられるとも思えない。主に乗っている人間が。

 何故、湖があるとわかってそちらに行くのだ。あと一歩遅ければ、ほとりから湖にダイブしていた。咄嗟にサイドブレーキを引いた自分を褒めてやりたい。

 道なりに運転するだけでいいのに、何故あんなに速度を出すのか。ブレーキを踏めと言ってもさらにアクセルを踏み込む始末。ペダルの位置を覚えていないのか。

 ヤードが運転した小一時間だけでこの有様だ。あの小一時間だけで、どれだけ寿命が縮んだのだろう。

「とりあえず、ヤードはなしで」

「……そうだな」

 本人も自覚があるようで、落ち込んではいるけれど、再度のチャレンジを申し出てはこない。適性診断は、間違っていなかったようだ。

 次はフローネルの番なのだが、彼女は彼女で緊張しすぎてどうにかなりそうである。風呂場では力を抜けと言ったけれど、果たしてどうなる事やら。

 天が味方したのか、休養にあてろとばかりに雨が続いている。これ幸いと出発を遅らせる事にしたというのに。

 どうしてこう、トラブルは向こうからやってくるのだろう。

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