表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
129/177

拍手 129 二百二十六「正体」の辺り

 見舞いに来たマレジアは、溜息を吐いている。

「……何なの? 入院している人間の前で溜息なんて」

「ああ、ちょいとね。隠れ里自体は惜しくはないんだが、洞窟の庵が使えなくなったのが惜しくてねえ……」

「ああ、最初に会ったあの場所?」

「気に入ってたんだよ」

「あの薄暗い場所を?」

「何言ってんだい! あの薄暗さがいいんじゃないか! あんたには幽玄って言葉はまだ早いらしいね」

「そりゃぴっちぴちの若者だからねー」

「全く、口の減らない」


◆◆◆◆


 ティザーベルが入院中、思うところがあったフローネルは、ヤードに剣の稽古を願い出た。

「稽古といっても、俺も正式に習った訳ではないぞ?」

「それでも! あの時の動きは素晴らしかった! 少しでも、吸収させてもらえればと思うのだが……駄目だろうか?」

「駄目という事はないが……あんたの剣は、俺よりレモに習った方がいい」

「え? レモ殿に? それは、何故だ?」

「俺の使う剣と、あんたの使う剣では大きさも重さも違う。当然振り方も違ってくる。レモは俺の剣より軽い武器を多く使うから、向こうに聞いた方がいい」

「そうか……よし、わかった! 感謝する!」

 すっかりその気になったフローネルは、レモを探しにその場を去った。その背中を見送って、ヤードはぼそりと呟く。

「全部口から出任せだけどな」

 ヤードは再び、剣を振り始めた。もっと早く、もっと鋭く。二度とティザーベルに怪我など負わせないように。


◆◆◆◆


 査問が終わり、ヨファザス枢機卿との会談も終わったベノーダは、カタリナの見舞いに治療院を訪れた。

「いない? どういう事だ!?」

「どう、と言われましても……教皇聖下の配下の方々が、お連れになりました」

「何だと……?」

 治療院に、カタリナはいなかった。片腕をなくしているというのに、どういう事だろう?

 そのまま、奥院へ向かったが、当然のように立ち入りは禁じられ、その後カタリナの姿を再び見るのに二月の時間を要した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ