拍手 120 二百十七「頼み事」の辺り
いつの世も、洋の東西を問わず女性は噂話が好きなものだ。
「ねえねえ、聞いた? 聖都の噂」
「えー? 何々?」
「どこだかのお偉いさんの屋敷から、夜な夜な苦悶の声が聞こえてくるらしいわよ」
「何それー?」
「あ、あたしも聞いた事がある。何でも、何とか主教って人は、女の人より見目麗しい男の人が大好きなんだって」
「それと屋敷の声と、どう関係あるのよ?」
「まあまあ。その何とか主教って、綺麗な男の人をいたぶるのがお好きらしいわよ」
「うわあ……」
「最低ね……」
「で、その人の屋敷からは、責め苦にあってる男の人の声が聞こえてくるそうよ」
「聖職者にあるまじき男ね」
「しかもいい男を、でしょう?」
「万死に値するわね」
「似た話を、私も聞いた事あるわ」
「何々?」
「何でも、その聖職者は男性が好きで、特に人間ではなく亜人が好きなんですって」
「え……」
「ちょっと、そんな事、誰かに聞かれたら……」
「管理局がすっ飛んでくるわよ。やめなさいって」
「でも、私が好きなんじゃなくて、その噂の人物が好きって話なだけよ?」
「それでもよ。あの連中、些細な事でもこじつけで審問にかけるっていうわよ」
「管理局にいるのなんて、どいつも人をいたぶるのが好きな変態ばっかりよね」
「だから、誰かに聞かれたら……」
「こんなど田舎の川縁なんて、誰もこないわよ」
「そういえば、聖都の噂、もう一つ聞いた事があるわ」
「えー? 今度はどんなのよ?」
「やっぱり聖職者が、いたぶるのが好きって話しなんだけど、その対象が子供なんだって」
「え……それはかなり……」
「やばい内容なんじゃない?」
「……ま、まあ、でもほら、噂だから」
「そ、そうよね、噂だもんね」
「そうそう。ただの噂だから」




