雑草魂
うだるような暑さの中、オレは、おとなしそうな文系大学生の口からはあまり
出てこなさそうな考えを心の中でしていた。
「車が欲しい・・・」
車。というと普通、快適な車内や、友人や恋人とのとの思い出を思い浮かべるだろうか?
まぁ後者に関しては結果としてそうなる可能性もなくはないが、見栄としてひけらかしたいわけでは
恐らく、決してなく、オレ高杉絢斗が欲しいのは・・・そうだな、強いて言えば可能であれば
後輪駆動車が良い。車体は、できればシンプルなものがベストだ。無駄なものはついていてい方がむしろ
ありがたい、、何故なら、俺はスポーツ走行がしたいからだ!!
大学へは親に促されて嫌々入学した。本当なら専門的なことが学べる学校に通いたかった。
いや待てよ、何なら就職してしまうという発想はなかったのだろうか?
否、世はリーマンショックの爪痕が色濃く残っている。所謂不況というやつだ。不況というより恐慌だ。
オレの月のバイト代は約7万円弱。これでも稼いでいるほうだと思う。
バイト先は勿論ガソリンスタンド。なぜなら俺は・・・・・頭〇字Dにとても影響されているからだ!
「池田先輩、なんか面白い話ないですか?」
つまらなそうにオレは言う。こんな田舎のスタンドじゃ、ロクに客なんか来やしない。ホントどうやって経営成り立ってんだ?裏でヤバイモンでも捌いてんじゃねーの?
「無い。」
池田パイセン即答。
「今度パイセンの32運転させてくださいよ(笑)GXiでしたっけ?逆にレアですよwしかもオートマ」
「ちょっとならいいけど、ぶつけるなよ・・って、あ!」
チッ、客か?
「オレの知り合いの友達が、乗り換えるらしいんだけど、それならタダ同然で譲ってもらえるかもしれないぞ!」
とりあえず仕事じゃないならよかったけど。先輩とその知り合いは友達じゃないんだな。
「車種なんですか?」と聞くと
「わかんねw」だって
「とりあえず、今度見に行くか!なんか、近所の湖んとこでラストランするらしいぜ?」
「おー、いいですね!行きましょう」
先輩がその、知り合いとやらに日時を聞くと、丁度暇だから明日の夜にしよう、ということになったそうだ。
次の日・・・
「ここをちょっと行ったところに停めて待ってるらしいから」
池谷・・・じゃなかった池田先輩の割と豪快な走りに若干ビビりながら、微妙な期待に胸が膨らみ切らないオレがいた。一応、口座から小遣い程度は下ろしてきた。
まぁ、こんなことだろうと思っていた(笑)
オレの眼前には古い軽自動車が止まっていた。
CN21S いわゆる「角目」のアルトだ。一応マニュアル車らしい。
「グラツーの最初に買える車みたいな感じで良いでしょ?」
売り手はそう言う。
オレは・・・・
「そうっすね」
うむ、確かに悪くない。見たところノーマルか?ホイールは安そうなのがとりあえず付いてるが。
貧乏大学生にはピッタリじゃないか、身の丈に合うとはまさにこのことだ!
オレは池田先輩の知り合いに少額を渡し、後日名義変更する旨を伝えた。
これが、オレの車か。
「とりあえず、転がしてみなよ」
と、池田先輩
「はい!」と、早速。
教習所とバイト先以外でまともに一からエンジン始動するのは初めてだ。しかもマニュアル車
はじめはゆっくりと車を転がす。慣れてきて、すこし飛ばして走っていると、池田先輩が
「じゃ、帰りはちょっと攻めるから、うしろついてきてよ」と
楽しみがもう一つ増えたと、ウキウキしながら先輩の車のもとへ戻る。
先輩の知り合いは、先に友達と帰ったらしい。
「さーて、帰りますか」
「そうですね」