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第7話

「我がアメリカは『再び偉大なアメリカを取り戻す!』という目標を掲げているが、それを阻む存在がいる! 例のインディアンが管理者となっているダンジョンだ! 我々は交渉を望んだがダンジョンは拒否した! しかし我々は屈しない! その方法としてアメリカ大統領の名の下にジャパンダンジョンに対し交渉の仲介を願うものである!」


11月15日のSNS大統領の演説はグラード連邦に大混乱をもたらした、日本政府にも問いただしたが返答は


「何も聞いてないし今現在進行形で首脳会談準備してるのに話し通さないとかありえない。」


と混乱しつつ帰って来た、そして11月21日、世界に新たな伝説が生まれた


「我々はアメリカ合衆国代表団です、『アメリカダンジョン』との交渉仲介要請の為に来ました、直ちにダンジョンマスターとの会談の場を用意して頂きたい、対価として我が合衆国はグラード他種族同盟連邦を正式な独立国として認めます。」


「アポイント無しですのでお帰り下さい。 それと独立国認定は交渉材料になりません、あくまでも我々を独立国として見なし国交を結んだ国と取引を行うだけですので...アポイント無しで訪れて政府首班をだせとか舐めてるんですか? 本当に交渉する気あるんですか? 幾ら大戦の戦勝国の列強とはいえ傲慢に過ぎます。」


グラード連邦の出入国管理所を訪れた護衛の海兵隊付きのアメリカ合衆国代表団を、出入国管理担当の青色の制服が似合う女性エルフ管理官が門前払いかましたのである


「なっ! 確かに我々の不手際があったのは認め謝罪する、しかし会談の場すら用意してくださらないのか! 貴方方は現在国連にも加盟しておらずその気になれば他国から宣戦布告され侵略されてもおかしくないのですぞ! 会談の場を用意して下されば我が合衆国はグラード連邦を独立国として認め国連への加盟に関しても助力する!」


「我がグラード連邦は戦勝国による列強の傲慢さや内部組織の汚職によって腐敗している国連やその他組織への加盟及び協力は絶対に行わないと正式決定しております...宣戦布告による侵略? 我がグラード連邦は日本国内に存在する為侵攻する場合は日本に対しても戦争する事となりますし、仮に軍事通行権を確保し侵攻してくるのであればグラード国防軍が全力で殲滅し逆侵攻を行う予定ですので問題ありません...我々はもう安住の地を失いたくありませんので、グラード連邦はアメリカ合衆国に関しては何も魅力を感じておりませんので取引材料から探しなおす事を提案いたしますわ。」


管理官は恐ろしいまでの整った顔に目だけ笑っていない笑みを浮かべて返した、代表団は皆祖国に魅力も感じないから帰れと皮肉交じりに返された事に怒りが込み上がっていた


「...我々には独立以来積み上げてきた歴史と文化があります、少なくとも馬鹿にされる覚えは無いですな、今の言葉は聞かなかった事にしますから早くダンジョンマスターを呼んできなさい。」


代表団の代表は内心の怒りを殺しながら告げた、管理官は笑みを崩す事なく答えた


「突然ですが私何歳に見えますか?」


「...何を言っている?」


代表は突然の問いかけにそう答えた


「528歳です、其の内の400年程は戦場にて攻め込んでくる他勢力相手に絶えず規律と法を守りながら戦っていました、そんな戦士が普通に存在するのがグラード連邦です...貴方方や貴方方の国は御幾つでその間犯罪を犯していないのですか?」


代表は答えられなかった


「とにかくアポイントをお取りになってからお越しください。」


「...会えるのはいつだね?」


代表は苦々しく尋ねた


「4時間後の午後2時ですね、1時間程なら。」


「...わかった、では4時間後に。」


代表団は直ぐに会わせられるじゃないか!と内心思いつつも去っていった

それを見送った管理官は大きく体を伸ばした


「おつかれー、メンドクサイ人達きたねー、はいコーヒー。」


「ありがとうー」


語尾が伸びる癖がある男性ゴブリン管理官が、彼女と自分の分の2杯の砂糖と牛乳たっぷり入ったコーヒーとクッキーを持ってきて渡したのである


「あ~、やっぱり甘いコーヒーとクッキーの組み合わせ最高!」


「カズキ様の言うとおりになったねぇー、二ホンに一声かける所か約束取らずに来るとはねー」


「大方主導権を握りたかったのと断ると思ってなかったんでしょうね、なんせこの星最強の軍事超大国らしいですもの、何事でも優先すると思っていたんでしょうね。」


エルフ管理官は少し目を細めながら考えを話した


「取りあえず二ホン政府には通報しといたからー、多分二ホン政府から1人か2人ついてくるだろうねー」


ゴブリン管理官の言葉に頷くと


「サトシ様かミコト様が来ると良いなぁ、あの方々は良い人ですから。」


「そうだねー」


2人はひとしきり会話すると飲み終わったカップと皿を片付け仕事に戻っていった

そして午後2時少し前に改めて日本政府の役人も加えた合衆国代表団が現れ、会談を要求し受理された

だがその際にひと騒ぎがあった


「ですから! 会談の場に入れるのは通訳と代表と秘書の方だけです! 何で完全武装の海兵隊をそのまま受け入れなくてはいけないのですか!」


「危険である恐れがあるからだ、なんせダンジョンだからなモンスターが襲ってくるかもしれん...特に危険が無いのであれば問題無いだろう? 我が国の海兵隊は優秀で会談内容も漏らす事は無いから会談の場にも連れていく。」


「モンスターなんか居ないです! 何処の世に政府首班との会談の場に武装した兵を連れ込む事を許す事が有るのですか!」


代表団が護衛として連れてきた海兵隊を完全武装のまま入国させ、会談室(新規に設置した)に連れて行こうとしたのである

管理官達は止めたのだが代表団は引かずに押し問答になり、管理官達がキレかけた所で


「やれやれ、アメリカは何時も強引に物事を進める癖がありますが今回は控えた方がよろしいでしょうな...この方々は貴方方の常識や通例は通用しないのですよ?」


「カズキ・ユウナギ...何故ここに...」


「ここは自分の勢力下の土地です普通に出歩けますよ、何か騒ぎになったとの事で謝罪しに来たのですが...その必要は無い様だ。」


マーナとゴーディクとザートナーを引き連れた和希がひょっこりと現れたのである


「んんっ! その言葉の意味がよく分かりませんが良いでしょう。 では早速会談の方をよろしくお願いしますミスターユウナギ。」


「いえこの場で結構です、結論から申し上げますと不可能です。 仲介して欲しいダンジョンの管理者と話しましたが何ですかこの要求は? 何処の世に侮辱と国家への奉仕等と言って隷属要求を出してくる相手に協力する勢力が有るのですかね?...協力を取り付けたいなら最低でもインディアンに対して行った虐殺や強制移住等の負の遺産の賠償をしてからでしょうな、少なくとも彼は始めは過去の遺恨を忘れ今これからを生きる子供達の為に協力する気が合ったようですが、その彼の思いを蹴り飛ばして踏み躙ったのは貴方方だ。」


和希は恐ろしく冷たい表情で告げた


代表団の面々その事がバレているのに驚愕し発言できなかった


「それ以外にも今回の会談では我々に関しても要求するつもりだったようで...」


代表団は和希がばらまいた紙の内容が目に入ると驚愕した

内容はこうだ


1.グラード他種族同盟連邦はアメリカ合衆国と安全保障条約を結ぶ

2.それに伴って在日米軍の一部の部隊をダンジョン内の階層やダンジョンコアのある階層に駐留させる事

3.その対価としてグラード連邦は駐留に掛かる費用の全額と基地建設の為の用地の譲渡、また各種技術や人的資源を提供する

4.また遅れているであろう各種インフラや国家運営に必要な仕組みや通貨をアメリカ式にする事に加え、貿易に関しても関税に関してはアメリカが良心に従って決めるものとする

5.また宗教関係に関しても全知全能の唯一無二の神であるキリスト教を国教とし、異教の教えが蔓延り不安定になっている各地域に部隊を派遣させる事

と他にも信じがたい内容がズラズラと並んでいた


「全員止まれ、ここでこいつらを殺したら一方的にグラード連邦が悪にされる、耐えるんだ...それとその海兵隊は軍ではなくて中央情報局ことCIAの実行部隊でしょう?」


その言葉と共に海兵隊...CIA部隊が一斉に持っていたM4やAA-12を構えた

和希は銃口を向けられ引き金に指が掛かっているのにも動じなかった


「そしてその任務は会談中に自分を人質に取りこの資料に書かれた条約を結ばせ、応援要員が来るまでダンジョンの心臓部を制圧下に置く事...無理な場合は暗殺する事も任務にあるのでしょうが、それは不可能だな、自分には頼もしい護衛達がいる。」


ザートナーは無言で腰に差していた双剣を音も無く抜き、ゴーディクは供回りの兵にいつでも命令を出せる様に手を上げ、マーナは威嚇の様に唸り声を上げながら背中の翼を和希を守る様に広げ飛び掛かれるようにしていた


「今日の所は御帰りを...日本政府の方々も今日の所はお引き取り下さい、後日斉藤美琴事務次官との会談の用意お願いします。」


和希は対峙している代表団に帰るように伝えた。

因みに日本政府は新たに内閣直属の迷宮対策課を設立し、美琴は農林水産省から移動していた尚自衛隊の迷宮対策部は迷宮対策課の下部組織である


「それと現在進行形で首にナイフ当ててる偵察部隊も降ろしなさい。」


『?!』


和希の指示を聞いて何もない場所からフードを被り軍用の大振りなナイフを持つ兵士達が迷彩を解除して現れた

代表団は全員が気配を感じずに首筋にナイフが当てられかけていた事に気付き顔色を青くしていた

代表団はあまりの状況に何も言えずに帰っていった


「お疲れ、まさかこんなにも早く動くとは。」


「悟志兄完全に気が付いてたでしょ、しかも泳がせてたね? 後で埋め合わせ頂戴よ。」


「わかってるわかってる。」


役人に化けていた悟志はひらひらと手を振った


「取りあえずこれでアメリカと取引しないで済みそうだ、日本政府もこれを材料にアメリカから経済以外で離れられる...両方得だね。」


幾ら何でも日本政府もアメリカが変な動きをしている事に気が付いており、それを材料にいくらか不都合な事柄を修正しようとしていた


具体的には在日米軍の縮小である、グラード連邦との協力体制を取ったことによる経済発展により急速に国家収益の増大が起こり、借金前提の国家運営がほんの僅かではあるが借金せずに回せるレベルまで急速に回復した事から、反対しそうな野党や市民団体にマスコミが自己弁護島で機能不全に陥ってる事を受け陸空海自衛隊の拡充や各組織の人員の増強が行われており余裕が出て来たからだ

幾ら隣国がヤバいからといって日本を同盟国では無く植民地だと勘違いして問題ばかり起こす兵士達やその家族を好き好んで置いておきたくは無い、立派な将兵も多いが若い兵士は馬鹿をやる事も多かったし市街地は飛行禁止なのに気にせず飛ばしまくるのも論外だ(尚アメリカ軍将兵の家族が住む場所には飛ばさない)、中には秘密協定で決めれている以上の核を勝手に持ち込んだりするのも嫌だった

日本国籍を持つ日本人で構成される自衛隊ならばそういった問題は恐ろしく少なるから使えるなら断然そっちの方が良かった

SNS大統領も国外に駐留している自国の兵士を国内に戻し国民からの指示と軍事費の削減を行いたいのだから比較的楽に受け入れられるだろう


何はともあれ絶賛日頃の鬱憤晴らし中の日本政府は更に暴れまわるだろう、グラード連邦も嫌な連中と向うの悪手により取引せずに済むから両者が得を得る事が出来る


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「失敗しただと!?」


『申し訳ありません、何処からか内容が漏れていたようで門前払いでした...』


「わかった、とりあえず大使館へ戻り待機していろ。」


アメリカ合衆国のホワイトハウスで電話越しに報告を受けているSNS大統領は深夜にも関わらず怒鳴り声を上げ、電話を掛けてきた代表団団長に待機を命じた

そして少し思考を纏めると、ホワイトハウス内の日本担当室に電話を入れ


「直ぐに日本に圧力を掛けれるように動け! 内容はダンジョンとの交渉妨害だ、役人がいた事を逆手に取ってやれ!」


『わかりました大統領閣下。』


指示を出した

大統領は歯ぎしりしながら


「おのれジャップ風情がアメリカに逆らうとは生意気な!」


と声を漏らした

かつてアメリカに歯向かい敗北した日本と母なる地球にやってきた難民同然のグラード連邦がアメリカ合衆国大統領である自分に歯向かう事は偉大なる自由博愛主義であるアメリカに逆らう事と同然だからだ


尚グラード連邦はアメリカに関しての認識として白人以外の人種に対しては今尚差別的な姿勢が残っている他、日本政府経由での一方的な技術提供要請や遺伝子の提供等半ば人として見ていないような姿勢であった為敵対姿勢だった

少なくともグラード連邦からしてみればキリスト教由来の考えは理解しようとも思わなかった、何処の世に博愛を唱えておきながら白人以外を人間として見ずに獣や奴隷のように扱う連中と付き合おうと思うのだろうか

世界各国の政府要人や大金持ち共は、グラード連邦を挙って自分達の物にしようと動いていた

彼等は何百年やその気になれば永遠に生きる事の出来る長命種の様にいつまでも若々しく生き続けたいと考え、長命ではなく人間並みの寿命ではあるが多産且つ成長の恐ろしく速いゴブリン族を働かせる事で財産を増やそうと考えていたからだ

長命種の遺伝子を手に入れて体に取り込んでも良いしイカれた連中に至っては長命種を食べようとも考えていた、ゴブリン族はひたすら働かせ死んだら創作物の様に食料にすれば良いと考えていたのでグラード連邦は恐ろしく思っていた


そんな連中の指示を受けていた大統領や合衆国の要請に従う筈も無かった

大統領は怒りを覚えつつも日本とグラード連邦を苦しめる策を練っていく事となる

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― 新着の感想 ―
[一言] 痛快で楽しい!
[気になる点] 中国の現状考えると、核打ち込んでも無理な相手にどう戦いを挑む気なんだろう?大統領
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