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第6話

『令和元年のバカ騒ぎ』から早2ヶ月後の11月11日

野党議員達が率いていたのもあり、『日本迷宮』というダンジョンの名前からグラード他種族同盟連邦として正式に建国されると、速攻で謝罪の意味を込めて日本と日本に親しい国家群から正式な承認を受けていた、国名はグラード他種族同盟連邦だが一般的には『日本迷宮』やグラード連邦で通じるので楽だった

そして割譲した領土では国防力の確保として急速に防衛施設の建造が進んでいた、日本政府との軍事協定に基づき『防衛用の兵器群』しか建造出来ないという制限は仕事が無く働く場のない全種族の技師達には障害にならず、恐ろしく暇潰しになる仕事だった

余っている時間を利用して1週間以内に提出され審議された防衛施設は4つに絞られ建設が行われている


1つは国境線に沿って設置されている3重フェンスと鉄条網に各種トラップで構成される警戒線

国境線が正式に決まるまでは山林内に設置されていたトラップ類も撤去され、やる気満ち溢れるエルフ族やゴブリン族や妖狐族によって情け容赦無い威力のトラップが所狭しと敷き詰められており地上からの侵入を確実に阻む物となっていた


2つ目は出入国管理所で、バリケード程度ではブルドーザーに破壊される事から対爆用コンクリートを主原料に警戒線を取り込む形で建設されており、物資運搬用の大型トラックが3台通れる広さの道路を監視し防衛する様に機関銃座や対戦車トーチカに対地兼対空陣地が多数設置された1種の要塞になっていた


3つ目が領土内に建設されたシェルターを兼ねた高射砲塔群で、割譲前から居住しており割譲後もそのまま日本国籍で生活している農家や酪農家等の人々とその財産である家畜等を守る為に、防空砲塔2基に射撃管制塔1基のセットを16セット用意し相互支援可能なように配置し空から侵入使用する外敵ともしもの際は地上への支援砲撃や抵抗拠点として警戒に当たっていた

尚防空砲塔は1階はシェルター、2階に対ドローン用の15ミリ4連装機関銃6基、3階に対ヘリ用の40ミリ連装機関砲2基、4階に対ミサイル用の地上配備型の20ミリ5連装ガトリング機関銃8基が順々に設置され最上部には12.8センチ高射砲が設置されている

射撃管制塔は1階にシェルター、2階に15ミリ4連装機関銃10基、3階に40ミリ連装機関砲2基、4階に20ミリ5連装ガトリング機関銃4基が設置されており最上部にはレーダー装置等が設置されている

両塔に関しては自動化されており、基本レーダー電動式ではあるがもしもの時は直接標準でも運用できるようになっている


4つ目はダンジョン防衛の為に表層の山間部に設置された要塞砲群やロケット砲群や対空ミサイル発射基が格納式で設置されているほか、汎用フリゲート4隻に護衛戦闘母艦2隻で構成される防衛艦隊が配備され予定で在り、既に格納式の航空機基地が建設され制空戦闘機2個中隊に対地掃射機1個小隊が配備され警戒に当たっている


この4つの防衛設備がグラード他種族連邦防衛の要だった

そしてこの2ヶ月の間に30人乗り小型三胴輸送船が4隻完成し既に3回の試験航行と資源輸送業務が行われていた

その資源は日本政府が直接購入し、各企業や世界各国に販売する方式を取り取引量を管理していく事となった

経済界は自由取引を求めたが下手に資源が取引されれば市場が大混乱を引き起こす為必要な行為だった

主な輸出品は多種多様な鉱物と薬品類に生み出される半人型車両、そして飛行艦だった

その中でも大変だったのはレアアースだった


産出量と生産の大半を担う中国にとってレアアースは外交戦略上でも重要な資源だったが、この新たな供給源の登場はその舞台を引っ繰り返したのである

産出量は日本の国内需要を満たして余りが出る程であり、西側の反中国家を中心に売却されていく事になる

和希にとって復讐の対象である事と孤軍奮闘中のタシ・ラクパへの間接的ではあるが最大の支援でもあったし、グラード連邦としても仮想敵国への嫌がらせは実に気持ちのいい行為であった

また中国は資源の最重要のレアアースというカードを失い、他のカードも着々と消えつつあった

技術力に関しては諸外国が中国国内に工場を設立する事で手に入れた技術を基にしておりそこから経済発展等の教育機関の整備や今尚続く諸外国企業の中国進出や盗難等で担ってきたのだが、日本がグラードからもたらされた、新たなレアアースであるサクラダイトと命名された鉱物を利用した半導体を使用する事で電子線に関して恐ろしいまでのアドバンテージを得る事が確定した為、ハッキング等の非合法手段での技術の確保が難しくなったのである


中国国内法や当局からの接収という中国国内では合法的な技術の獲得は、長年の暴圧的な姿勢や汚職への不満や急速な経済発展による利益確保の難しさから進出先がアフリカや中東やインドや東南アジアに移りつつあり最早時代遅れとなりつつ有る為厳しくなりつつあった

そして中小国への支援という借金の押し付けは経済が好転しつつある日本の支援の拡大により少しづつ押されつつあった...誰だって嫌な奴より仲が良い相手を取引相手に選ぶのと同じ心理である


無理な拡大戦略を押し通すために急速に近代化と拡大続く軍事力も、盛大に宣伝していた『チベット迷宮』の攻略が出来てない事で陸戦兵力は馬鹿にされている他、SNS大統領の意向により外国にいるアメリカ軍を少しづつ本国に戻しつつある事の対応と資金獲得手段として中古兵器引き渡し契約が成立した事によって、旧式艦艇や各種兵器の売却等によって対応可能となりつつあり海洋戦力は急速に立場が変わりつつあった


そんなこんなで急速に中小国から公民問わず好感度が増えている日本は、グラード連邦へ支払いとして旧式兵器の譲渡や日本各地の特産品等を輸出していたのだが、流石にそれだけでは金額が不平等過ぎた

そこでグラード連邦側から日本国内への投資許可とその投資に対する妨害への排除を請け負う事を条件に日本政府に土地代として渡す金額を除いた9割を投資する事を決定したのである


主に将来的な取引相手となる子供を対象とした少子高齢化対策、将来的な人口増加による居住地確保の為の日本各地の田舎や有人島や無人島への産業投資、資金難に喘ぐ中小企業を対象にした無期限無利息の融資、薬品類の製造が出来なくなった時に備え医療業界への投資、ロボット業界へのバランサー関係の技術支援と投資等の史上類を見ない大規模な物だった


こういった大規模投資の案件をグラード連邦と日本政府は正式に公開、これに伴い日本政府の成長戦略の見直しと共に労働機銃監督署の権限と人員の増加による悪徳企業の摘発の強化とそれに伴う新たな就職支援政策、外国人労働者や留学生等のオーバーステイの罰則の軽減などが正式に決定した

人的資源確保の為にオーバーステイや違法労働の現場で苦しんでいる外国人労働者救済の為本格的に動き出したのである


そして...


「我等グラード他種族同盟連邦は各種族の長による議会と迷宮の主であるユウナギカズキを首班とする政府を正式にして我々の代表とする事をここに決定する! 我々は新たに得た故郷に根を下ろし生きていく事を此処に表明するものである!」


『『『オオオォォーーーー!!!』』』


居住階層の31層に作られた議場にて出された声明は、流浪の身となり故郷を失った者達にとって本当の意味での新たな故郷を得た事を確認する事となり、愛国心にも近い心を抱く事となった

もっともその裏では


「チクショウ! 騙しやがったな糞爺共とオールドレディの方々め! 何が出席するだけでいいだ此畜生!」


「ほっほっほ! 責任からは逃がすわけが無いでしょう。」


ただ座っているだけで良いと言われて何かわからない派手な衣装を着せられて政府首班に何時の間にか首相に就任させられていた和希の言葉にディクベが返した

和希は後で女性陣からの仕返しが怖い為最大限の皮肉で返したが、フブキが慣れた手つきで他の代表に殴り掛かっている和希を取り押さえた後そのまま優しく抱きしめて止めた


「まあもう決まった事だから諦めなさい、基本わっち達が決めた事を承認してくれれば良いだけですから、その報酬としてわっちも嫁入りしてあげますから。」


「え。」


和希はフブキの言葉に思わず返した

西洋美女っぽいユキカゼと同じく狐耳と尻尾の生えた正しく建国の美女と言わんばかりの美貌を持つフブキが娘が嫁入りした和希に嫁ぐのである


「まあ私と母は血のつながりはありませんので、両親を亡くした私を引き取って育てくれたのですよ。」


ユキカゼは嫌がらない所か逆に少し嬉しそうに話した


「実の所魔術や妖術の腕で族長になったおかげで伴侶が出来ずに婚期を逃していたので丁度良いのですよ、あなた良い男ですからね。」


フブキはオスを狙うメスの笑みを和希に向け、自身の双丘を和希の背中で押しながら優しく頭を撫でた


「はっはっは! カズキ君諦めたまえ! 妖狐族のフブキといえば『氷雪の白狐』の異名を持つ程の実力者だ、今まで数において圧倒的に勝っている普人族共が妖狐族を奴隷に出来なかったのも、彼女が集団で押し寄せても英雄と呼ばれる者達が襲っても全て返り討ちにしていたからだよ? 護衛としても実に最適だ。」


ザートナーは笑いながら和希の頭を撫でているフブキの手が離れると軽く頭を撫でた

ただ和希も言われるがまま受け容れるのではなく、全ての権限と責任は議会にあり首班はそれらの行為に対する監視の任のみ持つ事を確約させ一応の納得をすることにした

そして2日後の11月13日

和希は散歩も兼ねてマーナをお供に表層20階にあたる中央造船区画に来ていた


「こいつが護衛戦闘母艦?」


「とはいうが実際は中型艦である巡航艦よりも少し強いだけの高速艦ですな、あくまでも要塞砲を守る為と対地支援用に艦載機運用能力と防御障壁を展開し、基本任務が防衛である為に防御力こそ戦艦にも劣らない代物ですが攻撃力は遠く及びません、居住性も悪い為長期航行は不可能ですので居住性と火力を高めた物を主力にする予定です、現在は先行して2隻建造中ですな。」


和希の問いにドワーフの造船監督が答えた

和希の目の前には200メートルクラスの建造中の上部甲板が真平らの葉巻型の飛行艦が4隻同時進行で多数の工員達や技師達の手と大型の建造機器によって恐ろしい勢いで建造されていた


「主砲には艦底前部に155ミリ連装砲を2基直列配置、艦底後部は88ミリ速射砲4門、上部甲板はカタパルト搭載式汎用飛行甲板、側面には4連装対空ミサイル4基に加え多数の近接対空機関砲と所狭しです、まあこいつの最大の特徴は船体内部に格納されている防御障壁展開装置ですな、強度は大まかに対艦ミサイルの連続着弾に耐えられる程強固な物となっております。」


「すごいね。」


和希はその説明を聞き、世界の軍事バランスが崩壊した事に気づき言葉少なく呟いた


「まあ防御障壁は全艦種に搭載可能ですので標準装備にしとります、手間と金がかかりますが製造元はアルベルク氏族と両エルフ族ですのでタダ同然ですから出来る事です...輸出仕様に関してはどうするお積りで?」


「ああその事か、とりあえず輸出艦船には事前契約で手を出さないように契約しといて、モジュール構造で整備にはうちの技師達を派遣する事にする予定、勝手にバラシて技術盗もうとしたら自爆魔法仕込んどいて自壊するようにして賠償金と関係見直す形で対応するらしいよ。」


「絶対バラされるでしょうな、まあ自爆魔法は解除できんでしょう連中には...ごまかしたり開き直ったりしたら取引停止でも構いませんですしな、欲しがる勢力は多い訳ですし。」


造船監督は納得したように話した


「そういう事...それと頼んだアレどうなりました?」


「小型の隠密高速輸送艦ですな、艦の全体に光学魔法掛けて目視警戒を突破して物資を届けるやつ...試験航行も洋上航行も大気圏航行も問題無し、向かう場所は『チベット迷宮』で?」


「久しぶりに連絡が取れてね、兵員の確保は何とかなったけど武器が足りないらしい、だからうちで作った輸出用の武器を売ろうかと...奴らへの一番の嫌がらせになるし。」


「だから全て隠密なのですな、工場区画でも製造番号を記述せず材料もチュウゴクから輸入した材料のみで奴らの使う弾薬を使用する銃器とか対戦車兵器を製造していたのですな。」


「なんせ彼女基本罠で大体仕留めて、残ったのをクロスボウとかバリスタで殲滅してるらしくて弾薬が

有り余ってるらしいから丁度いいよ...原材料を詳しく調べればから製造地割り出せるから気を付けないとね。」


その後...


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「ありがとうございますカズキさん、助かりました。」


「良いんだよタシちゃん、こっちもそっちが奴らの力を削いでくれるのは大歓迎で利益になるんだ、気にしないでいいのよ。」


監視網を突破し物資を届けた後、タシがダンジョンマスター同士でしか使えない通信手段である宙に浮く水晶の様なダンジョンコアによる画像通信でお礼を言いに連絡してきた


「いえいえ、最近連中凄い勢いで入口掘削して大型の装甲車両入れようとしてるんですよ、対戦車爆弾を付けた矢をバリスタに付けて対抗してるんですけどそれで壊せるの軽装甲車までで困ってたんです...まさかRPG7とか対戦車砲を用意してくれるなんて想像できませんよ、これ完全に152ミリ砲と128ミリ砲だし、88ミリ砲に至ってはドイツのじゃないですか。」


「まあ日本経由でヨーロッパから密輸してもらったり、うちのドワーフ衆が試験的に作った物だよ...というかうちにいるドワーフ衆ドイツ風の文化持ちだから結構ドイツ的な兵器量産してるからね、気にしないで。」


尚現在進行形でドワーフの技師達を中心とした開発班が88ミリ対戦車砲の改良型や37ミリ対空機関砲を開発中である


「まあ軽車輛には88ミリでも過剰気味でしょうし100ミリ以上はまだ出しませんけど。」


「それで良いんじゃない、見せなくていい物は見せなくていいよ。」


和希は少し疲れたように返した


「カズキさん大丈夫ですか? なんかいきなり150階層近く広げたとか聞きましたけど...」


「やらなきゃいけなかったんだよ、やらないと彼等は食料とか物資とかを提供して借りを作ろうとする日本に返しきれない借りを作る事になって奴隷に近い状態に置かれただろうしね...そうなれば日本は他国から野蛮人国家扱いされて信頼を失うし、そもそも彼ら長命種から見れば100年ちょっとしか生きない短命種なんて世代交代して完全に隷属させた気になって気を抜いた瞬間に殺しに来るだろうからね。」


本来ならダンジョンは何処も少しづつ拡大していくものである、ダンジョンマスターの管理能力を徐々に成長させて負担を減らしていく為である...しかし和希の『日本迷宮』は違った、極めて短期間に数万人規模の新規住民が居住していった為に急速に環境を整える必要が有る為5階層しか用意してなかった所を始めに700人近い妖狐族が現れた為に大急ぎで30階層に拡大した後、どんどん居住希望者が出現した為急速に拡大したのである、幾ら居住階層は最低限しか管理しないとはいえ他の生産階層やダンジョン全体の環境維持や余りにも急速な拡大とそれに膨大な階層は、恐ろしいまでに和希の管理能力を超えていたが和希はそれを耐え運用していた...わかりやすくするならば30年近く前のパソコンで最新スペックのフルカスタムパソコンでもカクつく程のプログラムを無理矢理運用するような物である、膨大な負荷により急速に成長しているとはいえ恐ろしい物だった

その為数ヶ月たった今でも管理能力の酷使によりフラッと倒れる位である

マーナや各種族の最強クラスの戦士が絶えず和希のお供に付いているのも護衛という名の肉楯である他倒れそうになったらすぐさま支える為でもあった


「カズキさん本当の意味で愛国者で凄まじい戦略家ですよね...絶えず政治家とか今を生きる民衆からは嫌われるけど後々の事を考えたら恐ろしい利益になりますし...こっちに来ませんか今なら三食昼寝付きですよ。」


「冗談上手くなったねタシちゃん、始めて知り合った時は恐ろしい位の生真面目な力溢れる革命家だったのに、今じゃ立派なダンジョンマスターじゃないか...本題に入ろうか、そっちにいるのは本当に例のオーク族なのかい?」


「はい、初めから管理者能力で呼び出せるアリ系の魔物で暫く迎撃してたら氏族全体の8千人近くが現れました、今はカズキさんの所と同じように居住階層と生産階層整備して暮らして貰ってます...彼等はクタベク氏族を名乗ってます、戦いは嫌うようですが安住の地を守りたいとかで兵士として戦ってくれるそうです。」


先程のタシにとって頼りになる近所のお兄ちゃんの様な雰囲気から真面目な雰囲気を纏った和希の言葉に、同じようにタシも真面目な様子で答えた


「こっちも聞いてみたら覚えがあった、オーク族の中でも数少ない非戦派の穏健思想の氏族らしい...オーク族は山林内に居住する狩猟種族で大半の氏族は近辺に村落単位で居住して街道を通る異種族の商隊とかを襲う凶暴な種族らしいけど、非戦派の氏族は人里離れた地域に居住してのんびり暮らしているらしいよ、うちにいる氏族達相手に貴重な薬草に果実とか間伐材を提供して必要な物資を取引してたらしい、そっちで保護されてるなら技術指導行いたいそうだ...今回はバレないように荷物降ろしたら直ぐ退散したからね、近々どう?」


「飛行艦を受け入れる格納庫の工事が2週間後に完了予定なので少し待ってください、その後はいつでもどうぞ。」


「わかった、その予定で動くよ...お客さんみたいね、邪魔しないように切るよ、頑張ってね。」


後ろでタシのダンジョンの侵入者警報が鳴りだしたのを見て、和希は通信を切る事にした


「すいません、ではまた。」


「じゃあねタシちゃん、無理しちゃダメだよ...最悪連絡頂戴、完成してる飛行艦で空中艦隊編成して助けに行くから、全面戦争になっても現時点でも対等に戦えるから問題無いよ。」


「ありがとうございます、その時は皆でお世話になります」


「じゃあ切るね。」


そういって和希は通信を切った

そしてコアを置かれている部屋に設置されている内線電話を手に取った


「あ、ドベルグじいちゃん今大丈夫? ちょっとお願いしたい事あるんだけど...そうそのオーク族、やっぱりクタベク氏族らしい、もしも『チベット迷宮』が落ちかけたら即座に艦隊編成して救い出すから直ぐに仮設住居作れるように準備しておいてほしいのよ、後2週間後位に技師達派遣できるからそこもよろしく...ありがとう、それじゃそういう事で。」


生産部門の総責任者に就任したドベルグにそう伝えると、和希はフラッと近くに寄っていたヘルガに倒れ掛かった

ヘルガも真正面から倒れ掛かってきた和希を受け止めると優し気な表情を浮かべ甘やかし始めた


「フフフ、相変わらず冴えてるなお前は...やっぱり保護欲が湧く、もっと甘えろ。」


「ごめんそれはちょっと...申し訳無いからねー」


他人が見れば完全にのぼせあがったような状態の管理能力がオーバーヒート状態に陥った和希をヘルガはお姫様抱っこで外まで運んだ

それを仕事中に目撃した人々もいつものだと確認すると仕事に戻った

ヘルガは和希を和希の家の寝室に運び着ていた服を脱がして楽にさせた後、自身も服を脱ぎ棄て添い寝を始めた


「ヘルガさんいつもなんで服脱ぐんですかねぇー...」


「そりゃ人肌で温める為だが? 何なら襲ってくれても良いぞ?」


ヘルガは完全に誘う体制だったが和希はそれに半分眠る様に瞑想し始める事で答えた

ヘルガはやれやれと苦笑いを浮かべると開いた扉からほんの少し顔を覗かせている3人組に手招きした

ユキカゼやリレリスにマーナの3人は和希がまた運ばれたと聞いて仕事を急いで終わらせたり見回りから文字通り人体能力に任せ飛んできたのである、因みにフブキは正式に伴侶の1人になったが族長に関してはまだ後継者候補の教育が終わらない事やそれに伴う各種仕事の変わりが居ない事から族長のままで在り中々和希の傍にいる事は難しく、今回も泣く泣く娘に様子を見に行かせる事にした


3人は静かに部屋に入るとエルフ族の薬剤師達が氏和希専用に特別に調合し献上した集中効果とリラックス効果のある匂いを発生させる特殊な香料や薬草等を磨り潰し混ぜ合わせ団子状にし乾燥させた物を水を入れた手鍋に入れ引火の危険が無い様に魔法の炎を生み出し温め、和希に抱き着き人肌で温めているヘルガに同じくリラックス特別な香料を混ぜ込んだ香油を少し顔に塗り付け和希が少しでも回復しやすい様に環境を整えだした

和希もそれに気が付き起き上がろうとしたが


「今はお眠り、私達が好きでやってる事だから気にしないで良いよ...お休み。」


「今はお休みくださいな、あなたは私達の傀儡で居てもらわないと」


「儂らに任せなさい、今は休むのが仕事ですから...」


「いやでももう晩飯の時間でおなかがすいた...」


和希の呟きにも近い言葉は届く事は無く、ヘルガやリレリスにユキカゼが耳元でそう相次いで呟くと3人がかりで睡眠魔法を掛け無理矢理眠らせた


「じゃあ私はこのままついているから、後は任せた。」


「はい任されました、何ならまぐわって子供孕んでくださいな。」


「任せろ!...と言いたいがなぁ、世界が違うからか中々孕みそうに無い、最悪子供無しになってしまいそうだ。」


リレリスの言葉に一同は少し寂しそうな表情を浮かべた

そもそも種族所か生まれた世界すらも違う為望みは薄かった、そもそもまぐわいの仕方が同じでエルフ族や妖狐族やキメラ族を相手に出来るだけでも奇跡だった...ドワーフ族は髭がダメなのは普人族として考えれば納得出来て流石にファンタジー生物であるゴブリン族に同族以外が反応すれば変態の所業であった為、その点でも何とも安心できた

既に子供が生まれたらその母親の種族の族長補佐として育て国政には取り込まずに1つの種族に権力が集中しない様にし争いが起きない様にする事が秘密協定で決定していた


「とりあえず消火に良い物と食べ応えのある物両方用意しときますね...毎度思うんですけどどんだけ魔法防御強いんですかねカズキさん...」


「只でさえ魔法適性の強い長命種の中でも上位の魔導士の睡眠魔法を受け入れる姿勢でも複数重ねないいけないとか正直引く位ですね。」


一同(マーナを除く)は恐ろしいまでの和希の能力に溜息を付きながら和希の為に食事の準備をすべく部屋を出て行った

そして2時間程すると和希は目を覚まし


「ん? 起きたか、起き抜けにすっきりするか?」


と男の起きた際の生理現象を確認するとニヤニヤしながら和希の手を取り自身の双丘に押し当てた後、少し足を広げながら、和希の息子に手を這わせた

だが和希は


「それよりやりたい事がある。」


という言葉と共に徐にヘルガに抱き着き抱きしめた、性欲によるものでは無くただ純粋に甘える様に抱き締められたヘルガは始めは内心誘ってるのだから犯せと思ったが直ぐに優しく抱きしめた

10分ぐらい抱きついてのんびりすると和希は名残惜しそうに離れた


「ありがとうね、俺頑張るよ。」


「無理するな、私達はお前に対する人質で献上品でもあるがそれでも愛してるんだ...失いたくない。」


和希はその嘘をついていない純粋な言葉に少し恥ずかしそうにしていたが


「ありがとう、本当なら1人だけに伝えるべきなんだろうけど...全員愛してる、これからも迷惑掛けるけどお願いね。」


本心からの言葉を伝えた

もっともヘルガもニヤニヤ笑った


「1つ言っておくが力を持つ権力者や戦士が複数の伴侶を持つ事は珍しい事じゃない、それにその気になれば女同士でも愛し合えるというかお前に抱かれる日以外は愛し合ってるからむしろ増やしても良い位だ。」


「同性愛は構わないけど強制はダメだよ...それと増やすのは勘弁してよ、只でさえ子供作りづらいのに、これ以上増えたら種が薄くなるよ。」


和希に言葉にヘルガは悩んだ


「それは困るな、今でも全部注いで貰ってる状況だからな...」


「こっちも気持ち良いから良いけどね、そろそろ行こうか。」


和希は時計を確認するとヘルガを誘った

ヘルガも笑みを浮かべ差し出された和希の手を取り...横になっていたベットに何時の間にか設置されていた小さなテーブルに置かれていた小さなベルを鳴らし、差し出され握っていた和希の手を引っ張りそのまま押し倒した


「すまんが私が我慢の限界だ、今回は食べさせながら搾り取ってやる。」


「個人的にはそれぞれ別で時間を設けたいのですが...」


「じゃあさっさと食べて犯してやる、満足させてやるから全部注ぎ込んでくれ。」


和希のささやかな抵抗は鼻息の荒いヘルガに粉砕され、ベルの音を聞いた給仕が部屋に料理や食器類を乗せたカートを押し入ってきて手早く食事の支度を済ませて出て行った

和希は全員こんな感じで強引ではあるが愛してくれる伴侶達が出来た事に感謝しつつも


「(こっちも偶にはリードしなきゃダメかな?)」


と考えつつ襲い掛かってくるヘルガに身を任せた

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