第2話
20××年7月24日午後4時
日本ダンジョンの表層第1階層...1階では交渉団を見送った和希達が案内した部屋より更に奥の方へ歩いていた
「いやぁいきなり攻撃されるかと思ったけど無事にこっちの要求が伝えられたねぇ。」
「そうじゃな、例のタシちゃんがチュウゴクとかいう国と戦争しとるって聞いとったからちょいと不安じゃったけどな...まあ大丈夫じゃろ。」
さっきとは打って変わってのんびりと歩きながら話していた
「確認なんだけど、一先ず地上階層はエルフ族と妖狐族が使用して地下階層は採掘施設で働くドワーフ族と食糧生産担当のゴブリン族が使用で大丈夫だよね?」
「ええ大丈夫です。 此処にはいないエルフ族の代表達にも確認取れてます...まあ、世界樹なんてもの山に植えようとしてますからしょうがないでしょう。」
ユキカゼは少し頭を抱えながら呟いた
此処にはいないが森エルフや山岳エルフと呼ばれる両エルフ族のブレノック氏族とデザーリア氏族の代表達は、和希達とは別に秘密裏に地上に出ると故郷を追われた際に何とか持ち出した世界樹の苗木とその他の苗木を一緒に片手で持ちながら
『ちょっと良い場所探して植えてきます!』
と言い放ち飛び出していった
故に代表団との交渉の席にはいなかったのである...流石にそれは不味いと思ったのか何人かは護衛も兼ねて和希に付いてきたが...
ともかく和希達の評価としてエルフ族は外見は良いが考えると直ぐに体が動く行動派だった
そんな事を話しながら一同はドワーフ達が設置した横一列15基の内1つの大型のエレベーターの様な装置に乗り地下に降りて行った
「しかし凄いね、こんなものを簡単に作ってしまうなんてさ。」
「ガッハッハ! 儂等アルベルク氏族にとっちゃ朝飯前よ、言っちゃなんだがエルフ族やゴブリン族はこういった技術には弱いからのう、まあその分魔法関係には弱いがな...こいつも動力源はダンジョンから溢れる魔力を主な動力源にしとるが補助にはエルフ族御得意の魔導機関を使っとるからのう...電力は電線伸ばさないといけんしちょいと使いづらいわい、漏電した日にゃ大惨事じゃ。」
現在ダンジョンにある設備の大半は魔力を動力源に採用しており、電力で動くのは和希の私物の位でその電力も魔力によって動く駆動機関に発電機を付けて発電させる方式で電力を確保していた
「それにしても良かったのか? まさか研究階層5階層も確保して? その分生産施設に回せば良いものを。」
「だってアルベルク氏族とかエルフ族って技術力に自信があるじゃないですか、しかも碌に工作機器無いのに速攻で作り上げてこんなにダンジョン大きくしちゃうし、貰ってばっかりですからせめて場所は提供しますよ。」
「わっちの妖狐族もエルフ族と共同で山林に拠点を築く事を許していただきました、これからは山の手入れと各種採集と狩猟で貢献していきます。」
「ゴーディク氏族は食料生産ですなぁ、生産階層と...」
話しながらダンジョン地下中央部に到着し
「この大地底湖での養殖ですな。」
ディクベはそう話した
そこには外周5キロ深さ50メートルにも及ぶ透明感抜群な地底湖が広がっており、周囲には蒼白い幻想的な光を放つキノコが多数生えており、天井にはアルベルク氏族が設置した太陽灯(採掘施設で採掘された特殊鉱石である太陽石を加工して作られた明かり 地上に降り注ぐ太陽の光と同程度の熱と健康的な紫外線を放出する)が設置され地底湖の奥底まで照らしていた、湖底には砂地が広がり魚の住みかとして漁礁が沈められ生態系が築かれており湖畔には30にも及ぶ桟橋と小さな双胴式ボートが設置され、少し離れたところに生け簀が設置され世話役のゴブリン達が地底湖の環境保全と魚の世話をしていた
そしてその湖畔には各種族の村落だけで無く、古い3階建ての和モダンな日本家屋...和希の家があった
和希の一族は古くからこの村の有力者一族であった為、もしもの時は近くの住民の為の避難所としての機能を持ち50人程であれば生活に不自由しないぐらいには広く集まるのには苦労しなかった
「さてとそれじゃあ会議始めましょう。」
座布団と大きな丸テーブルが置かれた大広間に集まった一同は、各種族から
『頼むから雇ってくれ! 給料とかは全部自分達が出すから!』
と押し付けられた使用人達から給仕され食事しながら会議を始めた...どの種族も人族とは比べ物にならない身体能力を持つのと引き換えに、その分食事する必要が有る為こうして何か話し合いを行う際には大抵食事か間食を取る文化があった
その日のメニューは
白身魚のバターソテー ~温野菜盛りにドワーフソースを添えて~
ソーセージのポトフ
各種パン
であった、因みにドワーフソースとはドワーフ族が多用するやたらと旨味が強い洞窟コショウと呼ばれるコショウを使用したあっさりとしたソースである
ユキカゼ達は普通に食べているがどれもこれも3人前は有りそうな代物で普通の人族である和希には完食できなかったが
「ご主人ちょうだい?」
「うん、あげる。」
「ご主人大好き。」
1人前食べたところで隣に座っているダンジョンの中で最強且つ1番食べるマーナに渡した
マーナは嬉しそうに和希に頬を摺り寄せた後にモグモグと直ぐに完食した、因みにもう片方の席はユキカゼが確保している
因みにマーナとユキカゼに加え給仕をしているエルフ族からは、山エルフと呼ばれる老若男女問わず金髪碧眼の妖精の様な外見の想像しやすいエルフの様な外見の者が多いブレノック氏族の族長の次女であるリレリスと、山岳エルフと呼ばれ老若男女問わず銀髪赤目の同じく妖精の様な外見のどこぞの自衛隊が異世界で活躍してそうな作品に出てきそうな外見であるデザーリア氏族の族長の長女であるヘルガの4人と既に関係を持っていた...
「童貞だったのに...」
「気持ちいいのは大好きだけどご主人以外とはしないよ。」
「要は見捨てないでくださいってことですよ、私達自身が言うのも何ですが乙女を貢物として差し出すわけです。」
「流浪の身でしたからねー、必要な物以外は売り払って食べ物とか燃料に変えました...おかげで誰1人売らなくて済みました。」
「後払いは怖いからな、先に払えるもので払っておく...ドワーフ族とかゴブリン族と違って直ぐに成果を出せないからな。」
和希の呟きにマーナから順にそう答えたのは、和希の記憶に残る初体験だった...逃げない様にマーナが確保した後、アルベルク氏族及びゴーディク氏族が手持ちの資材の中で最上級の物を使い作り上げた特注の大型ベットに放り込むと4人がかりで襲い掛かったのである、極上の初物美女を抱けたのとなぜか精力が増強しており4人相手に戦えたのは気持ちよかったが幾ら何でもであった、この時代の草食系日本人であり一夫一妻制思考であった為だった...手を出してしまった以上責任は取る積りではあるが
そんな事を和希は心の中で思いながら会議に思考を戻した
「まず食糧問題に関しては60階層にも及ぶ農業階層に加えダンジョンの魔力で作動する成長魔法を展開させる魔道具を設置した為蓄えるどころか外に売りに出せる位順調ですわい、現在余った食料は20階層からなる牧畜階層にて家畜の食料として無理矢理消費しております、それでも使い切れない分は保存食にしとります。」
「残った10階層と表層には工場施設を建築中じゃ、それと空中艦造船所も建設して空中艦隊作って物資の輸出を始めるわい...やはり山を割って飛び出る空中艦はええのう。」
ディクベの報告に続くようにドベルクがグフフと言わんばかりに報告した
「山林部の小規模拠点は建設が完了し植生調査を開始しました、また要望通り古い木の伐採を進め全体的な手入れを行うと同時に侵入者対策として色々設置していいんですか?」
「前に言った非殺傷で危なくないのなら良いよ、非殺傷じゃないの設置したら危ないし最悪不法侵入なのにゴチャゴチャ騒いでタカってくる糞野郎共が出てくるからね、今も入ろうしてる連中がいるし。」
和希は少し不機嫌になりながら許可を出した
現在進行形で新たに出来たダンジョンに興味を持つ招かれざる客が侵入し、それらを山林に拠点を築いた妖狐族及びエルフ族を中心とした警戒部隊によって排除することになっていた
中にはどこぞの動画サイトに動画を投稿して金を稼いでいる連中や悪質な観光客達も侵入しつつあったので大忙しだった...警察や自衛隊も増員を繰り返し警備を強化しているがそれでもすり抜けてくる連中が多かった、ダンジョン側の機嫌を損ねて一番損をするのは日本であった、交渉団が返ってくるまではタシの『チベット迷宮』のように敵対する事になるかもしれないのである、既に警官隊600人に加え自衛隊4個連隊が投入されていた
「とりあえず自衛隊とか警察に罠の事教えといて、それとそれらの情報が洩れたらそれたどって対処する様に要望だしといてください。」
「わかりました。」
「では最後に人口報告ですな、大まかに現在ゴブリン族3万人・ドワーフ族2万人・山エルフ1万人・山岳エルフ1万人・妖狐族700人が現在の人口ですな...本当に各階層の自治は我々が取ってよろしいので?」
ユキカゼが和希の言葉に頷いた後、ディクベは報告と共に何度も尋ねた問いをぶつけた
「自治してもらわないとこっちが困ります、種族毎に文化や風習違うのに管理できませんから、こっちは皆さんが居てもらえるだけで成長出来るんです...ダンジョンは人の感情によって成長していきます、成長したらその分階層を増やして広げていくのとコアの強化に注ぎ込んでいきたいのであまり余計な事はしたくないので皆さんよろしくお願いします。」
現在ダンジョンは地上の山間部を表層とし20階層に工場施設が建築されその階層の内半分のエリアをぶち抜き空中艦造船所及び港が建築中であり、地下を主要階層とし食料生産階層80層に居住階層60層の140階層に地底湖1層、更に地下と表層の境界である第1階層は外交関係の施設を設置し、地下と表層の5階層ずつを侵入者迎撃区画として整備する予定である
表層26層に地下146層がダンジョンの全てだった
「それならしょうがないの。」
「ではそういう事でいくとするか!」
ディクベの言葉の後に、ドベルクは手に持っていた酒を飲みほした
そんなこんなでダンジョンは動いていく事となった