第1話
はい、という訳で性懲りもなく新作書きます(新作書きたい症候群発症)
世界で初めて出現した迷宮はチベットのヒマラヤ山脈に出現し解放された通称『チベット迷宮』で、中国政府は膨大な資源を生み出す迷宮を手中に収めるべく中央政府直属の解放軍1個即応大隊が出撃し解放された迷宮に突入したが、文字通り消息をたった
その直後、『チベット迷宮』の主がネットワーク経由で声明を出した
迷宮主...後に迷宮がダンジョンと呼ばれるようになるとダンジョンの主としてダンジョンマスターと呼ばれる事となる...『チベット迷宮』の主は20才前の可愛らしい少女だった
「私は皆さんがチベット迷宮と呼んでいる迷宮の主に選ばれた、タシ・ラクパと言います。 中国政府は対話を求めず欲望に身を任せ私を殺しに来ました、しかし私は違います、拳では無く中国政府に私の要求を伝えます。 要求はチベットの完全独立に今なお行われている人権侵害に関しての謝罪と被害者への賠償です、もしそれが出来ないのであれば民主主義国家としての再生である普通選挙の実施と共産党以外の政党の政治への参加を要求します。」
タシ・ラクパと名乗った女性は中国政府からしてみれば決して受け入れられない要求を怒りを滲ませた表情で告げ、一種の宣戦布告を行ったのである
中国中央政府はタシの要求に対し
「これはれっきとした国家への反逆で在りテロ行為だ! 愛国者である解放軍将兵を殺害したタシ・ラクパなるテロリストとその牙城の迷宮に対し懲罰を行う! 」
と国内外に宣言した、要求を受け入れた瞬間に力で抑え込んできた独立運動が活発化するうえに中国共産党の一党独裁体制が崩壊する為あり得ない事だった、今なお軍閥時代の影響を残す地方への見せしめも兼ねて中央だけで対処する事が内々で決まった
即座に中央政府の影響力が強く最大規模の中部戦区軍がチベットのヒマラヤ山脈に展開すると迷宮攻略に動き出したのである
その為チベットでは独立運動こそ一時的に中止になるも、外国の目を気にして人権問題は比較的落ち着いていき軍人達も中央政府の手駒としての精鋭が多く軍規を守る事で問題も少なくなっていく他、展開している中部戦区軍20万人相手の商売で急速に経済発展が進んでいき、チベット系住民達は迷宮で孤独に中国軍相手に戦うタシを内心応援しつつ力を蓄えていった
中国政府は世界各国に対しダンジョンマスターは世界にとって危険であり資源を生み出すダンジョンは政府が管理すべきだという談話を発表、各国に資金力で懐柔している議員達を使い俗にいう『迷宮脅威論』を展開し、先制攻撃でダンジョンマスターと呼ばれる存在を殺傷し迷宮を手に入れようとした事を世界各国の民衆に対して誤魔化そうとしていた
そんなこんなで世界各地で迷宮が出現し、各国政府は国家戦略の見直しを図る事となる
そして『チベット迷宮』出現から1ヶ月後、日本国千葉県の田舎の農村に出現した『日本迷宮』は俗にいう山岳型迷宮と思われていた
迷宮...ダンジョンには確認されているだけで砂や岩石地帯で構成される砂漠型、熱帯雨林や森林で構成される森林型、海洋地帯で構成される海洋型、そして山岳地帯で構成される山岳型の4種類が確認されていた、『チベット迷宮』は山岳型である
出現する前から日本政府は自国に迷宮が出現しているのを掴み、そのダンジョンマスターがその地域に居住する1人の青年であることまで予測していた
というのも迷宮の準備期間は1ヶ月である事が分かっておりその期間を過ぎると少しづつ情報が公開されていたからである、そして政府はその情報を基に対策を立てた
『日本迷宮』はその青年が所有者であった祖父から引き継いだ4つの山を中心に構成されており、周りの山々に戦力を伏せておくのは簡単だった、創作物の様に何かあれば陸上自衛隊の特科部隊が展開し榴弾砲やロケット砲による制圧射撃が行えるようにし機甲部隊や普通科部隊が即座に機動攻撃を出来るようになっていた
そして政府は彼の数少ない親族が2人農林水産省と防衛省に勤めている事を把握しており2人を中心に交渉団を派遣しようと待機させていた
そしてその時は訪れた
20××年7月24日午前8時
山の平地と変わらない場所の1ヵ所が崩れたのである
交渉団と関係者達の他に立ち入り禁止なのに入り込んでいたマスコミ集団が急いで向かうと其処には
「やっとお外に出れたよ此畜生が!」
「...元々は旦那様が様子を見たいとか言って開放を遅らせた事での自業自得でしょう。」
「そうですなぁ、でもその分態勢は整えられましたわい。」
「本物のおひさま~」
「ガッハッハッハ! 何はともあれこれから本格始動じゃわい!」
季節は夏に入ろうとする頃合いで暑かったのだろうか、着ていたと思われる上着を脱ぎ太陽の光を浴びている5人組のとその供回りと思われる集団の姿だった
1人は黒髪黒目の黄色人種の実に石投げたら当たりそうな程いそうな日本人らしき青年
2人目は金髪黒目のナイスバディな外国人らしき狐の様な耳と尻尾を持つ美女
3人目は物語に出てきそうな知的な優しそうな表情のゴブリン
4人目はありとあらゆるものがデカい2メートルほどの青色と灰色の狼の様な耳と尻尾を持ち背中にはドラゴンの翼の様な物が生えている同じく美女
5人目は完全にファンタジーのドワーフだった
供回り達は皆この内のゴブリンとドワーフの様な種族に加えエルフやダークエルフの様な外見の人々だった
皆半袖長ズボン軍手の作業着らしき服で採掘用のツルハシとスコップや工具等を手に持ち頭にはライト付きヘルメットを被っていた
そして急行してきた交渉団が話し掛けた
「いきなりすいません! 確認なんですが夕凪和希さんでしょうか?」
交渉団員の内一番前にいた明らかに幹部と思われる集団をかき分けるように前に出てきた制服を着た自衛官の隣にいたスーツを着こなした若い女性が必死そうな表情で尋ねた、隣の自衛官も同じくあっていてほしいと言わんばかりの表情だった
正体不明の集団は外に出たらいきなり周囲を取り囲んできた集団に対し、日本人らしき青年を守るように警戒しており、急に飛び出してきた2人に最大限の警戒をしていたが
「大丈夫ですよ皆さん、この2人は大丈夫。」
「この2人良い人っぽい...」
青年と青年の後ろに隠れたが体の大きさから隠れきれてない4人目の美女の言葉に警戒を解いた
そして青年が
「ええその通りです...日本政府の方々ですね、どうぞこちらへ...敵対しませんので話し合いましょう。」
と微笑みながら告げ、交渉団を出来たばかりの洞窟の中に誘った
声を上げた2人以外の交渉団員は『チベット迷宮』の件もあり躊躇していたが、2人が交渉団団長と思われる老人を促し、中に入っていった
マスコミ達も即座に入ろうとしていたが、我に返った警官隊や自衛隊に止められ見送る事しかできなかった
洞窟の中は採掘途中である事を示すように土砂や岩石が脇にどけられており少し地面がデコボコで歩きづらかったが、天井部分にランタンの様な物が等間隔に置かれており明かりには不自由しなかった
そして洞窟内を曲がり外から見えなくなるぐらいに進むと先頭にいた青年が振り返った
「美琴姉に悟志兄が無事でよかった。」
そこには先程までの何かを探るような微笑みでは無く、純粋に再開を喜ぶ青年...和希の姿があった
そしてその瞬間2人が泣きながら和希に抱き着いた
「カズちゃん無事でよかった...!」
「心配かけんじゃねえこの野郎!」
2人の名は斉藤美琴に斉藤悟志
様々な事情で家族を失った和希に残された最後の親族だった
そうして暫く再会を噛み締めると再び歩き出した
暫くすると一同は1つの扉の前に付き、中に入っていった
中は今までの洞窟から一変しシックな木材が壁や床に張られ天井には光っている鉱石が吊るされ光源となっており、部屋の真ん中には20人は座れる大きなテーブルとイスが置かれ、壁際にはそのままでも飲めそうな程綺麗な水が湧いている小さな泉があり、その脇のテーブルにはコップが置かれていた
そして一同は和希に促され着席した、和希のそばには5人が座り交渉団は美琴に悟志を含めた14人が座り、残りの供回りはもう1つあったドアを通り隣室に入っていった
「さてと、御存じなのでしょうが一応改めて自己紹介します...私が夕凪和希、この迷宮の管理者です。 ここにはゴブリン族にドワーフ族に森エルフと山岳エルフ...普通のエルフとダークエルフと此処にいる妖狐族とキメラ族の計6種族がいます。」
「儂じゃなくて私は妖狐族のユキカゼ、旦那様の補佐をしております...以後宜しゅうお願いいたします。」
「私はゴブリン族ゴーディク氏族の長をしとりますディクベ、以後良しなに。」
「私マーナ、御主人の補佐兼愛人?」
「儂はドワーフ族アルベルク氏族氏族長のドベルグじゃ、よろしく頼む!」
始めに和希側の5人側が紹介し、交渉団も自己紹介を始めた
「私は日本国政府代表で新たに内閣府に新設された『国内発生型迷宮交渉団』団長の伊丹佐多夫と申します。」
「続いて私が...」
と続き、そして
「では改めて...私は斉藤美琴、農林水産省から参りました交渉団特命交渉員です。」
「最後に防衛装備庁技術戦略部所属の斉藤悟志、階級は3佐です。 護衛として参りました。」
と紹介を終えると、和希は頷き
「美琴姉は事務方で虐められてたのにいきなり交渉団の幹部で、悟志兄は資料管理の窓際2尉から2階級昇進で一気に出世コースに乗ったみたいね...手の平返しが凄い事で。」
と少し厳しい目を他の交渉団員に向けた
2人はそんな和希の言葉に苦笑いを浮かべた
元々和希の両親の兄弟でありド田舎出身で才能が有る状態でそれぞれ就職や入隊したのだが、そういった経緯や才能を妬んだ者達からの妨害により窓際に干されていたのである
もっとも出会いは和希の両親が結婚した際に出会い、そこから互いに忙しいながらも交際しゴールインしたので、窓際に干されるようになってからは定時退社且つ各種保険バッチリで窓際であるがゆえに忙しくなくなり夫婦の時間を取れるようになった為から気にせず生活していた所、この迷宮騒動で事故死したとされていた両親が遺した最後の親族である和希が『日本迷宮』のダンジョンマスターとなっているとの情報が入ってからというもの、窓際に追いやった連中が甘い汁欲しさに手の平返して御機嫌伺いしてくるようになった為複雑な心境だった
そして暫く久しぶりの世間話を始めた
尚窓際に追いやった連中や他の交渉団員達は内心ビクビクしていた
そして話はそこそこに交渉が始まった
「ではそろそろ本題に入りましょうまずは情報を提供します、皆さんや日本政府に『迷宮』に関しての説明を致します。」
彼は隣室にいた集団にホワイトボードを持ってこさせ、他にもいくつか指示をだした
「和希これもしかして家にあったやつか?」
「うん、後で詳しく話すけど家にあったやつだよ。」
悟志の言葉にそう返すと立ち上がり、ホワイトボードにスラスラと迷宮についての情報を書きだし始めた
「まず『迷宮』...慣れ親しんだ言葉でいうとダンジョンですね、ダンジョンはそれ自体が何か強大な力で作られた巨大な生命体の様なダンジョンです、私自身も普通に寝て起きたらいつの間にか家ごとダンジョンに取り込まれていました、私の家ではガスは引いていなかった為電気と山から引いていた湧き水が止まっていただけでした。」
「開放するまでの間ダンジョンマスタ-同士で情報交換が行われある程度情報を集めました、ダンジョンは配下を作り発展させていきます、そしてそれには1つテーマが有ります例えばアリを中心に作っていたりするなどですね、わかっている範囲だと大半が群れや群体で生活する存在がテーマとなっているようです...問題はここです、このダンジョンは特殊です...具体的には様々な理由で種族を追い出された氏族達が安息の地として流れついてきて生活しているのです。」
とここまで話すと、ディクベが立ち上がった
「まず我が氏族であるゴーディク氏族について説明させていただきますじゃ、我々は元居た世界にて略奪ばかり繰り返す他の氏族達の方針に反対路線を取っていた所、居住地域である森林地帯を追い出されましてな、そこをカズキ殿に氏族丸ごと保護して頂いて居住しております...先に居住しておられたのはユキカゼ殿とマーナ様にアルベルク氏族の方々ですじゃ。 得意分野はまあ下っ端ですのう、なんせここにはドワーフ族とエルフ族がおりますからな。 指揮は任せて作業に集中しますわい。」
「次は儂らじゃな、我らアルベルク氏族はドワーフ族の中でも随一の技術力と細工物に優れた氏族でそれゆえ精度に関しても負けたことは無いわい、まあそれで沢山作る事にはむいとらんから故郷を追い出されしまってな、そこを拾われた。 ドワーフ族は元々鉱山とか山に住んどるから採掘と穴掘りが得意じゃから採掘とか工事関係で困ったことが有ったら報酬次第で手伝うわい。」
その次にドベルグが話して
「次は私ですね、自身で言うのは何ですが妖狐族はその外見から老若男女問わず性奴隷等として何度も狙ってくる勢力と戦争しておりまして、戦死者は殆どでてませんが怪我人が多く長命種ゆえの出生率の低さで数が減って滅びかけている所を保護して頂きました。 得意分野は魔法による広範囲攻撃ですわ。 それとマーナに関しては私から説明します、マーナの種族はキメラ族で正式名称『ベルーナ型対軍用人型兵器』と呼ばれていた人族の先祖である古代人達が生み出してしまった生体兵器です...因みに古代人達はドラゴンとかその方針に反対する人々の支援を受けた隷属種族達に国焼かれて滅びましたわ。」
とユキカゼが話すと交渉団は一斉にマーナを見た、異世界の古代文明の生体兵器ともあればそうなってしまうのも無理はないだろう
尤もマーナはそんなことも意に返さず、いつの間にか移動して和希を抱き上げて膝に抱えて座るとぬいぐるみを抱きしめる様に抱きしめていた
「どうやら彼等はその隷属されてた他種族の末裔のようでして、住んでいた世界ではそういった経緯から隷属させようとする人族との紛争状態にあったようです、マーナちゃん自体ただ恐ろしい位に身体能力が高くて色々と大きい優しい女性なだけですので普通に接すれば危険性は無いですね...これ個人的な見解ですが聞いた限りだと完全に並行世界の地球ですね、使用していた言語は少し変わってはいますが完全に日本語でしたし、持っていた古代文明の古文書を見せてもらったら完全に英語であの世界の警察の国のワシのマークの入った文書でした。」
抱きしめられて頬を摺り寄せられている和希はそう話すと、マーナの頭を軽く撫でた
「まあそれでポットの中に封印されていた所を解放したら懐かれました...どうやら将兵の性処理も兼ねる様に設計されているようです...マーナに関しては私が守ります、それ以外の人々に関しても何が有っても身柄の引き渡しは致しません。」
とすこし語尾を強めて言い切った
そして一同は暫く交渉し以下の事が決まった
1・『日本迷宮』に属する者達は皆日本国籍を取得するが各種税金に関しては支払わない、しかし代わりに採掘施設や各階層にて産出される各種資源を日本企業に売却し得た利益の内1割を土地代として支払う
2・『日本迷宮』自体を日本国の独立保障と自治保障を受けた自治体として扱う、その為自治政府として各種族の代表と迷宮主による議会を設置する他、将来的には自衛の為の自衛軍の編成も視野に入れて独立国として日本国政府は支援していく
3・『日本迷宮』は日本国に対し各種族の審議の元公開が許される技術資産を貸与し使用を許す、ただその際に他国などにその技術が流出した場合、その技術料の接収や請求等を行う責任を日本国政府は負わなければならない
4・『日本迷宮』は日本国政府に対し敵対しない事を確約するが、それは敵対姿勢や敵対姿勢と同じような行為を働いた場合は敵対姿勢をとり各種取引を停止する
5・以上の項目を実施するにしたがって、『日本迷宮』及び日本国政府は責任ある行動を行うよう努力するもので在る
要は
迷(゜∀゜)「日本国籍取得するけど独立国みたいな感じでやっていくから、ちゃんと迷宮とかの運営はダンジョンマスターだけじゃなくて他種族の人達入れた議会でやっていくから! それと直接税金は払わないけど取引で得た利益の1割とか技術情報の貸与とかで渡すから! でも流出させたらそっちの責任で代金請求してね!」
日(。-`ω-)「(ここはゴネて機嫌悪くさせるよりかは協力関係気付いた方がマシか、技術の流出に関しても政府が管理すれば良いかな? それに資源関係も他国から輸入して出て行ってた分が国内で回ればその分得にもなるし。)まあわかりました、総理大臣とか国会で議論して決定しますね。」
という事である、そして迷宮に入ってから5時間程経っており交渉団が出てきたころには既に日は登り切っており昼を過ぎていた、交渉団は追い縋ってくるマスコミ陣を無視すると直ぐに内閣府に帰っていった
そしてマスコミ陣は『日本迷宮』こと日本ダンジョンへと取材に入ろうとしたが
「現在立ち入り禁止です!」
「危ないから下がって!」
「邪魔だどけ! スクープ転がってるのに帰れるか!」
「どかねえと報道の自由を侵害したとして訴えるぞ!」
自衛隊や警察に止められ、罵倒しながら無理矢理入ろうとしたが...
「お、おい! 何だあれは!」
そんな記者の叫びでその場にいた全員が目にしたのは、6脚の足が生えた胴体に人間の上半身が乗っかったSFアニメに出てきそうなファンタジーと近未来的な外見が組み合わさった様な不思議な車輌(?)だった
それらの車輌?は続々と出てくると洞窟入口を工事し始め、あっという間にゲートを設置し帰っていった
あまりの出来事に一同茫然としていたが、正気に戻ると即座に散開し、洞窟以外の地点から山に入り少しでも情報を集めようとした
尚洞窟が現れた山を含め4つの山とその周囲の少しの土地は和希が地元では価値の無い山を抱える地主であった和希の祖父から引き継いだ財産である、完全に不法侵入である為この時ばかりは常日頃から喧嘩を売ってくるマスコミに対する意趣返しとして検挙しまくり、マスコミに対しかなりの貸しを作る事に成功した
こうして日本ダンジョンは産声を上げたのである