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第1部 序章

初めましての方は初めまして。

そうでない極少数の方はお久しぶりです。

ペンネームをちょっと…どころでなくかなり入れ替えました亜蓮庵(あれんいお)と申します。

日常生活で暇な時って、ついつい自分の世界に入りがちですよね。あーあんなことしたいなーとか。こんなことあったらいいなーとか。

そんな頭の中で考えたことを吐き出すような作品です。

まあそんなに重い内容でもないので、気楽〜ななろう小説だと思ってちょっとだけ読んでみてください^^

 大地に吹く風は、砂を空中に撒き散らして視界をとても悪くしていた。

 人影すらも、近づかない限りは見えないこの環境で、僕は不自然に砂から出っ張っている壁に、息を潜めて隠れていた。

 と言っても、この世界で息を潜めることになんの意味があるのかは分からないが、とりあえず僕は“敵”に見つからないようにしていた。

 ザザッ……と、耳元でノイズが走った。音声通信だ。

『今、神殿に入った。二階にスペースがあるけど、結構狭い。相当ハッキリ見えないと仕留められないかも。』

 無機質な声音が、少し頼りなさげな言葉を口にする。声の主は女性だ。

 僕は耳に手を当て、彼女の言葉を聞き漏らさないようにしながら、周りを警戒しつつ口を開いた。

「大丈夫、僕が君の射程範囲内まで敵をキッチリ誘導するから。そうしたら君はいつも通りに完璧な仕事をしてくれ。」

『…………』

 音声が伝わるのに若干のラグがあるのか、彼女は直ぐに返事をしなかった。返事があったのは、大体2、3秒ほど後。とても短く、おそらくは頷きながらこう言った。

『了解。』

 その声には少し喜びが混じってるように感じた。


「ふー……さてと。」

 僕は壁を背にして、振り向きながら状況を伺う。

 やはり砂埃が酷く、視界が悪い。

 しかしながらそんなことを思っていても、状況が良くなったりする気配は一向にない為、僕はもう少し身を乗り出し、砂の先をじっくり見ようとした——

 その時だった。

「はっ!」

 僕は勢いよく砂埃を切り裂き突き進んでくる緑の光に、慌てて身を壁に隠した。

 ジュッという鉄板で肉を焼くような音が耳を掠めた。エネルギーブラストだ。

 鼓動が早くなり、瞳孔が開いていくのを感じる。まるでエンジンのようだ。

 僕は再び耳に手を当て、通信ができる環境を整える。

「聞こえる?聞こえるかい?」

『——ん、どうしたの?』

「敵に見つかった。多分スキャンアイテムの類を使われたんだと思う!相手は銃を持ってるし、このままだとマズイかもしれない!」

『…………』

「……って、あれ?もしかしてまたラグ!」

 僕は慌てて声がうわずってしまった。

 なんなんだ今日は!通信環境悪過ぎだろ!

 そんな風に内なる怒りを、内なるところで爆発させていると、ようやく返事が来た。

『いいえ、ラグは起きていない。一度も。ただ、あまりにも初歩的なことを忘れているから、驚いただけ。』

「なっ!一度もってことはなくないか?さっきだって返事が遅かったし。」

『あれは、あなたに褒められたから照れて……いいえなんでもないわ。』

 いいえなんでもないわ。のタイミングが遅すぎる。

 なんだかこっちまで時間差で照れ臭い。

「と、とにかく。なんなんだ、その初歩的なことっていうのは?」

『本当に、本当に気づかないの?』

「ああ。分からない。」

『残りは私達を含めて4人よ。』

「ああ〜……。え?で?それが……っぁ……あ〜!そういうことかぁ。」

 僕は思わず頭を抱えた。

 本当に、本当に初歩的なことだった。

 僕は視界の右上にあるマップアイコンをタップし、拡大した。

 そこには、自分の現在地を示す赤い点。そして神殿の記号がある場所には青い点。僕から50mほど離れた場所に二つの黄色の星印が光っていた。

「少人数時短制度。」

『そういうこと。』

 初歩中の初歩、チュートリアルでも説明があるようなシステムを、僕はすっかり忘れていた。

 “少人数時短制度”とは、とどのつまりはプレイヤーが少なくなった場合に発動する、決着を早めるシステムだ。

 発動人数は参加者により異なるが、大体残りが6人になったら発動する。

 発動後はマップ上に敵の位置が表示されるようになり、ずっと隠れているということが不可能になる。まあもちろん、隠れていてもいいのだが、その場合は少し遠い場所からグレネードなどの爆発アイテムを投げられ、建築物ごと殺されることになる。

 だから隠れ過ぎてても良くない。相手の出方と位置を確実に把握しながら立ち回らなければ、即死に至るのだ。

 それでもって、今僕は隠れているという立場上、マズイことになっていた。

「マズイよ。さっき位置は確認されたからグレネードでも投げられたら!」

 なんて言ってたら、かなりフラグ回収は早かった。

 バゴーンと、まるで嘘のようにデカイ爆発音が背後で轟き、先程まで何も見えなかった原因である砂埃を一気に消し飛ばしていた。

 どうやら初撃は狙いを外したようだが、今は多分、僕が潜む壁があちらからまるまる見えている状態だ。

 次は当たる。

 僕はそう考え、その瞬間に壁から右方向へとスライドしながら飛び出した。

 マップの位置関係と、グレネードの爆発音がした大体の方向からほぼ確実な位置を予測。

 そこに目を向けると、丁度2人のプレイヤーが次のグレネードを投げる準備をしていた。

 1人のプレイヤーがグレネードをその手に。もう1人のプレイヤーは、何やら目に緑色の光を放つ双眼鏡のようなものを当てて、僕が先程まで潜んでいた壁の方向を向いていた。

 と、不意に緑色の光を放つ双眼鏡がこちらを向き、そのプレイヤーが僕を指差した。

 おそらく、アレはX線スキャンが可能な類の〈スキル〉だろう。

 エフェクトを放っているところから見ても、スキルなのに間違いは無かった。

「くそっ。だからさっき撃たれたのか!」

 僕は右足で急ブレーキをかけると、物理的におかしい程に鋭利に前へと飛び出した。

 グレネードの奴も僕に気がつき、そいつは完全に僕の方に狙いを定めて、野球ボールを投げる容量で構えに入った。

 敵2人へと走っていくに連れ、奴等の姿がハッキリと分かっていく。

 グレネードを投げようとしている方は、かなり大柄な男で、戦闘服からベレー帽までを迷彩色で揃え、ゴム製の黒い靴を履いているまるで軍人のような奴。

 対してもう一方は、大分細めの男であり、装備も半袖の黒いカーボン繊維の戦闘服に、短パンと、とても防御力があるようには見えないスタイルであった。特徴的なのは、やはり緑色の光を放つ双眼鏡スキルと、白と黒が入り混じった髪色だろう。

 コイツは恐らくスピード型だ。

 軽装にすることで、不利な戦況からの早期撤退が可能となり、スキルをもって再びその敵を捕捉し、確実に殺す。暗殺術に長けた実に厄介な奴だ。

 僕もどちらかと言えばスピード型ではあるが、暗殺は苦手だ。

 だから……正々堂々と殺す(・・・・・・・)

「スキル…〈盗る者(テイカー)〉!」

 僕は右手を30mほど離れた、迷彩の男が持つグレネードに向かって伸ばし、叫んだ。

 それとほぼ同時に、男が腕を思い切り振り下ろす。かなり力のありそうなその腕は、プロ野球選手顔負けのスピードで空を切り、その手は僕の顔面の高さと同じくらいの位置で開かれた。

 そして、その手からは見事に、空気だけ(・・・・)が投げ出された。

 グレネードなどではなく、ただの何処にでもある空気のみが。


「…………!」

 迷彩の男が違和感に気づくのに、そう時間はかからなかった。グレネードを掴んでいたはずの自分の手を見つめると、隣の男と顔を見合わせ、消えてしまったグレネードの行方を追って辺りをキョロキョロと見回していた。

 僕はその様子が少し可笑しくって、やれやれと微笑しながら、右手で掴んだグレネードを上に掲げた。

 そう、2人が探していたグレネードは今、僕の手の中にあった。

「探し物はこれかな?」

 僕の声が聞こえたか否か、双眼鏡スキルの男が驚いた顔で僕の右手を凝視し、迷彩の男を揺すった。

 迷彩の男も直ぐに僕の方を見て、目をまんまるにしていた。ナイスリアクションだ。

 このグレネードは、一度手から離して衝撃を与えることによって爆発する。つまりは僕が投げれば、コイツはしっかりと発動するのだ。

 僕はさっきの迷彩の男のフォームを見様見真似でやってみた。プロ野球選手のように左足を高く上げ、脇を締める。

 あとは感覚的に踏み込んで、ぶん投げるだけであったが、踏み込むと同タイミングで奴等が動いた。マズイと思ったのか奴等は銃を腰のホルスターから抜き、反撃をしようとする。

 だがもう遅い。

 僕の右手は最高点に達すると同時に開かれ、グレネードはそのまま流曲線を描いて2人の元へと落ちていった。正直、スピードはない。

 だが、動揺している2人には避ける時間などなかった。

 迷彩の男が銃を構えた瞬間、グレネードは迷彩の男の迷彩帽に直撃し、まるで小さい太陽でもできたかのように爆発した。

 その太陽は徐々に大きくなり、敵2人を含めた半径5mほどをのみ込んでいった。

 意外と大規模な爆発に、僕は初撃で当たらなくて良かったと、心底ホッとした。

 僕は耳に手を当て、戦闘結果の報告に入った。

「敵は2人、まとまっていたよ。グレネード投げられそうになった時は少し冷やっとしたけど、スキルで奪って投げ返したら、ワンキルだった。僕らの勝ちだよ。」

 自信たっぷりに僕はそう言った。

 普段はクールで落ち着いた声音の彼女も、流石に驚いてくれるだろう。なんたって1人で2人を相手にして勝ったのだ。しかもラストバトルで。

 こんなことは滅多にない。

 僕は浮かれ気分で軽いタップダンスをしていると、ザザッと耳にノイズが走った。

 返事が来る。

『甘い。』

 その言葉が耳に入ったと同時に、何かが髪を掠め、超高速で後ろに去っていった。


「ぐえっ!」

 なんか後ろから声がした。

 僕は両手を上げた状態で反射的に固まり、恐る恐る顔を後ろに向けた。

 するとそこには、喉を矢で射抜かれ、もがき苦しみ手を伸ばす、双眼鏡スキルの男が地面を這っていた。

「うわぁっ!」

 ホラーだ。完全にホラーだこれ!

 僕は驚き、身体ごと双眼鏡スキルの男の方を向くと、足を後ろに、ゆっくりとバックを開始した。そして開始二歩目で何かにパフッとぶつかった。

 またなんか後ろにいる……。

 僕は再び、恐る恐る顔を後ろに向けると、真っ白な何かが背中に埋もれていた。

 一歩前に踏み出し直し、同時にぎこちない笑顔を作る。

「あ、えっと……き、来たんだ……“アロウ”」

 僕はくるりと、アロウと呼んだ人物の方に身体を向けた。なんだかダンスパーティーにいるんじゃないかと思うくらいクルクル回っている気がする。

 方向転換が完了すると、そこには、現実で会ったら卒倒しそうなほどに可愛い女の子がいて、ジトーっとした目でこちらを見ていた。

 黒一つない白く短めの髪を後ろで一つに束ね、海色と空色を交わらせたような瞳を神秘的に輝かせるこの少女。

 彼女のアバターネームは〈アロウ〉。さっきまで僕と音声通信で会話をしていたパーティーメンバーだ。

 本名は畠中未羽(はたなかみう)で、歳は19歳。ちなみに僕も19歳。

 しかし、19歳と言えどアバターの彼女は、装備されているコズミックジャンパーやゴツゴツとした機械式の弓矢がかなり大きく見えるほどに小さく、見た目は中学生と全く変わらなかった。

「お礼は別にいらない。」

 吐き捨てるようにアロウはそう言うと、僕の横を通り過ぎていった。

 冷たいと思うかもしれないが、これが平常運転だ。付き合いが長くなるにつれ、アロウの言葉に特に悪意がないのは分かっていった。

 だけどちょっと傷つく。


「ちょ、ちょっと、ま、待ってくれ!」

 なんだか背後で情けない声が聞こえてくる。

 見てみると、地べたを這っていた双眼鏡スキルの男が、アロウに何やら懇願している最中だった。

「こ、こんな不意打ちないだろう!なんなんだこの感覚は!身体が痺れて……動けねぇ!」

「麻痺矢を使ったから、しばらくは動けない。その間に、あなたにトドメを刺す」

「ちょ!ちょっと待て!アンタそんな不意打ちで勝って嬉しいのか?後味悪くないのか!し、仕切り直しにしよう!もう一度、俺が動けるようになったら……な?」

 ひっ、必死だな……。

 なんだかちょっと可哀想になってきた。普通、ここまでみっともなく抵抗するなんてことはないだろう。

 単純に勝ちたい気持ちがあって、こんな風にみっともなく懇願しえいるのかもしれないが、多分今回の場合は動けないことへの恐怖が大きいだろう。

 麻痺矢を喰らうと動くことが困難になり、なんとも言えない無力感を味わう。僕も何度か味わった、アロウの射撃テストで……。

 人は絶対的に不利な立場になると、どんなことをしてでも助かろうとする。もし、コイツの仲間がまだいて、同じく動けなかったとしたら、その仲間を差し出すことくらいはコイツはしただろう。

 でも、無駄なんだ。

 何故って?そりゃあ……

「不意打ち?後味が悪い?あなたは彼に不意打ちでグレネードを投げ、先程も背後から攻撃しようとした。それなのに、あなたが私を卑怯者のように扱うのは間違っている。」

「ぬ、ぬぐぅぅ。」

「私はあなたに情けはかけない。すぐに殺す。」

 アロウに容赦なんて言葉はない。だから絶対に助かりはしない。

 アロウはしゃがみこむと、双眼鏡スキルの男の首に刺さっている矢を握った。

「待て!待て待て待て!ここで殺したら、罪悪感が絶対残るから!だから、待て待てまぁぁぁぁて……ぇぇっー!」

 言葉の途中だったが、アロウはグリグリと矢を首から捻るように引っ張り、そして完全に抜いた。

「ぐぇぇぇええー!」

 双眼鏡スキルの男が悲痛の叫びを上げるのに対して、アロウは立ち上がり、冷たく呟くように言った。

「罪悪感なんて残らない。だってこれは、“ゲーム”だから。」

「コイ……ツ……」

 双眼鏡スキルの男は恨めしそうに、自分を見下ろすアロウを睨む。

 それに対して無表情だったアロウはなんとも愉悦そうに唇を歪めて、まるで囁くように言った。

「それに私、殺すのは結構好きだから。」

 そのセリフと表情は、一歩間違えば危うい恋に落ちるような中毒性があった。

 瞬間、双眼鏡スキルの男は光の粒子へと粉々になり、再び集まってエフェクトの十字架マークで、死んだことを地面に刻んでいった。

 きっと、双眼鏡スキルの男も何ヶ月かはこの死に方を忘れることはできないだろう。下手したら一生。

 でも、僕はそれをただ、ああ恐ろしいなと思うだけなので。

「終わったよ、“エリヤ”。」

 不敵に微笑み、僕のアバターネームを呼ぶアロウに対して、

「クワバラクワバラ。」

 僕は特に意味も分からずにそう呟いた。


 それから勝利のファンファーレが鳴り、この〈セカンド・ユニバース〉というVRオンラインゲームのバトルロワイヤルが終わりを迎えるのに、そう時間はかからなかった。

先に書きます。

ヒロインはサイコパスです。

主人公は結構臆病で抜けてます。

今回みたいなノリでわりかしホワンホワンと敵とぶつかってドンチャンドンチャンと殺し合いするような話になっていくと思います。

ので、よろしくお願いします!

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