十六話 勇者。レンジと時遊剣とバランスブレイカー。
~勇者決定戦~
勇者とは召喚された時点で勇者だが、その者の力を試し、示すために勇者決定戦が行われる。
ここで首席をとれば後の魔王降臨の勇者部隊の指揮をとることになる。
参加は
ナルガムから新生勇者、リョウ。
レルムニッドからガン&レーザーソード、博士。
ナザムから獣人勇者、ライアン。
レーンの巫女、スイハク。
デモンデから魔人、シャドウ。
ウッドエイから木の化身、大樹。
エドから武人、タケヒト。
ジャーメンから呪いの勇者、アロイ。
スラムハラヌから、前年の勇者長、レンジ。
以上の九名が参加する。
力の示しかたは簡単。
武力をもって全員に勝つ。もしくは最大勝利数が多い者を勇者長。
次いで、副勇者長。特攻隊長。防衛隊長までが名誉勇者。
その他は呪い師。回復師。デバフ要員になる。
俺の初戦は前年勇者長のレンジ。
場所はナルガム中学校庭。この人は例のアレバンズ親子の一件において大きく貢献してくれた。
主に犠牲になった、生徒を救済、蘇生してくれたのだ。
だからこそ勝利して俺が恩返しに勇者長になりたい。
~こんな悩み事で時間は過ぎていいくのだった。~
当日。
客席(校庭の規制エリアの外)は満員も満員。人口の三十%は集まったといわれる。
ちなみに前年ナルガム勇者、レオは特攻隊長で魔王の首をとったらしい。
彼いわく、
「魔王でも勇者が協力すればわけないさ。」
と語っていた。
さて初戦はナルガム対スラムハラヌ。
リョウ対レンジ。
相手は魔剣士でもあり聖剣士でもある。
魔法と聖句、剣技に注意すべき相手。
武装はこちらはいつの日かつくったレーザーソード·バレットと透明マント。
なお改造して透明マントは「貫け」と発言を聞いたときドリルのように尖る剣になる設定だ。
なぜ貫け?それは解放句だからだ。剣が力を解放させるときは貫けの発言があったのみであるからだ。
分かったと思うが相手が剣を解放した瞬間に自分の解放分まで相手の魔力が消費されるので、そこで魔力切れによるダウンをねらう。
それが無理なら不可視の攻撃で相手をたおす。
それでは...
「それではいこう。我がナルガム王の名のもとに。はじめっ!!」
「ナルガム勇者リョウ。先日はありがとうございました。」
「スラムハラヌ勇者レンジ。こんな老いぼれに声なんぞ掛けなくてもよいのに。
それよりお前さん。一つ教えてくれぬか?お主の戦法はなんぞ?ワシの勝利の眼をもってしても勝利が見えぬ。これは敗けが確定していることを意味するが。」
「そうですか。でも全力で戦ってもらいます。魔王に慈悲でもかけたらこっちの立場がないもんで。」
「うむ。」
今回は紅蓮の魔王のように決闘ではないので、決闘の儀式もない。使い魔なしの勝負だ。
それにもう戦いは始まっている。話をしている間に殺されていてもおかしくはなかった。
それに俺に勝てないとまでもいった。...罠か? 注意せねばな。
銃を二丁、腰から抜き両手にそれぞれもつ。
まずは相手の実力を調べるためにエネルギー弾[通常]を放つ。
レンジは避けることもしない。肩を貫通。正直言って、老人をいたぶっているようで申し訳ない。
いやあっちが悪いんだけどね!!?
そんな脳内思考フル回転中にあり得ない光景が飛び込んできた。
自然回復。人間の細胞が時間経過と共に分裂し傷をふさぐ。
そんな時間がかかる光景を。貫通した重症をいとも簡単にふさいでみせた。
「勝てる気がしないで言うがワシの武器は神剣のレプリカ。時遊剣。
時を遊ぶように操る。ワシはもう魔法や聖句が使えん。だが一秒程度なら巻き戻すも止めるもできる。
だがこの世界は止めれても巻き戻せない。巻き戻すのはワシ自身のみじゃ。」
なるほどな。俺の今たてたプランで勝てる。
「なら、負けてもらう。」
レーザーソード切り替える。
これはエネルギー弾を空中で反射をさせまくって、エネルギーのブレードをつくりだす原理だ。
「レルムニッドとは少しばかりか違うな。」
この瞬間マントを地面に置いておく。これが鍵だ。
もちろん透明なので目には見えないが俺にはレーダーがあるので、分かる。
レーザーソードで切りつける。動けない老人はそれを直撃―
―は、しなかった。“俺の予想通り”、避けた。それも一瞬で。
「ワシの勝利の眼にも曇りがあるのかものう。もしかしたら勝ってしまうかもしれんわい。」
いや、決して曇ってはいない。
俺の予想通りだから。
レーダーに映るとある物の後ろへ後退。
「これで終わりじゃ。」
「ああ。」
「お前さんのな!!」 「じじいのな!!」 同時にそう宣言し
「解放じゃ。行け。時遊剣!!」
時が飛ぶのが分かる。一瞬反応が遅れる感じだ。
気が付くとレンジは間合いに。
俺の持ち物は銃を二丁。トリガーを引く。防御ではない。決定的なとどめをさすために。
時遊剣は空中でカキンッと金属がぶつかるような音をもらし弾かれた。
渾身の一撃を外したレンジは大きくのけぞった。
銃口からは、お互い別の魔法。召喚魔法で神器並みに耐久性がある、火山の奥にある黒龍岩の鎖を呼び出す。
片方は氷で体を動けない状態まで固める。
鎖に絡まり、氷漬けになったレンジは落とした時遊剣を取ることも魔法で氷をとかすこともできなかった。
「ふーむ。動けん。審判よワシの敗けじゃ。寒すぎて死にそうじゃ。」
「へ!?はい!勝者、ナルガム。リョウ!!」
氷漬けになったレンジは深呼吸をして言う。
「今年の勇者長は決まりかもしれんな。
ところで鎖で束縛し氷漬けにするのはいい戦法じゃが、あの時ワシの時遊剣は...」
「お教えします。私は最初、透明マントを所持してました。ですがそのマントは「解放」の言葉に反応して剣に変形するような設定だったんです。一撃でそれも確実に時間を止めて勝負に出ると踏んであえて裏をかかせていただきました。魔力がないのに長い試合に持ち込むとは思えませんから。その勝利のセオリーこそ敗北につながった。勝負の世界にセオリーなどないことをいま見てくださる。皆さんに見て欲しかったのです。」
「ハッッハッッハッ!面白い。このワシの元勇者長の裏をかいたか。そうか。
これでもワシは数年前までは最強の騎士であったのじゃぞ!それを簡単に越えてくるとは。いーや参った。」
勇者決定戦。第一試合はリョウの勝利で終わった。