八話 喪失。裏切りと犠牲とバランスブレイカー。
「ここはどこだ?確かアレバンズに会ってそれから―」
「お目覚めかい?悪魔め。俺の名はアレバンズ。だが戦闘団団長などではない。」
「そうゆうことか。俺ははめられた、ってことなんだろ?」
「流石だ。俺はな裏の帝王決定戦“エンドゲーム”のオーナーだ。」
―エンドゲーム。全世界の裏の王者。いわゆるマフィアや奴隷商人などが多大な財を求める。
そのために殺し会う。それを正当なルールで決められたゲーム...か。
「目的はなんだ?」
「君を利用して俺が王になる。」
「で?俺はこれから何をされるんだ?」
「決まっている。新しいおもちゃは自分好みに改造する。」
第三位階の炎魔法[フレイム·マーズ]。対象を炎の渦で閉じ込め皮膚を焼き、防御力を低下させる。
もちろん、俺には効かない―
―わけではなかった。
全身を炎が駆け巡り内部の肉ごともやしつくされる。
もちろん、大したダメージにはならないが。
「なにをした。」
「簡単なこと。お前にいくつもの魔方陣を重ねがけしてダメージになるようにした。
まぁ、いまので百人ほどの命が消えたが。ちなみに内訳はお前の学校の生徒だ。」
「腐ってる。」
「何を言う。殺したのはお前だ。」
「腐ってる!!死んでもいい命なんてこの世界にはない!!この町にはない!!」
「ならば、条件を飲め。そうすれば貴様を救ってやる。」
「断る。そして罪を知れ。」
スキル[魔剣打ち]材料は太陽のコピー。
「来い!太陽剣“アルティマ”。聖なる炎で抹殺せよ。」
「良いのか?俺を殺せばお前は殺される。」
「お前はクズだ。だがな、俺はお前なんかよりクズなんだ。」
太陽剣がアレバンズの体を焼き滅ぼす。いや、灰にする。の方が的確だ。
「俺は頂点に立つ。この世界から苦しみをすべて消し去る!!」
バンッ!
「ここで何をしていた!」
ナルガム戦闘団のしたっぱか。
「俺をナルガム戦闘団に入れろ。特別戦闘員としてだ。」
「何を言う。貴様みたいな血も浴びてないヒヨッコを面倒見切れるか。」
「もう一度言う。俺を戦闘員して迎えろ。」
「分かった。それよりまずはここで何があった?」
「俺の友達が。先輩が。先生が殺された。俺を殺すために。」
俺はおそらく使用されたであろう生贄魔法とアレバンズについてはなした。
「どうやら君は...いや何でもない。本部に来てもらおう。」
~戦闘団本部~
「君が例の...」
「リョウ。姓はない。」
「私はセイバンズ·レオ。君と歳は一緒だ。君に教えておくことがある。」
彼の目は震えていた。生まれたての小鹿の儚さをも伺わせる。
「君はどこかの国の勇者だ。いわゆる異世界から勇者に成りうる器を捜しだし、転移させられた。
それが君であり、僕もだ。」
俺が勇者?しかし否定材料が見つからない。強すぎること。めぐまれていること。
そしてーー
災難に襲われたこと。
「先の騒動で我が団も五十人に団員が減った。是が非でも君に来てほしい。僕は君の表で裏だ。
君は僕の裏で表だ。」
「お前は信用できる気がする。」
そう教えてくれたのはスキルではない。俺の心だ。
「お前を信じる。」
―信頼の行動によりスキル[スキル全統合化]を手に入れました。
―既存のスキルをまとめます。なお、今後のスキルについては思考操作で実行できます。
俺はまた、強くなる。仲間と力を以て。