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FANG DOLL  作者: 華猫
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#0 Lord of Scarlet

■ 1.Lord of Scarlet

 黒々とした、夜の木立の間を、一人の青年が彷徨っていた。闇を怖れるでもなく。

 時折、樹幹から降りかかる赤みを帯びた月の光が、秀麗な顔を照らし出す。周囲の風景とあいまって、ここが大都市のど真ん中なのだという現実感さえ失わせる。果たして、この木立はこんなにも深かったろうか?

 夜の街の喧騒も届かない。まだら模様の闇の中に、密やかな彼の足音が這う。どこかで夜啼鳥の声がする。

 青年の行く先は決まっていない。ただ頼りない小径に従うだけだ。

 不意に木立が途切れ、目前に瀟洒な庭園が現れた。一段高くテラス状に盛り土をした上に、植え込みに囲まれて、石造りの遺跡を模した東屋が建てられていた。

 引き寄せられるように東屋に近付いた青年が、足を止めて息を呑んだのは、その東屋に誰か人がいたせいだけではない。

 若い男のようだった。彼もまた、ひどく端整な容貌をしている。一瞬、その全身が炎に包まれているかのように思えた。

 赤い月の光に彼の赤い髪が輝いている。来ている服もまた赤い。白亜の大理石のベンチと対照的だった。

 彼がこちらを向いた。

 二人は以前にも、顔を合わせたことが会った。知り合い、というほどではないが。

 先に赤い男が口を開いた。

「お前は――確か、プアゾといったな。マイスター・タゾーラの弟子の」

 プアゾは、以前、師匠につれられて出向いた富豪のサロンを思い出した。この、やたら印象的な赤い男には、確かにそこにいた。

「ゼフィエル……公爵?」

 プアゾは二・三歩、後ずさった。木々の作る影の中へ逃れようとでもするように。

 今、この場で他人に会うことが、どういうわけか恐ろしかった。何故、こんな所で彼に遭遇しなければならなかったのか。

 ゼフィエルは小さく頭を振って苦笑した。

「公爵ではない、大公だが――まあ、大したことじゃない」

 それからグラスを携えた手を、プアゾの方に差し伸べた。

「こっちにこい、一緒に飲まんか?」

 逃げ出しかけていたプアゾは、その寸前でゼフィエルの言葉に捕まってしまった。単なる呼び掛けだというのに、彼の声には有無をいわさぬ支配力がある。心の底にあるなにかをがっちりと鷲掴みにしてしまうような。

 プアゾは手繰り寄せられるように、東屋のほうに上っていった。白い石の簡素な建物に近付くと、周囲の植え込みから濃厚な花の香が流れ出していて、あたりを包み込んでいた。単調な月明かりの下では、おぼろな花の色よりも、その芳香が強烈に自己を顕示している。

「こんなところでお前に会うとはな――そこに座れ」

 ゼフィエルがなにか嬉しそうにいった。彼に促されるまま冷たい石のベンチに腰を下ろして、ふと気付くと、彼の傍らにもう一つ、空のグラスが置かれていた。

 プアゾは周囲を見回した。が、真夜中に庭園に他に誰の姿もなかった。

「ここは私のお気に入りの場所でね。こうして忍び込んで月見酒と洒落ていたのだが」

「他にも誰か?」

 プアゾはゼフィエルに手渡されたばかりのグラスを見つめていった。

「誰か来ないものかと待っていたのだ。今宵の月はあまりに綺麗だからな。誘われて彷徨い出る者がおらんとも限らん」

 キザで、浮き世離れした台詞だったが、この状況下ではあまり違和感がなかった。

 この梟都という都市は、帝国周辺域でも最大級の独立した自治都市国家だ。だからこの都の内部では、帝国貴族の称号などなんの意味も持たない――はずなのだが、現実にはそうもいかない。帝国の法や慣習に束縛されない自由や、なによりこのメガロポリス独特の空気に惹かれて、梟都を訪れる帝国貴族は多い。都の上流階級もまた、帝国の重厚長大な文化や、貴族達の引き連れる莫大な富に、多くの関心を寄せている。

 そんな都の社交界にあって、ゼフィエル大公というのは、トップランクのVIPだ。あの巨大な帝国でも有数の大貴族、という肩書きは、共和制下に生きる市民には今ひとつピンとこなかったので、彼の所領に住む総人口は、梟都の人口にゼロを二つ足したよりも多いと聞けば、誰でも最初は耳を疑いたくなろうというものだ。

 だというのに、ゼフィエルは、その肩書きが不似合いなほど若くて、しかも美しいのだ。。プアゾでさえハッとするほどに。

 以前紹介された時も、その外見と肩書きのギャップに驚かされた。目の前のこの青年――少なくともプアゾよりは年上だろうが――が、帝国でも五指に入る大貴族だって?そのこと自体が、その美貌と同じくらいに現実離れしていた。

「――お前はどうしてここにいる?」

 ゼフィエルがプアゾのグラスに酒を注ぎながら尋ねた。赤い発泡酒だ。

「僕は――」

 いいかけて言葉が出てこなかった。こんな夜中に、閉ざされた庭園に忍び込んでさまよっていたのは――迷ったのは言葉だけではなかった。

「ここで私に会ったのだ。まあ、なんらかの理由はあろう」

 ゼフィエルは奇妙な言い方をした。

「お前に会えて嬉しい。お前のことは気になっていた」

「僕が?」

「かの天才人形匠、マイスター・タゾーラが、生涯初めて取った弟子だからな。タゾーラの名は我が領国まで聞こえてくるんだ」

 人形、といってもプアゾの師匠、タゾーラの作るのはただの人形ではない。極めて精巧な自動人形オートマトンだ。自前の知能ユニットを持ち、自律行動する。存在自体が奇跡に等しい、至高の工芸品だ。それはあまりに高価だった。庶民が到底買えるものではない。ごくごく一部の階級の人間に限られた趣味なのだ。プアゾですら、以前は、そういう代物の存在すら知らなかった。

「……わからない。半年前、タゾーラに拾われたばかりで」プアゾは手の中でグラスを揺らしながらいった。

 するとゼフィエルはわずか目を細めて、「なるほど、そういうわけか」

「?」

「噂さ。我々の間で流れていた、ね。

 タゾーラは正に天才という言葉に値する。彼ほどの人形匠は後にも先にも出ないだろう、というほどにな――だが、そのタゾーラですらやはり人間だ。肉体の衰えは隠せない。特にここ数年は制作ペースも落ちていた」

 ゼフィエルはいったん言葉を切って、グラスを口元に運んだ。プアゾの顔色を確かめるように、一瞬、視線が走った。

 プアゾはグラスを握り締めたまま、身をこわばらせていた。そのグラスの中は気泡の浮いた赤い酒で満たされたまま、減ってはいない。

 グラスから視線を上げて、ふと、プアゾは、ゼフィエルの瞳までもルビーのような色をしているのを知った。炉の奥が炎で満たされているような。

「――ところがだ、つい先日発表された人形、あれは会心の出来だった。見る目を持つ者たちは噂したものだ。タゾーラは自分の手の代わりを拾ったようだ」

「僕の――こと?」

「たった半年だ。お前はそれまでどこでなにをしていた?どこであれほど完璧な技術を身に付けたのか」

 プアゾは目を伏せた。「僕は……ストリートに。そこでタゾーラに拾われたんだ」

「あのマイスター・タゾーラが弟子をとったというだけでも信じ難いのに。お前はいずれ、タゾーラをしのぐ人形匠になるだろうよ」

「僕が?僕は人形匠になる気は……でも、今は、他に行くところも……ストリートに戻るなんて」

 ゼフィエルの表情がわずか変化したのがわかった。プアゾはグラスをあおった。

 真紅の液体が舌の上を滑り咽を流れ落ちていく。濃厚な酒の香が口腔を満たした――と思った途端に気が遠くなりかけた。強いなんてものではない。

「な……なんなんだ、これは……」たまらず咳き込んだプアゾを見て、ゼフィエルが笑い出した。

「我が国特産の酒だが――これ程効くとは思わなかった」

 プアゾはベンチの背に身体を預けた。上半身を支えていられない。ゼフィエルが面白そうにいった。

「よし、ひとつお前とゲームをしよう。賭けるのはお前自身だ。私が勝てばお前を、専属の人形匠として私の国に連れていこう」

「ゲーム?」

 プアゾは必死にベンチの背にしがみつきながら、ゼフィエルを見据えた。大理石の感触が氷のように硬くて冷たい。

「ああ、これはひとつのゲームだ。今のところ私の方が有利なようだ」

「なんのゲームだ……」

 しかしプアゾの言葉は声にならなかった。身体が沈み込んでいく。赤い泥に飲まれていくようだ。冷たい石の表面が頬に触れる。その感覚すら非現実めいていた。

「また会おう」

 そんな声と、遠ざかっていく足音を聞いた、ような気がした。


 プアゾが目を覚ましたのは、夜が明ける頃だった。

 この高台の上に建てられた東屋から、公園の木立とその向こうに広がる街の屋根の上に、朱鷺色の空が広がっている。遠くから市場の喧騒が聞こえてきた。昨夜感じたほどには、ここは街から孤立してはいないのだ。

 ちょっと頭を冷やすつもりだったのに、朝帰りなど、タゾーラがどれ程腹を立てているだろう。

 ふと、自分の傍らに、空のグラスがひとつ転がっているのに気付いた。繊細な切り子細工のクリスタルグラス。手にとって淡い陽光の斑の中にかざすと、ちりちりとした微小な陽炎のような輝きが目を射る。

 突然、深夜の邂逅のことを思い出した。

 あの、ゼフィエルという貴族。彼には、奇妙に人を惹く力がある。それゆえになお畏ろしい。彼の持ち掛けたゲームとは?

 ――所詮は貴族の気紛れだ。

 プアゾは頭を振って立ち上がった。

 うっすらと朝靄の漂う中を歩いて、下町に帰る。

 一瞬迷ってから、工房の扉を明けた途端、けたたましい声がした。

「ドロボー!ドロボー!」

 その剣幕に押されて、プアゾは戸口で足踏みした。

「誰じゃ」

 奥から声がして、歳老いた男が顔を出した。建物の一階は大きく二つに仕切られていて、奥の工房の入り組んだ工具や機械は表からは見えない。

「僕だよ」

 プアゾは疲れた声でいった。その周囲を一体の人形がちょこまかと走りまわっている。甲高い声で騒ぎながら。

「なんじゃプアゾか――やかましい、ルアナ、さっさと黙らんか。街中の人間を起しちまうじゃろが」

 タゾーラがいうと、その、ルアナという人形は、ピタリと静かになった。

「こんなんで泥棒避けのつもりか?単に騒ぐしか能がないなんて」

 プアゾはルアナをちらりとみやってからいった。

「それよりプアゾ、昨晩はどこへ行っておったのじゃ。仕事も放り出して」

 タゾーラは刺々しい口調でいった。プアゾの方が背が高い。その彼を下から見上げるように睨みつける。

「公園で寝ていた」

「公園?ふん。どこぞの女のところにでもいたのかと思ったが――さっさと仕事にかかれ」

 自分の寝室へ向かおうとした歩みを止めて、プアゾは振り返った。

「今帰って来たばかりなんだ。少し、眠らせて――」

「一晩中なにをしとったんじゃ?まだ昨日の分の仕事も片付いておらんと」

 プアゾは頭を振った。頭を包んでいる不快な綿のようなものを追い払うために。


 プアゾが自室、といっても地下の物置の半分を与えられているだけだが、そこに置いた簡素なベッドに倒れ込んだのは、昼過ぎになってからだった。

 午前の日課を終え、ようやく師匠から解放されたのだ。

 さっきまで自分の手で縫っていた人形の服、その布地よりもずっと安価なシーツの上に突っ伏して、前後不覚になる。まるで暗い井戸の中に落ちたよう。

 軽く一休みするつもりだったのに、ぐっすりと寝入ってしまったらしい。

 突然、耳元で甲高い声がして、眠りの底から強引に引き剥がされた。

「プアゾ、プアゾ、プアゾ!タゾーラが呼んでるよ!」

 樹脂でコーティングされたセラミックの指がプアゾの髪を引っ張っている。

 プアゾは不機嫌に薄目を開けて、頬をシーツから浮かせると、思いっきり手でルアナを振り払った。

「わっ」

 ルアナは枕許から弾き出され、壁際に置かれた木の箱にぶつかる――その寸前、素早く体勢を立て直し足で箱を蹴って、床の上にきれいに着地する。

「もぉ、気を付けてよ」

「うるさいよ。人形のくせに……」

 プアゾは仏頂面のまま起き上がった。

 工房では、タゾーラが難しい顔をして作業台の上に乗った物体を睨んでいた。無言で入って来たプアゾに気がつくとそれを指していった。

「おう、これを見なさい」

 そこに置かれているのは、壊れかけた人形だ。服をすっかり脱がされていて、その惨状をさらしている。よほど手荒に扱われたのか、腕はもげかけているし、胴体の外骨格にさえヒビが入っている。

「先程持ち込まれたのじゃがな。修理依頼じゃ」

 プアゾでさえ眉をひそめた。

「ひどいな。なにがあったんだ」

「うむ、まあ、おそらくは子供の仕業じゃろうなあ。客は、誤って落としたといっておったが」

「ああ……」

「ちと見てみるかの」

 タゾーラは人形を手にとって、背中の蓋を開けた。そして、工房の隅の奇妙な装置のところへいき、装置から伸ばしたプラグを人形の内部の機械につないだ。

 装置には直径三〇センチほどのガラスの玉が載っている。そこにカラフルな光の模様が内側から映し出された。抽象的なパターンが目まぐるしく変化していく。人形の知能ユニットの解析装置だ。

 プアゾには、そのガラス玉に浮かんだ抽象的な色彩から人形の『心』を読み取ることはほとんどできなかった。長く見つめているとガラス玉の中に引き込まれるような気がする。しかしタゾーラは、同じものを眺めながらしきりにうなずいては吹き出したり、眉をしかめたりしている。知らない人が見たらタゾーラ自身の脳が疑われるだろう。

 プアゾがすっかり退屈しきった頃、タゾーラは無表情になって首を振った。

「――やはりのう」

「なにが」

「……思った通りじゃ。あのバカ息子めが。よそのボンクラどもと賭けをしおって。その挙げ句ワシの『フィナ』は三階の窓から石畳にほっぽりだされたというわけじゃ」

 タゾーラはいつもと変わりない、やや怒ったような口調だったが、そのじつ、とても『やや』ではすまないらしかった。

「しかし、人形には自己保護の機能があるはずでしょう?」

「じゃが、人間の命令の方が優先じゃからのう。人形は命じられれば自分で自分を壊すこともできるのじゃよ。人間には逆らえん」

 タゾーラは深々と息を吐いた。

「……まあ、大事なお客であることには変わりないわい。せいぜい修繕費をぼったくってやるとするかの」

 プアゾは思わず身震いした。

 自動人形の行動を決定する知能ユニットは、もっとも複雑な部品だ。人間でいえば大脳にあたる。この知能ユニットについては未だ、プアゾにも扱わせてもらえなかった。

「人形は何でもする?命じられれば」

「まあなあ。唯一の例外といえば、人を傷つけることじゃが――」

 タゾーラはそういって咳払いをひとつした。


 ルアナが、ガラスの瞳でプアゾをじっと見つめている。セラミックの頬にはなんの表情も浮かばない。

 プアゾはルアナに、手近にあった工具を持たせた。

「ルアナ、それで僕を刺してみろよ」

「できないよ、そんなこと」

「どうして?」プアゾは唇の端に冷笑を浮かべてルアナに訊いた。

「だって、プアゾがケガするじゃない」

 プアゾは鼻で笑った。

「僕はそう命じてるんだぜ?」

「人を傷つけるなんて、イヤだ」

「どうしても?どんなやつでも?」

「うん」

「もし、僕やタゾーラが誰かに襲われてたら、君は助けてくれる?どうやって?」

「大声で叫ぶよ、それで助けを呼んで――」

「僕が殺されそうで、人を呼んでる時間なんてないときは?」

「ええと……ええと……」

 ルアナが考え込んだ。完全に動きが停止する。

 プアゾは肩をすくめた。

「いいよ、ルアナ、そんなに考えなくたって」

 しかしルアナは凍り付いたままだった。

「おい?」

「どうしたのじゃ?」

 タゾーラがデスクから顔を上げて、一人と一体の方を見た。慌てて立ち上がり、急ぎ足に作業台の角をまわってこちらに向かってくる。

「プアゾ、なにをしたのじゃ」

「ちょっとおしゃべりしただけさ」

「ロジック・トラップに陥ったんじゃな。ルアナを苛めんでくれ」

 タゾーラはルアナを抱え上げると、手際よく上着をめくって背中を開けた。

「一体、あんたはなにを作ってるんだ?なにが最高傑作だ、たかがオモチャじゃないか、それもできそこないの。まともに人の相手もできない」

「ほ。お前さんに言えるかの。行くあてもなく街を彷徨っておったのはどこのどいつじゃろうな」

 プアゾは息を呑んだ。脳裏に沈殿したストリートの記憶が、時折揺さぶられて浮かび上がる。

「……僕だって、街で暮してた……」

「人形が嫌ならいつでも出て行け。どうせここ以外に居場所はないんじゃろうが。まともな暮しがしたいのなら……」

「人形なんてもう厭だ!」

 プアゾは工房を飛出した。



■ 2.BLOOD NIGHT

 マダム・ラコタといえば、梟都の社交界でもちょっとした顔だった。受け継いだ莫大な財産と享楽的な美貌がその人気を支えている。浮いた噂も数知れず、ときにはゼフィエル大公との仲を取り沙汰されたこともある。

 そのラコタが、近ごろ、若い愛人を作ったという。噂でもなんでもなかった。彼女は観劇でも夜会でもちょっといかがわしげなパーティでも、至る所に彼を連れて現れたのだから。

 やや神経質そうだが、目を見張るほど美しい青年だ。マダムによれば、文字通り道で拾ったのだそうだ。しかし、モダンなタキシードを自分の皮膚のように着こなして、静かに佇んでいるさまは、どこから見ても生まれながらの貴公子に見えた。作り物のような美貌が、周囲の者たちを羨ましがらせた。


「プアゾ、久しぶりだな」

 カクテルパーティの会場で、人々の群から一人離れていたプアゾは、聞き覚えのある声に振り向いた。

 燃えている――シャンデリアのサービス過剰な光に、その男は一層輝いて見えた。

「ゼフィエル大公――」

 プアゾは、いつか夜の公園での邂逅を思い出した。

「こんな所でなにをしている?」

 ゼフィエルは皮肉げにいった。プアゾは落ち着かない気分になった。

「タゾーラが心配しているだろう?家出青年のプアゾ君」

「……もういいんです、タゾーラさんのことは」

「人形を作っているよりも、金持ちの人形になってるほうがいいと?」

「マダムは僕をおいてくれているだけです」

「若いツバメとしてな。ご苦労様だ、彼女のお相手とは」

 ゼフィエルが声を潜めてにやりと笑い、プアゾには彼のいう意味がわかった。

「……まさか、僕は、そんな。死んだ弟にそっくりだからって――」

 ゼフィエルが小さく吹き出した。

「彼女らしい言い方だな。ああ、今は教育期間てわけか。キレイなだけの人形に、付加価値を付けるために――ならば私のゲームも、まだ、望みがあるというわけだ」

「ゲーム?」

「そう、ゲームだ。お前が立派な人形匠になれば私の勝ち。お前を私の国に連れていって専属の人形匠として仕えさせる。お前が勝てば、なんでも望みをいうがいい。私がかなえてやろう」

「ならゼフィエル、もうあなたの負けだ。僕の願いをかなえて下さい」

「まだわからんさ――だが、参考までに聞いておこう。お前の望みとはなんだ?」

「それは――」

 プアゾは答えようとして答えられなかった。今の彼には、叶えて欲しい望みはなかったのだ。

 不意に周囲が騒がしくなった。歓談していた客たちが、三々五々、移動を始めた。

「ここにいたの、プアゾ。こっちへいらっしゃい」

 マダム・ラコタが二人のところへやって来て、プアゾの腕を取った。

「ゼフィエル、あなたはどうせ、観に行かないのでしょう?」

「ああ」

「今日は特別なステージらしいのよ、是非ともプアゾに見せたかったんだから」

「ステージ?」

「今夜のメインイベントだわ。すごく楽しみ」

「果たしてプアゾは気に入るかな?」ゼフィエルが唇の端を歪めた。

「なんなんです?」

「見てのお楽しみよ。じゃあ、ゼフィエル、また後で」

 ラコタはそういって、他の客たちと同じ方向へプアゾをひっぱっていった。

「――ゼフィエル大公を知ってるの?」

 途中、ラコタがプアゾに尋ねた。

「ええ……以前に、会ったことが」

「気を付けなさい、あの人は、いろんな噂のある人だから」ラコタは冗談めいた笑みを交えていった。「人ではないともいうし……」

「人間じゃ、ない?」プアゾにはどうとればいいのかわからなかった。

「何十年もずっと、あのまんま。ひどく美しくて、畏ろしいの。私も親しくさせていただいたこともあったけど――」急に彼女の口調が変わった。

「――そうだわ、私が社交界にデビューした時、最初に踊ったのが彼だったのね。その時とまるで変わらないの。全く歳を取っていないのよ。私よりずっと上の人も同じことをいうわ。一体、あの人はいくつなんだろうって――」

 どうにも信じ難い話だ。貴族達が得意とするような冗談かも知れない。が、あの緋色の大公には、そんな超然とした雰囲気もあった。人間でない、といわれても納得できてしまいそうな。

 人々は銘々談笑しあいながら、広大な館の中を歩いていく。やがて階段を下り、重厚な観音開きの扉の向こうに、上のサロンと同じくらいの広さのシアターに行き着いた。

 前方に舞台があり、豪華な椅子が充分な間隔を開けて不規則に置かれている。街のシアターのような整然とした息苦しさはない。調度はどれも超一流品だ。いたるところにこの梟都では見られない動物や戦士の、絵や浮き彫りが飾られていた。

 何人かの誘導係が、客を、それぞれの椅子に案内している。椅子の大半は埋まっていたが、プアゾたちが案内されたのは真ん中の席だった。ちょうどステージが一望できる位置の。

 毛皮張りの椅子に身を預けながら、プアゾは違和感を覚えた。ここしばらくで、上流階級の趣向には大分慣らされてはきたのだが。一体、なにが始まるのか。周囲の客たちは、ラコタも含めて、妙に上機嫌だ。どうも音楽や芝居の鑑賞ではないらしい。

 席が大方埋まった頃、照明が落とされて、ステージの重厚な緞帳がライトに照らされて浮かび上がった。おそらく、伝説かなにかに題を取ったのだろう、ほとんど全裸の筋骨逞しい男が、剣を高らかに掲げ、足下に敵を踏みしだいている図柄が描かれている。

「なにが始まるのです?」

 プアゾは周囲の空気を気にしながらラコタに訊いた。しかし彼女は興奮に目を輝かせて、微笑んだだけだった。

 やがて場内が静まり、緞帳が静かに上がった。

 プアゾはぎょっとした。緞帳の向こう、観衆とステージの間には、頑丈そうな金網が張られていた。ステージにはかなりの奥行きがあった。

 金網のこちら側に、タキシードを着た男が出てきて、中央で立ち止まった。観客達を一望して、バカ丁寧な口調で口上を述べる。

「――さて、本日の勇敢なる戦士の方は」

 一瞬、明りが消え、奥の舞台のソデにスポットが当たる。体格のいい大男が現れた。手には奇怪な形の大型のナイフを握っている。

 プアゾは、その男を知っていた。全身の血管がゾワリと膨れたような気がした。翠玉区のストリートでは有名な男だ。やつの拳の味は未だに憶えている。

 司会の男がそいつの経歴や、今、ここに彼が立っているワケを説明する。いわく、病気の家族のために急遽大金が必要になったとかどうとか。実にもっともらしい話だ。案外、真実かも知れない。

 それにしても、司会の言葉が作り上げたその『戦士』像は、プアゾの頬を引きつらせた。声を出して笑いそうになるのを必死で堪える。

 しかし周囲の他の観客達の反応は違った。三文オペラじみた『彼の』ドラマにいちいち賞賛や同情している。それがもし芝居やオペラだったら一斉に席を立っていたところだろうが。

「……対しますのは、サー・ベンチメイド配下一の猛者、キクスイ!」

 司会が力強く叫んだのと同時、ステージ全体に明りが点いた。男と反対側のソデから現れたのは、人ではなかった。

 身の丈二メートルは軽く超えている。全身が灰褐色の剛毛に覆われた獣。前屈みに二本脚で立ち、軽く開けたその顎には巨大な牙が覗く。腕の先に飛出した爪は大型ナイフのようだった。

 プアゾは呆気に取られて、椅子にしがみついた。

「ホウ……サイロウとは、ベンチメイド氏も珍しいものを」誰かが話しているのが聞こえた。

「氏の領内を荒らし回っていたやつを捕えたと聞いたのだが」

「ああ、ワシも話を聞かされたよ。何でもこの五年間で三百人ほど喰い殺したのと……」

 ステージの上の男が叫んだ。

「ちょっと待て!聞いてねえぞ!こんな化け物……!」

 司会が彼の方を向いて、高圧的な口調でいった。

「『サイロウ』は化け物ではない。知能も高いし、単なる野獣ではなく、立派な戦士だとも」

「ふざけろ!」

「危険に見合うだけのファイトマネーは出している。……それとも、君の力は、か弱い人間相手にしか通じないというのかね?」

 男は黙ってしまった。物理的な力のみを誇ってきた彼には、その力を自ら否定することはできなかった。

 そして試合が始まった。いや、試合というよりは、本物の殺し合いだ。

 勝負は最初から見えていた。しかし男の方も善戦した。互いに小さな傷を付け合い、なかなか勝負は付かないでいる。激しい打撃音、獣の牙とナイフのブレードのぶつかる音、布の引き裂かれる音、観客達のかけ声――だというのに、奇妙なほどプアゾには静かに思えた。

「うむ、あの男、なかなかやるなあ」

「確かに。あのサイロウ相手に」

 そんな声が聞こえて、プアゾは背筋が寒くなった。観客達は興奮してステージ上の死闘を見つめている。

 そこでは徐々にサイロウの優勢がはっきりとしてきた。男は徐々に血と共に体力を失っていった。やがて獣の力強い腕が、男の側頭部に見事にヒット。血塗れになった男が、ステージの上にばたりと突っ伏して、動かなくなった。その傍らでサイロウが身を屈めて、肩で荒い息を吐いている。

 血の臭い、汗、獣の体臭……そして沸き起こった拍手に、プアゾはたまらなくなった。

 弾かれるように立ち上がって出口へと急ぐ。隣のラコタが驚いた顔をしていた。

 ほとんどぶつかるように扉を肩で押し開けて廊下に駆け出すまで、息をすることができなかった。地下の空気がひどく重苦しい。階段を駆け上がって地上階の廊下に出る。大きな窓から、闇に沈んだ夜の庭園が望めた。開いていた窓から夜風が肌を刺す。その刺激で、ようやく現実に戻ってこれたような気がした。

「どうしたの、プアゾ?」

 ラコタが後を追ってきた。

「気分が――」

「初めてだと、少し刺激が強過ぎたかしら」

「あれは……まるで……」

「いい試合だったわ。町でも、拳闘とか、あるのでしょう?でも、今の試合の方がずっと迫力あるに決まってるわ。なんといっても命懸けですものね」

 ラコタは嬉しそうだった。

 なにかが『違う』気がした。彼女は――いや、他の観客達も含めた彼らは――どこか根元の方から、自分とは相容れないような。あれは『試合』なんかではない、一方的な殺戮だ。それこそ観客は求めているものなのだ。ステージの上下の間にはたった一重の金網があるだけだったが、それは距離以上の隔たりを作っていた。

 プアゾは立ち上がったが、まだ足下がふらついた。

「大丈夫?よほどショックだったのね。でもじきに慣れるわ――ほんとに。顔が真っ青よ。どこかの部屋で休ませてもらいましょうか」

 ラコタは、プアゾを、廊下の端のゲストルームに引っ張っていった。

 さして広い部屋ではないが、他の部分以上に金のかかった調度が並んでいる。

 奥にあったベッドに、ラコタはプアゾを連れていき、上着と靴を脱がせて横にならせた。

 沈み込むような感触――できればそうなりたい、との想いが、一瞬、プアゾの脳裏を横切った。目を閉じると、刹那、自分がどこにいるのかわからなくなる。

 と、急に、彼女が多い被さってきた。その身体の柔らかさと重みに、違和感を覚えた。

 唇に、唇が押し付けられる。貪るような接吻。彼女の指が髪の中に侵入してくる。

 驚きはしたが、抵抗しようという気力もなかった。どうせわかっていたことではないか。自分はそれを予感しながらも、逃げ出そうとはしなかったのだ――

 しかし、タイとシャツのボタンを外され、胸に彼女の舌を感じた途端、耐えようのない嫌悪感がこみあげてきた。

 ラコタを振り払って起きあがる。彼女が眉を寄せた。

「……いやだ」

「今更なにをいうの?」

「僕は、そんな――」

「元からそのつもりでしょう?どうして私についてきたの、あの夜?」

「あなたが――声をかけてくれたから……あのときはただ……」

「私がなんのためにあなたを拾ったと思ってるの。所詮、顔がイイだけのごろつきのくせに」

 彼女を押しのけて逃げるように立ち上がった。

 彼女が追いすがるように後ろから手を伸ばして彼を捕まえようとする。

 丸テーブルに脚を取られて、テーブルもろとも倒れ込んだ。その上に置かれていた果物篭から、いっぱいに盛られていた様々な果物が転がり出る。胸の下でぐしゃりとした感触。同時に甘酸っぱい匂いが広がった。

 とっさに胸にやった手が真っ赤に染まる。みずみずしい葡萄の汁だ。

 起き上がろうとする肩をラコタが押さえつけた。なおもがく。とにかく彼女から逃れることしか考えられなかった。

 毛足の長いカーペットの上を這った指先に冷たい物が触れた。とっさに掴んだそれは、ちっぽけだがぴかぴかに磨かれた、フルーツナイフだった。


 館の廊下は静まり返っていた。サロンでは、未だ、カクテルパーティが、いつ終るとも知れず続いている。しかしその喧騒もひどく遠い。

 人工の照明はすっかり消されていたが、大きな窓から差し込む月と星の明りで、辺りは充分に明るかった。少なくとも現実と幻の療法を見ることができそうなくらいには。わずか赤みを帯びた月が、廊下の床に、規則正しい窓枠の影の列を描いている。

 窓枠に腰掛けて、一人、月見酒と決め込んでいたゼフィエルは、廊下の暗がりの中から現れた人影に目を向けた。

「プアゾか?」

 様子がおかしい。まるで雲の中を歩いてでもいるかのようだ。

「おい?」

 プアゾはゼフィエルをまるで無視して、その前を通り過ぎようとした。ゼフィエルは彼の肩に手をかけて向き直らせた。

「どうした?」

 匂いに気付いた。いや、先程からゼフィエルの嗅覚は捕えていたのだ。濃厚な血の匂いを。

 プアゾはひどい有り様だった。きれいに整えられていた髪はくしゃくしゃだし、上着とタイはなくなり、シャツはすっかりよれている。さっきまで一部の隙もなく、まるでマヌカン人形のように決めていたというのに。そしてその胸と手を染める、徐々に乾き始めた血。

「なにがあった?」

 ゼフィエルは眉をひそめて刺すような表情でプアゾの肩を掴んで揺さぶった。

「僕は――」

 プアゾはようやくゼフィエルに気付いたようだった。顔をそむけて、歪める。一瞬、泣き出すかと思えた。

「僕は……」

「誰の血だ?」

 プアゾは黙って、今自分の来た暗い廊下の奥を顎で指した。

 半開きになっていた、その部屋の扉を押し開ける。ゼフィエルでさえ、束の間、部屋に入るのをためらった。

 床の上に女が仰向けに倒れている。全身を朱に染め、手足をだらんと力なく広げて。まるで赤い花のようにさえ見えた。そのうつろな顔からは、生命はすっかり抜けていた。

「――ちっ」

 ゼフィエルは小さく舌打ちした。それからプアゾの方を向き直った。プアゾは不安そうに彼を見返した。

「……これにはゲームがかかっている。だから私はお前を助けてやろう。この梟都では、出来る限り、使いたくなかったのだがな」

 ゼフィエルはそういって女の死体に歩み寄ると、手をかざした。

 ぼんやりとその光景を眺めていたプアゾの眼が、大きく見開かれる。

 辺りに飛び散っていた血が、時間を遡るようにして、彼女の肉体へと凝集していく。傷口がどんどん血を吸収していき、やがて塞がっていった。

 今まで弛緩していた女の指先が、ぴくりと動いた。そして、彼女が、二・三回瞬きをして、眼を覚まし、ゆっくり起き上がると周囲を見回した。

「あら……っ?私、どうしたのかしら……こんな床の上で……」

 それから目の前に立っているゼフィエルと、その後ろで呆然としているプアゾに気付いて、

「ゼフィエル、あなた……プアゾも、どうしたの、その顔」

 マダム・ラコタはすっと立ち上がると、ドレスを整えた。多少シワがついてはいるが、血の染みも刺し傷も全く消えていた。彼女の記憶からも。

 プアゾはただ唖然としていた。確かに彼女は死んでいた――彼自身の手で殺したはずなのだ。

「貴女が倒れたと聞いてね」

 ゼフィエルが微笑みを浮かべた。その声を耳にして、プアゾは、改めて、彼に関する噂の一つを思い出した。

「そう、変ねえ、今までそんなこと……」

「疲れているのではないか?そろそろ国へ帰ってのんびり休んだらどうだ」

「そうね、それがいいかもしれないわ。ここは楽しいけれど、暇を潰すのに忙し過ぎるわ」

 それから、プアゾの方に眼をやった。

「あなたはどうするの?」

 彼女の言葉は意外に思えた。今までなら、彼女は否応なく連れていこうとしただろうから。

「僕は――」プアゾは一瞬間を開けて、「この梟都を離れたくありません……工房に帰ります。タゾーラのもとへ」

「そう。それがいいかも知れない」

 ラコタはあっさりといった。ゼフィエルが唇の端で笑っているのを、プアゾは気がついた。

 それからラコタは額に手を当てて、「ああ、まだ眩暈がするわ。ちょっと風に当たってくる。プアゾ、じゃあ、後でサロンに」

「はい」

「……あら、ひどい恰好ねぇ。せっかくの色男が台無しよ」

 それだけいうと彼女はさっさと部屋を出ていった。全くいつも通り元気な彼女だ。とても、ついさっきまで死んでいたようには思えない。

 それを見送って、プアゾは急にゼフィエルに向き直った。

「……ゼフィエル、今のは――僕は確かに……」

「忘れろ」

「……はい」

 そうとしか答えようがなかった。

 しかし、プアゾには、忘れることができなかった――女の胸に刃を突き立てたときの感触が。

 マダム・ラコタが、梟都から自分の国へ帰る途中で、強盗に襲われて殺されたというニュースが届けられると、梟都の社交界にはささやかな波紋が広がった。しかしそれもやがてすぐに薄れていく。


■ 3.Dawnmare

 しばらくぶりに帰ってきたプアゾを、タゾーラは、ただ黙って見つめたが、すぐにプイと後ろを向いて作業に戻るふりをした。

 その後ろ姿があまりに小さいのにプアゾは驚いた。もっと大きかった気がしていたのだが。

「まったく、今までどこにいっておったんじゃ」

「女のところです、タゾーラさん」

 プアゾはそういってにっこり笑った。タゾーラは、振り向いたが、判断に迷ったように眉を寄せて、かすかに唇を動かした。

「――お前のいない間に、仕事が山積みになっておるぞ」

 聞き慣れたつっけんどんな口調。その中に、プアゾは、それ以上の感情を聞き取った。

「早く仕事場に戻らんか」

「はい」

 プアゾは明るく答えた。

 その周りで、ルアナが、さも嬉しそうに飛び跳ねている。


そしてまた、以前と変わらない、人形工房での日々が再開された。

 いや、明らかに変わったのはプアゾの方だ。

 どこと具体的に指摘はできないが、その変化はタゾーラにもわかった。

 しかしなにがプアゾを変えたのか――プアゾが、家出の間になにを経験したのか、タゾーラには訊くことができなかったし、プアゾもまた語ろうとはしなかった。

 ともかく自動人形の人形匠としてのプアゾの腕が、数段、上がったのは確かだった。数十日間のブランクは、彼の技術になんら悪影響を及ぼさなかったし、ばかりか、単なる技術力以外のものが付け加わっていた。帰還後、初めてプアゾの手で完成された人形の出来栄えは、さしものタゾーラも黙らせた。

 そしてタゾーラ人形工房は、今まで以上の活気を取り戻した。


 タゾーラの工房は、梟都翠玉区のマクスウェル街にある。

 全体あまり上品でないといわれている翠玉区の中でも、この辺はかなりひどい。スラムの一歩手前というところだ。

 そんな街なので、犯罪など日常茶飯事だ。強盗、放火、ホールドアップ、掏摸、カッパライ、誘拐、詐欺、殺人……

 だから、ある朝、道路の清掃人が、路地のごみ箱の隅で女の死体を見つけたとしても、それは大したニュースにもならなかった。


「全く、あいつったら。自分で来もしないで」

 なりは派手だがどこか安っぽい感じのする女だ。よくいえば親しみやすい。もっと若い頃はさぞかし美人だったろうが、荒れた生活が年齢以上に彼女の器量を下げている。

 プアゾは居心地の悪い思いをしていた。女が不機嫌なせいだけではない。

 部屋全体の趣味はいい。ラタンの調度でまとめられ、遠い国の雰囲気を醸し出している。

「……で、ジャックはなんて?」

 女は苛立ったようにプアゾをみた。

「あなたにこの人形を届けるようにと」テーブルの上に乗ったバレリーナの姿の人形のセッティングをしながら、プアゾは努めて冷静に答えた。

「それだけ?」

「ええ」

「あいつの魂胆はわかってんのよ!自分の代わりにあんたよこして」

 女が急にプアゾに近付いて来た。

「確かにあんたはイイ男だわ。悔しいくらい。あいつなんかよりずっと」

 女の手が頬を撫でる。プアゾは逃げ出したくなった。

 突然、彼女の手がプアゾの頬をしたたかにはたいた。

「バカにしないでよ!さっさと帰ってジャックに伝えてちょうだい!こんなもんでごまかされると思って!?」

 女が人形を掴んで投げ付けた。プアゾは慌てて人形を抱き止める。勢いで、プアゾの腕の中の人形が大きく跳ねた。

 追われるようにして彼女のアパートをでる。


 重い足取りで酒場のカウンターに着いた。

 初老のバーテンがジロリとプアゾの顔を睨んだ。が、無言のままだ。プアゾは短くいつもと同じ注文をした。

「よう、どうしたい、色男。元気ねぇじゃねぇか」

 ニヤついた男がからかい口調で声をかけてきた。プアゾが無視すると、男はますます馴れ馴れしくプアゾの肩に手をかけて、

「へへ、女にでも逃げられたんか?淋しいってんなら――」

「うるさい」

「なんだてめぇ……」

 その時、店の隅の方から声がした。

「そっとしといてやれって、プアゾ君は、ボスの当て馬にされてお疲れさんなんだ」

 耳障りな声の調子に、プアゾはその方を見た。店の一番奥のボックスに、男がふんぞり返っている。若い。プアゾと大差ないだろう。周囲にも一目でそれとわかるチンピラや商売女が何人かいるのに、そのウィスプというらしい男が目立つのは、ひとえに服装の趣味の悪さだ。イカニモ成金趣味な――

 ふと、彼の背後の壁に、巨大な渦巻が描かれているのに気付いた。

 いや、絵ではなかった。大理石でできた壁に、巨大な巻貝がはまっているのだ。プアゾはその名前は知っている。連れられていったミュージアムで目にした。そういえば、この店の名前は『アンモナイト』といった。

「ボスがよ、飽きた女の相手させることにしたのさ。人形売ってるよかうってつけだぜ」

 下卑た笑い。相手が自分のことを詳しく知っているということよりも、その笑い声の方が気に障った。

 プアゾは席を立ってウィスプのテーブルに近付いた。そして、にやけた顔にめがけて、グラスの中身をぶちまけていた。

「……や野郎っっ」

 周囲にいた男達が総立ちになる。

 飛んできた拳をひょいと交わし、そいつの脚を払った。

 面白いように体が動いた。喧嘩なんて随分久しぶりの気がした。それでも体が知っている。

「クソっ」

 男が鈍く光るナイフを振り回してかかってきた。切っ先が頬をかすめる――男の手を強くはたくと、次の瞬間には刃物はプアゾの手に移っていた。

 相手の男の顔が恐怖に引きつった。プアゾの手にした刃が、本当に自分の胸に刺さったような幻覚を見ていた。その腹に膝がめり込んで、男は床に崩れ落ちた。

 プアゾが周囲を見渡すと、そいつが最後だった。

 隅の席では、ウィスプが、煙草を咥えたまま火も点けずに、こっちを見ていた。

「……へぇ……」

 短くそう呟いたきりだ。

 プアゾは服装を直すと店を出た。すっかり酔いは醒めていた。


 女の頬にそっと接吻ける。

 血の気の失せた、冷たい頬だった。

 夢を見ているかのようにうっすらと開けられた眼。眠っているようにも見えた。

 その喉笛に大きく口を開いた傷と、そこから流れて彼女の身体を浸している血さえなければ。

 狭い路地には血の匂いが立ち籠めていた。

 名も知らない女だ。夜の街で声をかけてきた、ただそれだけの。

 プアゾは夜空を振り仰いだ。彼らを挟んでそびえる建物の黒々とした影の間、青みを帯びた空間に、白く細長い月が灯っていた。ナイフのようなその月のエッジは、冷酷なくらいに美しく、染み一つなかった。

 不意に、目蓋に冷たい点の刺激を感じた。雪ともいえない凍えた水の粒が、ひらひらと宙に舞っている。

 凍える季節が訪れるのもそう遠くはない。


 タゾーラはいつものように無言でプアゾに設計図をよこした。プアゾもいつものように無言でそれを受け取って、ざっと一瞥した。

 一瞬、プアゾには、その意味がわからなかった。いつも受け取る図面とは、かなり違っていた。

「……?」

「お前にも、もう、それくらいは組み立てられるじゃろう」

「……知能ユニット……僕に、これを?」

「といっても、〝アッパー・リミッタ《UL》〟の部分だけじゃがな」

 人形の、人間でいえば『脳』にあたる知能ユニットは、無数の部品が組合わさっている。その中でもULは、独立した部品としては最小で、単純なパーツだ。

 人形の行動を決めるのは〝アクティブ・プロシージャ《AP》〟と呼ばれる機構だ。身体の各所のセンサーから送られてくる信号と、人形の現在の状態、それに記憶から、これからどんな行動をとるか、最上位の〝カーネル〟が概要を決め、それを実現するために最下位の〝ファンクション〟が、人形の身体の各部分のアクチュエータの動作を決定する。

 その一連の過程に、様々な形でリミッタが介入してくる。APはリミッタの制限を超えることはできない。自動人形の行動は、APとULの対立の結果といえる。

「UL……本当に、こんなものが必要なのでしょうか?」

 するとタゾーラはちらりとプアゾに鋭い視線を送った。

「そう思うかね?」

 プアゾはぎくりとした。予期していない返事だった。

「人形が人形であるために、それこそがULの存在理由じゃ。ULはAPに対し絶対的な支配力を持っている。人間の本能以上の〝力〟だ。それゆえに人々は安心して人形遊びが出来るというわけじゃよ」

「では、もし、ULを外してしまったら――」

「通常のAPはULの存在なくしては動作を決定することができん。APの動作決定にULからの評価が大きく影響するのじゃ。ULがなければ人形の行動は全くの無秩序ということになるが――」

 それからタゾーラは、工房の棚の方を向いて、そこに置物よろしくちょこんと収まっている人形に声をかけた。

「ルアナ、こっちへ来なさい」

「なに?」

 道化師姿の人形が、棚から飛び降りて二人の方へやってきた。そして、軽々と自分の背丈よりも高い作業台の上に飛び乗った。

「もう、いつぞやのように迂闊なことはいわんほうがいいぞ。ルアナの知能ユニットを修正した。これも一つの実験じゃがな」

「……と、いうと?」

「ULのAPに対する支配力を弱めた。ルアナの知能ユニットはこの〝対立型〟では最高度なものじゃ。ULは単なるご意見番にすぎん。行動を決定するのはあくまでAPじゃ」

「では……今のルアナは、人に逆らったり、人を傷つけたりできると?」

「ルアナ自身がそれを望むならばな」


 目の前に、たった今、自分が殺したばかりの死体が転がっている。顔も性別もわからない。ただ、ほんの、ついさっきまで、それが人間だったというだけだ。

 不思議なことに、血は一滴も流れていない。プアゾは漠然とした不安に襲われて、死体に刃を突き立てた。

 だが、どんなに切り裂いても、その死体からは血はでてこない。まだ体温さえ感じられるというのに。

 プアゾはその場に立ち尽くした。

 不意に誰かが肩に腕を乗せ、寄り掛かってきた。

 すぐ耳元で囁くような声がする。

「どうした、見つかったか?」

「わからない……わからないんだ」

「なにがだ?」

「自分が何を求めているのか――」

「わからない?足下に転がっているのはなんだ?お前の手にあるものは?」

「……怖い。僕はどうして」

「お前が望んだからさ。それがお前の本性なんだよ」

 プアゾはゼフィエルに向き直った。奇妙に彼のことはハッキリと覚えている。口元に浮かぶ冷笑までも。

「僕が!?こんな、人殺しだというのか?」

「そう、他の誰でもない、お前こそ、生まれついての人殺しなのさ」

「違う――僕は……」

 プアゾは手にしたナイフをゼフィエルの胸に突き立てた。 胸に走った鋭い痛みとともに跳び起きた。

 地下の彼の寝室は薄明るかった。壁の高い位置にある採光窓から、朝の、青灰色の光が侵入している。

 プアゾは額に手を当てて、そのまましばらく身じろぎ一つしなかった。毛布の上に浮かんだ、自分の身体のぼやけた輪郭、それを覆う夜の残滓をしばし目で追う。やがて闇は薄れて消えていった。

 彼の胸を刺したとき、確かに痛みを感じたのは、自分自身だ。


 押し殺した短い悲鳴と、駆け出した靴音でプアゾは我に帰った。

 ハッとして振り向くと、街灯の逆光に照らされて輝く氷片の中、人影が走り去っていくのが見えた。

 急いで後を追おうとする――間に合わない。

 突然、なにかが落ちてきて、人のシルエットと交差した。人が呻いて倒れる。

 プアゾは思わず足を止めた。それから喉の奥で呟いた。

「ルアナ……」

「気絶させただけだよ」

 ルアナは倒れた人間の方を見遣っていった。人形の顔はまるで無表情だ。

「……なんでここに……」

「だって、プアゾが、心配だったから。最近は変な事件も起きてるし。イザって時はプアゾを守ってあげられるよ、ボクは」

「見てたのか?」

「彼女が声を掛けるとこからね」

「僕は……抑えることができない――」

「悔やんでるの?人を殺したことを」

「……いいや。だから、かえってそれが怖いんだ……僕自身が」

 プアゾはその場に膝をついた。冷えきっているはずの石畳は、生暖かく濡れていた。

「大丈夫、プアゾはプアゾだよ」

 ルアナが近寄ってきて、肩に手を置いた。

「僕をかばうのか?こんな……」

「ボクは人形だよ?人を楽しませるために作られた」

 その時、急に、ルアナがただの機械人形以上のものにみえた。

「プアゾ、ナイフを貸して」

 ルアナはそういって、自分でプアゾの足元に転がったナイフを拾い上げた。その鋭利なエッジは血に濡れて、ぬらぬらと光っている。

 プアゾはぼうっとして眺めていた。ルアナが手にした刃物を振り上げる。その手にあると、まるで刀のように大きかった。

 プアゾはハッとした。

「ダメだ……!」

 ルアナは刹那、動作を止め、プアゾの方を見た。そしてそのまま、刃物を振るった。

 その瞬間を、プアゾは目にすることができなかった。顔を両手で覆って、彼は泣いていた。


 冷たい氷のかけらが皮膚を刺す。 茫漠とした赤い平野を、独り、歩いている。

 足首まで浸しているのは、赤い液体だった。どこまでも見渡す限り続いている。

 赤黒い空がのしかかるように広がっている。地との際は仄かに白く明るかった。

 足が重い。一歩毎に鮮血の水面に沈み込んでいく。全身を浸す生暖かい赤い液体。

 溺れていく感覚は、しかし、不快ではなかった。


 翠玉区で相次いだ殺人事件は、そろそろ、世間の耳目を集めていた。

 いくらその地域が日頃から事件のニュースに事欠かないとはいえ。しかも、それが一度ではないのだから。

 恐らく同一犯だろうと思われた。それくらい、特徴的だった。とりわけ残虐性の点において。

 犯行を重ねるにつれて犯人の腕がみるみる上達していくのがわかる、という専門家のコメントがどこかの新聞に載った。

 ひとけの絶えた真夜中、微睡みかけた石の街を彷徨う凶気。夜が明ける頃、人々はようやく饗宴の果てを知る。

 最初はどこかの新聞紙が付けたのだ。じきに皆がその名で指すようになった。

 DAWNMARE――〝暁の悪夢〟と。


 雪がすっかり葉を落とした木立を、モノトーンの風景に変えていた。その圧倒的なまでの量で、全てを白に塗り込めてしまう。

 プアゾは歩き続けていた。もう足の感覚が麻痺しかけている。いつしかここへ迷いこんでいた。気がつくと夜が明けていた。

 木立が不意に途切れると、瀟洒な庭園が現れた。白いベールに覆い隠されて、しんと静まり返っていた。

 高台の東屋に、誰かがいた。一目でわかった。周囲を包んだ色彩の中で、彼だけが赤く灯っていた。

 プアゾは引き寄せられるように彼の方に近付いていった。

「ゼフィエル……」

「おや?また、ここで会うとはな」ゼフィエルは皮肉気な笑みを浮かべた。

「こんなところでなにを?」

 訊くまでもなかった。彼の傍らには、酒の壜とグラスが二つ置かれていた。

「雪見酒さ。我が国では白い雪が珍しくてね」

 プアゾは倒れるようにベンチに腰を下ろした。大理石は凍えるほどに冷たかったが、雪のないところに座りたかった。

「お前も飲め。身体が冷えているだろう」

 ゼフィエルは空のグラスに酒を注いでよこした。いつかと同じ、赤い酒だ。プアゾは一瞬ためらってから、それを受け取り、注意深くグラスに口を付けた。火のような――だが、以前ほどは強く感じなかったし、その熱さが今はひどく心地好かった。全身が赤熱していくよう。

「お前はどうしてここに?また、迷ったのか?人形匠のほうはどうだ?」

「……タゾーラさんが、前とは変わった気がする」

「変わったのはお前自身さ。私が国に戻っていた間にも、お前の腕は確かに上達しているらしい。噂は聞いているぞ」一旦言葉を切って、「もう一つの方もな」

 途端、プアゾは咳き込んだ。強い酒の香にむせる。ゼフィエルが冷ややかな目で彼を見遣った。

「ニュースによると、下町に、謎の殺人鬼がうろついているそうだ」

 プアゾは両手でグラスを握り締めた。

「冷酷かつ残忍、しかし見事な技術だ。まるで職人のように……」

「やめろ」

「忘れろといったはずだぞ」

「――どうしても……知りたい、人間の仕組を……中がどうなっているのか……」

「違うな」

 プアゾの手の中でグラスが砕け散った。手のひらが赤く染まる。酒と血が混ざり合って滴り落ちた。アルコールが傷口にしみる。それが現実を思い出させた。

「そう……そんなのはただの口実だ。本当は、ただ、そうしたいだけだ……」

 ゼフィエルは黙ってプアゾの赤く染まった手に自分の手を重ねた。その手が退くと、プアゾの手のひらの傷はすっかり消え去っていた。

 プアゾは眼を見開いて自分の手を見つめた。痛みも既にない。かすかに、痺れたように疼いているが、それもじきに薄れて消えていく。

「……ゼフィエル、あなたは僕にゲームを持ち掛けた。僕が勝ったらなんでも望みを叶えると」

「ああ。だが、今のところ、私の方が勝っているようだな」

 プアゾは勝ち誇ったように叫んで、ゼフィエルに詰め寄った。

「僕の勝ちだ!僕をあなたの国に連れていってくれ。この街にいる限り、僕は人を殺してしまう……もう厭だ、人形も、この街も……」

 ゼフィエルは一瞬眼を細めて、キッパリといった。

「ダメだ。私が欲しいのは、人形匠としてのお前だ」

「あなたのせいだ!あなたにさえ出会わなければ……」

「いいや。それはお前の本性さ。私はそれに気付かせてやっただけだ」

 プアゾはまじまじとゼフィエルを見つめた。

「……あなたは……何者なんだ……」

 いつか観たオペラを思い出した。老碩学を誘惑し異界に連れ去る者。あるいは壮麗な絵画。天より降り来る者と地より這い出る者との闘い。あるいは――

 ゼフィエルが立ち上がってプアゾの肩に手をかけた。

「おとなしく工房に戻って、修行に励むがいい。お前が一人前の人形匠になったら、そのときこそ、是が非でも連れていくぞ」

 プアゾはゼフィエルを見据えたまま、小さく首を横に振った。

「い……いやだ……」

 それは自分に向けていった言葉だ。彼の言葉にうなずきそうになった自分に。

 ゼフィエルがにやりと笑った。

 プアゾは彼の胸にナイフを突き立てていた。

 赤く熱い液体が、刃を伝ってプアゾの指を濡らす。自分の胸は痛みはしなかった。ブレードは確実に相手の心臓に達しているはずだ。

 ゼフィエルが驚いたような顔をして、そしてプアゾに寄り掛かるようにして崩れ落ちた。

 プアゾは咄嗟に彼の身体を抱き止めた。ぼんやりと、彼の血が赤いことに驚いていた。同時に、それはひどく当然のことにも思えた。彼が人間であるにしても、そうでないにしても。

 ゼフィエルの身体から力が抜けていく――と、同時に彼の重さも感じられなくなっていった。ハッキリとした輪郭を失い、細かい粒子と化して、崩れていく。手のひらで受け止めようとしたが、それは砂のように指の間からこぼれて床の上に山を作った。そして吹き込んだ一陣の風に吹き散らされ、消えていった。

 ナイフが床の上に落ちて、甲高い音を立てる。

 プアゾは呆然とその場に立ち尽くすだけだった。


 いつ、どうやって帰ってきたかはっきりしない。

 気がつくと工房の前に立っていた。

 雪に埋もれた街がまばゆいほどに輝いている。道路に積もった雪の上には、さっそく、轍や、いくつかの足跡が刻印されていた。

 扉を開けるとルアナが飛出してきた。

「プアゾ!どこいってたの?タゾーラが心配しているよ?また、家出したんじゃないかって……」

「どこにも行かないよ、僕は」

 プアゾは無表情にそういった。


fin.

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