prologue
導入なのですが読まなくても全く問題ないです
一人暮らしをする俺の家に弟が来た。ここ最近では珍しくもないが。
「兄貴、今日はプレゼント持ってきたぜ」
何か重そうな箱を抱えて弟が入ってくる。手伝いに行こうと考えるがすぐにできないということを思い出す。暗い気分になりそうなのを抑えるためにできるだけふざけて返答する。
「苦しゅうない、さすが我が弟。でそれなんだ?今日なんのプレゼント?俺誕生日来月だけど」
「兄貴にこのゲームやってみて欲しくてさ、これすごいリアルだから、その、気分まぎれると思って」
もう歩けない、走れない辛さがゲームでまぎれるかっての…と少し思うがせっかくの弟の好意だし、空気を悪くしないように明るく返す。
「ゲームってお前その箱明らかにソフトじゃなくてゲーム器の方だろそれ…」
「そうだね。兄さんフルダイブのゲーム器持ってないでしょ」
ゲーム世界で動き回って気を紛らわそうってところか…。でも
「フルダイブって俺多分やんないぞ?前借りた時もリアルとのギャップで気持ち悪かったし…」
「前かしたやつとは物が違うさ。なんたってこれ『HardCore』だからね」
『HardCore』聞いたことはあるがゲームに疎い俺には他のフルダイブとそんなに変わるものとは思えない。
「そのゲーム、そんなに特別なものなのか?」
「そりゃそうさ、5万もするゲームが1000万台売れてんだぜ?しかも半分近くは引退してる。5万払って買ったmmoを2年で辞めるなんて意味がわからん。しかもそのうち何割かは1月とかで辞めるんだぜ?信じられないだろ?」
ゲーマーの弟が熱く語りだすがその内容から弟が言いたいことをいまいち理解できない。
「つまりなんだ、そのゲーム、売れてる割にすげーつまんないゲームってことか?
「違うよ、その逆さ。そんだけ引退者がいる中、2年以上たった今ですら新品で月50万台以上売りあげてるゲームなのさ」
新品で?引退した人のゲーム器500万台全てが中古で流れているわけではないだろうがかなりの数は出回るだろう?そんなに需要があるものだろうか。
「ま、疑問は尽きないだろうけど、とにかくやってみてよ。きっと気晴らしにはなるさ。この『リアルすぎる』世界はきっと兄貴も気にいると思うよ」