少し寒い
それからも学校での姿の見えないいじめは続いた。
上履きは隠されるので毎日持ち帰るようになったら靴箱にゴミが詰め込まれるようになった。どんな結果になっても愉快なモノでは無いのでわたしは朝自分の靴箱を確認するのを止めた。
クラスメイトがわたしを無視するようになった。
まあ、そもそも友達のいなかったわたしにとって無視といういじめは物理的な嫌がらせにくらべたら大したことは無かったのだが、給食当番の女子がわたしの皿に盛る食事の量を極端に減らしてきたのは流石に堪えた。
塾に通っているわたしの夕食は時間が遅い。お小遣いの金額も大したことないので毎日買い食いをするわけにもいかず、塾の授業の間に空腹に苦しめられる事になる。
少し涙が出てくる。
わたしが一体何をしたというのだろう?
自分の世界に閉じこもってクラスの女子達と交友関係を広げなかった事が悪かったのだろうか?
わからない
わからない。
ただ、少し悲しかった・・・・・・。
そっと夜空を見上げる。
公園の冷えたベンチから見上げる夜空は透き通った黒のヴェールにちりばめられた星々が瞬いていて、まるでわたしの悩みをあざ笑うかのように残酷に美しかった。
一筋の涙が瞳からこぼれ落ちる。
なぜだろう?
今まで学校の誰とも仲良くならなかった。だから無視をされても大丈夫だと思った。いじめなんてくだらないと・・・そう思っていた。
でも何故だろう?
涙は次から次へと瞳から溢れて止まらない。
流れ落ちる涙を拭うこともせず、わたしはただ空を見上げていた。
新月だ。
いつもわたしを柔らかに照らしてくれる月の光は今は無く、ただ細々とした星々の輝きだけが街灯の消えかけた夜の公園を薄らと照らしている。
そして、
その日は待てども待てども男は夜の公園に現れなかった・・・。
わたしはすっかり冷え切った体に鞭打って立ち上がり、夜の公園を後にする。
「・・・グッドラック、わたし」
◇