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グッドラック バッドガイ  作者: 武田コウ
10/13

思考 2

「赤木さん、後で職員室に来なさい」


 担任の先生に厳しい表情でそう言われたわたしは無言でこくりと頷いた。


 用件はわかっている。わたしが宿題を忘れた件について怒られるのだろう。


 普通は宿題を忘れたからといって職員室に呼び出しなどされない。多分普段絶対に宿題をやってくる優等生が良いわけも言わずにプリントを提出しなかったから担任の先生も少し戸惑っているのだと思う。


 放課後、わたしは何も考えずにぼんやりと職員室に向かった。待ち受けていた担任の教師はいつになく真剣な表情でわたしを迎え入れた。


「・・・来たわね赤木さん。今日は何故呼び出されたのか自分でわかってる?」


 その問いにわたしはコクリと静かに頷く。


「はい、今日の宿題の件ですね」


「わかっているようですね・・・では単刀直入に聞きますが、アナタは何故宿題をやってこなかってのですか?」


 何故?


 わたしは自分に問いかける。


 わからない


 その答えはいくら問いかけても自分の中にまだ無いみたいだった。だからわたしは素直に答える事にする。


「わかりません」


 わたしとしては真摯に答えたつもりだったのだが、先生にとっては不服な回答だったらしく、彼女は疲れたような顔をして大きなため息をついた。


「・・・・・・赤木さん、別に今回は説経するつもりは無いのですよ? アナタはずっと優秀な生徒だったし、今回の件も何か理由があったのでしょう?」


 理由?


 先生が真摯に向き合ってくれているのは理解できる。しかし今のこの感情を言葉で表現する力がどうやらわたしには備わっていないようで、わたしにできたのはただ無言で彼女の顔を見つめる事だけだった。


 しばらく無言の見つめ合いが続いた後、先生はまた小さくため息をついた。


「・・・はあ、今日はもういいです。今日の宿題はまた明日提出して下さい」


「・・・・・・はい、失礼します」


 そう言ってわたしが職員室から退室しようとすると、ドアの前で先生がもう一度声をかけてきた。


「赤木さん、もし何か悩みがあるようならいつでも聞きますからね?」


 わたしは何も答える事が出来ず、無言で会釈をするとソッとその場から立ち去るのだった。




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