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獣の傭兵  作者: オリバー・スミス
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003

「はぁ……」

(一体何してんだろうなぁ私……)

 磁気嵐で足止めを食らってかれこれ5時間。日も落ちてきてそろそろナイトストーカーが動き回るため今日はここで野宿だ。

隔離エリアの比較的綺麗な部屋に荷物と倒れていた彼を移し、除染してナイトストーカー避けの罠を設置してもうクタクタだ。保存食のクッキーを齧りながら簡易コンロでスープを温める。

 結局扉の奥にあったものは衰弱した人間(?)1人と彼が身につけている衣服や動かない腕輪型端末の入った数百位ありそうなロッカーと、おおよそ同数の死体の入った冷凍休眠(ハイバネーション)装置だけだった。状況からするとどうやら彼はつい最近までこの休眠装置の中で凍っていたらしい。

(一体何の施設なのかしら?そもそもこのアイスマンは一体何者なのかしら?)

 見つかった端末を調べたがどうやら生体認証等のプロテクトが掛っているらしく自分が操作してもどうにもならない。おそらく彼の腕に埋め込まれているソケットが関係しているみたいだ。物理ボタンでどうにかアラート音は止めれたが腕輪には発見した時からバイタル異常[脱水・栄養失調及び過労]の警告が出たままだ。

 発見した状態もそうだったが何より彼の姿が異様だった。体のあちこちに腕と同様のソケットが埋め込まれ頸には見たことのないモデルのNLIが埋め込まれている。

 そして極めつけは長い髪の間から覗くそれだった。


 コンソメの様な匂いと人の気配で目が覚めた。近くに誰かいるのだろうか?

「……んん、」

「ん、目が覚めたの?」

すぐ横で女性の声がする。(人がいる‼︎)視界がぼやけてはっきり見えないがどうやら彼女に助けられたらしい。地獄に仏ならぬ女神だ。

「ちょっと待ってね。今スープ温めてるから。」

目をこすりながら何とか体を起こし、彼女の方を見る……彼女?

「気分はどうだいハーフさん?」

 声の主は犬だった。いや、犬に似た狸か何かである。

4日前の目覚めから現実離れした事が続き、何があってもおかしくないとは思ったが、なるほど。これはなかなか予想外だ。目の前のそれは属に獣人とでも言ったらいいのだろうか。昔ファンタジー映画などに登場した人と獣……狸を足して二で割った感じである。

(しかもケモ耳とかじゃなくガチなヤツです、はい。)

「……狸が喋った。」

つい本音が口から漏れてしまい彼女(?)は顔をしかめる。

「命の恩人を動物扱いとは感心しないねミックス。そういう君は一体何者だい?」

失態だ。ここで彼女の機嫌を損ねるのは不味い。自分は空腹で動けない。彼女が直接手を下さなくてもそのまま食べ物を持って消えてしまったらいよいよ本当に餓死してしまう。

「あのっ、すみません。初めて貴女の様な方を見たもので……えっと、そのぉ……。」

自分でも情けなくなるほど拙く、コミュ障感丸出しの弁解にどもってしまう。

(相変わらずむすっとしていらっしゃる。ヤバい、非常にピンチです。)

永遠にも感じられる沈黙がしばらく続いた後、はぁ、と彼女はため息をついて

「ここらじゃWarWolfなんてそう珍しいものじゃないんだけどね。」といくらか不満そうな感じで言った。

「うぉーうるふ?」

聞きなれない言葉に思わず間抜けな声が出てしまう。相当アホ面を晒していた為か、今度は彼女が困惑し始めた。

「アタシらみたいなのを言うんだ。君だって半分そうだろう?」

(アタシら? 半分同じ?)

「?そんな耳でまさか違うなんてないでしょう?」

耳?言われるままに僕は自分の耳に触れた。皮膚に触れると思っていたが、予想に反し何やら髪とは違うふさふさした手触りに思考が停止する。

「は?」

「ん?」

「えっと……何か鏡のようなものをお借りできますか?」

頭陀袋をごそごそ引っ掻き回した後、「はい。」と彼女はボロボロの手鏡を投げてよこした。

 なるほど、端的に言うとケモ耳は僕の方でした。

鏡にはいくらか若く見えるが、一部を除いて見慣れた自分の顔が映っていた。記憶と違うのは耳である。

人の耳がある位置に黒い毛で覆われた獣、犬の耳がくっついている。

特殊メイクでもなく、特に不自然な手術の後もなく、外耳の先までキッチリと血管も通っており、先天的に備わった器官、「正真正銘、小野田 藍の耳です」と言わんばかりにイヌ耳は鎮座している。

「そのなりでハーフじゃない訳ないでしょう?」

そういえば初対面から彼女は僕の事を『ハーフ』『ミックス』と呼んでいた。

「て、言うのはつまり……。」

「獣人種と普人種のハーフ。」

何を当然の事を?とばかりに混乱する僕を彼女は捨て猫を見るような、心配するような何とも言えない目で見ている。

 確かにヒトとイヌは同じ哺乳類だが、肉食目と霊長目では全く別の進化を遂げた生き物だ。そう簡単に交配出来る筈がない。というよりも不可能だ。

しかし、鏡には2種の交雑種と思われる自分が映り、目の前には狸が人型に進化したような彼女がいる。

(……一体何が起きているんだ?)

理解の追いつかない現実に僕はただ、呆然とした。


久々の投稿です。

PCがポンコツ化したため投稿が遅れてしまいました。

データが消えなくてよかったです。

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