第1話 鬼も歩けば穴に落ちる。
ここは鬼界の緑が生い茂る昼下がりの公園。
「鬼さんこちら!手のなる方へ!!」
俺は今、5人の小鬼たちが元気よく鬼ごっこをしているのを少し盛り上がったところにある木影から眺めている。
俺の名前は 神叉鬼魎 鬼八 (かさきりょう おにはち) だ。見た目は、中肉中背で体脂肪は5%以下だと、一目でわかる肉体。髪は灰色に近い銀色。耳は少し尖り。口から鋭い牙が顔を覗かせ。瞳は、まるで見るものを射殺すかのようだとよく言われるからそうなんだろう。
そんな俺だか、先程から思っている事がある。
(鬼が鬼ごっこってなんだ?鬼なのに鬼になりきってるのか?…じゃぁ、逃げている鬼は何なんだ?…わからん…鬼が鬼のつもりで鬼を追いかけ、そして、鬼が鬼のつもりの奴から追いかけられ…触れられたら鬼のつもりになる…あ?意味わからねぇだろ!頭痛くなるわ!!)
俺はない頭で必死に考えてはいるが、鬼界では考えるのは苦手だが、頭の良い方だと思う。
「ふぁ〜…寝みぃし家に帰るか…おっ!?おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!???」
立ち上がり、帰ろうと足を踏み出した途端、先程まで無かったはずの大穴に吸い込まれるように落ちて言った。
穴の中は真っ暗で、どれだけ手を伸ばしても壁に手は届かず、上を見上げても、落ちてきた筈の入り口も消え、音もなく光もなく、ただただ浮遊感に見舞われ、少しして何かに足が着いたと思った途端に、視界が開けた。
「…なんだ…こりゃ…」
周りを見回すと、枯れた背の高い木々がこれでもかと言うほど生えている森に俺は呆然と佇むのであった。