遊園地は楽しすぎます!
ービズニー・アンドー
そこは、一言で言うと『夢の国』。
そんなところに、3泊4日で泊まりに
行けるなんて、夢みたいで……、
あり得ない。(しかも貸し切り!)
ほっぺたをつねったら、痛みを感じる。これは現実だ。
只今、○月×日△曜日、噴水公園
前。
集合時間は朝の6時。
だけど今は5時。。。
可哀想だけど、朝の4時半に
優を起こして、強制的に連れてきた。
だから隣には優がいる。
けどなんで……。
私の右隣に黒瀬がいるの?
「いやぁ〜、まさかセンパイ達と
泊まれるだなんて思ってなかったなぁ〜!」
「あのー……。なんで
てめぇ(黒瀬)がここにいんの? 」
「え? だってビズニーに行くんだもん」
「今5時。集合時間6時ね」
「いや、なんか朝早く起きちゃって、
窓から景色眺めてたら、
白瀬が家を出るとこ見たから、
俺も家出たって感じ」
そう。
私は黒瀬と幼馴染だから、
家が隣同士なのです!
「は? 私が朝起きたら、
うちん家ピンポンして、
『白瀬ちゅわーん!』って叫んで、
うちん家に入って来ようとしたじゃん」
「ハハハ!なんのこと? ww」
なーんかみんな、
「黒瀬君かぁっこいい!」
「黒瀬君やっさしぃ〜!」
なぁーんて言ってるけど……
絶対幻覚見てるって!
絶対宇島センパイの方がかっこいいし!!!
「白瀬ちゅわーん!
俺っちを睨まないでぇww」
「キンモ!!吐く!」
「!? w」
「響と黒瀬、仲良いね」
「優まで!? 本当にそう見える?
ホントだったら……、吐く」
「ホント〜w」
「オロロロロ」
白瀬は吐く『マネ』をした。
「何す……」
「あ!!響、ごめん!
家に忘れものしちゃった!
6時までには着くから、ちょっと待ってて!!」
「え!? 優!」
「なんで……? 」
「黒瀬!響といい感じに
なれよ!私の意図に気づいてね!」
優は小さい声でそう言い、
クスリと笑った。
「んー。暇だな」
「おーいおいおいおい(泣泣)」
白瀬は声を出して泣き叫んでいる。
「おい、いい加減泣きやめ」
「この状況で泣かないでいられる
かっての!」
「はぁ……。……なぁ、どっか行かね? 」
「え……? 」
白瀬は腫れた目で黒瀬を
見つめた。
「だって、優が待ってる……」
「いいから!」
「うーー。わかった。どっか行こ」
「うん。」
まてよ、白瀬可愛すぎない!?
なんか目が腫れてるせいかなんかで、
むっちゃ可愛く感じる!
「はぁ? 自分から誘っといて
どこ行くか決めてねぇのかよ!」
やっぱ可愛くねぇわ!
「あー。えっと……、
すみません」
パラパラパラ……
「ん? 」
突然、まるでこの時を
待っていたかのように、雨が大量に降ってきた。
「やば!傘ないよ!」
「どっか避難しねぇと」
「うわぁ!最悪!どっかお店とかないかな? ……、あ!黒瀬!金ある? 」
「カードならある……」
「オッケー!ここのホテルに行こ!」
「ん? ここって……、まぁいいや、
まさかそんな運悪くはねぇよな。
よし!行こうぜ!」
「ん? どうしたの? 黒瀬」
白瀬は首をかしげた。
「いや、なんでもねぇ。行こうぜ」
「1307室なら空いてます」
「わかりました。そこで
イイっす」
「えっと、大部屋でございますので、
お二人で、『32万円』になります」
「カードで」
「かしこまりまし……」
「おい黒瀬!くそたけぇけどいいの!? 」
白瀬は大きく目を見開いた。
「あ? 別にこの程度はどうってことねぇよ」
「……」
白瀬は呆れて、何も言えなく
なった。
「よろしいでしょうか? 」
「あー。オッケーッス」
「では、こちら鍵になります。
そちらのエレベーターでよろしくお願いします」
「うっす」
「はぁ、金持ちには呆れる」
「あ? 別に金なんて……
白瀬ちゃんの為になら、
一億円だって使ってやらぁ」
(今の、ちょっと攻めすぎたか? )
「あ? そりゃどうもww」
(……。白瀬、鈍感
すぎww)
白瀬は濡れた髪を乾かしながら
呆れ顔で笑った。
「なぁ、言い忘れたけど、
『ここ、睦月んとこのホテル』な」
「……。
はぁ!!!? ? ? 」
白瀬はホテルが崩れるのでは
ないかというぐらい、雄叫び(おたけび)のように叫んだ。
「いや、『睦月ホテル予約
サイト』って聞いたことねぇのかよ」
「……知ってる!」
白瀬はイラつきながら怒鳴った。
「なんで言ってくれないの!」
「いや、言ったら、絶対
『雨に濡れてでも入んない!』
とかって言うだろ」
「う……ん……」
「来たはいいけど、なに
する? 白瀬」
「……」
「えっと、今5時半です。
白瀬さん」
「……」
「あのー、白瀬様? 」
「うっさい!もう帰る!」
「えっ? ? 」
白瀬は黒瀬を睨みつけながら
走ってホテルを出ようとした。
「やっぱ来てたか」
「え……? 」
私の目の前には、光の塊が……
いや、ちがう、睦月センパイが
立っていた。
「む……つき……センパイ? 」
「どうしたの? ダッシュで
来たけど……? 」
「白瀬ちゅわぁーん!
さっきはゴメ……ン?? 」
「黒瀬……」
「え? なに? 2人とももう
そう言う関係だったの? ww」
「睦月……センパイ。
なにしに来たんすか」
「だって、ここ俺のホテ……」
「もう諦めろよ!こいつは
宇島センパイが……その……好き……
なんだからよぉ……」
「うん。知ってる」
睦月センパイは、勝ち誇った
ような顔をして、黒瀬と私を交互に
見つめた。
「じゃあなんで……? 」
「俺が響ちゃんに惚れたから」
「……けんな。……ざけんな。
ふざけんな!!」
黒瀬は今まで見たことのない
ような顔をして睦月センパイに怒鳴った。
「知ってるぜ? 睦月センパイが
『18股』っていうこと」
「18!? 」
「うん。そうだよ。だけど、
俺の彼女たちにいないタイプなんだよね、響ちゃんって。
俺らの彼女さ、なーんかみんな
量産っていうか、ありきたりっていうか、まぁ、『金につられる女』だからさ、響ちゃんみたいな
子も彼女に欲しいなぁって思っ……」
バチン!
白瀬は睦月の顔を思い切り
叩いた。
「っ……」
「その人たちの気持ちも
知らないで……。その人たちが
どんな思いで睦月センパイと
付き合ってるか……!
その人たちのことも、少しは考えて!」
「ならさ、響ちゃんは俺のなにがわかるわけ?」
「……」
白瀬は黙り込んだ。
「ね? 君には俺のなにも
わからな……」
「『うぜえんだよ、
女好きの女ったらし!
性格クズで、自分だけではなにもできないこのマザコン男!』」
白瀬は急にでかい声で
怒鳴りあげた。
「な……!マ、マザコン……!」
「ふん!いこ!黒瀬!」
「お、ぉぅ……」
「お、おい、いいのか? 」
「なにが? 」
「なにがって……。
睦月センパイだよ」
「あぁー。いいでしょ別に……。あ」
白瀬は急に顔を青くした。
「わ、わわわ、私さ、
と、とぉんでもないことしちゃった!? 」
「う、うんww
でも俺的には超スカッとしたけど」
「……。お、お父さんの会社潰されないかな……!? 」
「もし潰されたら俺の家に
居座っても……」
「今何時? 」
「え? あ、6時5分……。あ、
早く行かないと」
白瀬は急に話題を変えた。
「ゴメンね〜優!」
「いや、ぜぇん然イイよぉ!
で? 黒瀬とは……!? 」
「は? 黒瀬が何? そんなこと
より、睦月センパイは? 」
「え? そこにいるじゃん」
「え? ど……わぁ!」
睦月は白瀬のすぐ隣に、
まるで亡霊のように立っていた。
「俺見て驚かないでよ!
響ちゃん」
す、すごい。驚くぐらい
動揺してないし、平然としている!
「ん? どうしたの?
響ちゃん、足と手がガクガク震えてるよ? 」
逆にこの状況で全く動じてない
方がすごいわ!w
(おい、あんま動揺してると、
睦月センパイの思うツボだぞ)
(わかってる。けどこの状況で
動揺しないでいられるかっての!)
(んまぁ、それもそうだなww)
黒瀬と白瀬は心の中で会話を
した。
「よし。全員揃ったな」
突然の宇島センパイの声に、
私の体は条件反射で跳ねた。
「ん……? wwどうした? 白瀬」
「いや、な、なんでもなくなくなくないです!」
「どっちぃ〜w」
古田華センパイは、可愛らしい
声で笑った。
「んじゃ、行くか」
ビ、ビズニー!お、恐るべし!
私の前に広がったのは、、、
『パラダイス(楽園)』。
マジで夢みてぇ!
「んじゃ、まずは何する? 」
「や、やっぱスプラッシュ・リバー!
その次は、ビッグ・ライトニング・リバー!えっとえっと、その次に……」
「響しゃん、だいぶ興奮
してるね」
「そんな響ちゃんも、かわいいね」
「……、白瀬、あんま暴れすぎんなよw」
「まあ、活気があるのはいいことだが……」
白瀬は顔を真っ赤に染めた。
も、もう!睦月センパイは!
こんなところでも可愛いって……。
しかもみんな、『当たり前ですね』
みたいな顔してるし!
「ひ、響、どうしたの?
1人で顔の形を変えて……」
「うそ!顔の形変えてた!? 」
「う、うんww」
「じゃ、じゃあまずは、
白瀬の希望で、
『スプラッシュ・リバー』
に乗るか」
宇島は、低くかっこいい声で、
そう言った。
「キャァーーー」
とても甲高い声がジェットコースター
内に響き渡った。
「う、うるせぇ」
白瀬の隣にいる黒瀬は、嫌そうな顔
をして、けれどジェッコースターを
楽しんでいるようだ。
「イヤァーーー」
再びジェッコースターの後ろの方
から、高い声が響いた。
「……(´・ω・)」
優の隣に座っている睦月は、
優を細目で見つめながら、青白い
顔をしていた。
「なぁ、俺ら、すげぇ寂しい人
みてぇだな。男2人で」
こ、この寂しそうなぁ、
声をしているのは、
う、宇島センパイとぉ、
古田華センパイでーーーーーーーす。
「いやぁ、楽しかった!
あと100回は乗れるね、優と黒瀬!」
「だね!響!」
女子たちと黒瀬は、とても楽しそうな
声ではしゃいでいた。
「お、おえぇぇぇ」
「も、もう一生乗りたくなぁい」
「な、なかなか速かった……、
し、○ぬ……」
そんな感じで、1日目は終わるか
と思ってた。
「ねぇ、響ちゃん」
「へぇ!? 」
急に話しかけられたもんで、
変な声が出てしまった。
「あのさ、今日、この後パーティー
的なのやるって聞いた? 」
「え? あ、はい」
さっき、黒瀬からこの後
パーティーをやると聞いたのだ。
「ならいいや。あのさ……」
そう睦月センパイは言うと、
急に顔を近づけてきて、こう言った。
「あとでさ、パーティー終わった
後、2人でどっか行こ。」
自分でも、顔が火照っていくのが
わかった。
「へ? あっ……。その……」
「ん? やだ? 」
「いや、そういうわけじゃ……」
「なら行こ?」
睦月センパイは、「ハイ」と
言わざるを得ないような顔で頼んで
きた。
かなり考えたものの、
ハイと言ってしまった。
「そっか!よかった」
その時の睦月センパイの顔は、
まるで小学生みたいに無邪気な
顔だった。
いよいよパーティーだ。
パーティーをやるとは聞いていた
ものの、どういうことをするのかは
聞いていなかった。
「へ? きいてなかったの? 」
そう、優は驚いた様子で
言ってきた。
「う、うん……」
「えっとね、『社交ダンス』的なの
やるらしいよ? 」
シャコウダンスゥ?
漫画でしか見たことがないもんで、
もちろんやったことはないわけで、
全くルールとかがわからない。
当然焦った。
「え、え。うっそ!私、
社交ダンスとか、見たことも
やったこともないよ!? 」
「なんか適当でいいって」
優は、実にお気楽そうな顔で
言った。
ここから先が、とても心配で
仕方がない。