バスケ部は楽しいが……
「ふぅ、つっかれたぁ。もうはぁやく寝よう」
「ねぇ、ねーちゃん、今日の夕飯なに〜? 」
「もう!少しは隼人も家事手伝いなさい!」
「しょーがねーじゃん。ねぇちゃんはすごすぎんだよ!」
「ったく、褒めてんだかなんなんだか」
こいつは私の弟のくせにダメダな野郎の、隼人だ。
なんで私が家事をやっているかというと、お母さんはもう……。まあそういうことだ。
「はいはい。ちょっと待ちなさい」
「はぁーい!」
「おぉ、UMASOU!肉じゃが、小松菜のおひたし!ごぼうのサラダまである!
さっいこ〜!」
「ありがと〜。絶対美味いぜ!」
あーあ、こういう生活に不自由はしないけど、もうちょっと、らくしたいなんて思う。
せめてお父さんでもいればなぁ。
「優、おっはよ〜!」
「おっはよ〜!今日チャリじゃないんだ〜」
「うん。なんか今日はバスって気分で……」
「あっそ〜。ま、響の家から学校ってかなり距離あるもんねぇ」
「うん。毎日チャリ通って厳しい」
「ふうー、今日も響選手、頑張りまぁす!」
「おう。頑張れw」
「ようし。まずは靴を履きまぁ……す……。何コレ」
「え? どうし……って、え? 」
2人の靴箱は、大量のゴミと、『しね』『学校くんな』などの落書き
で溢れかえっていた。
「は? 意味わかんない」
「おっはよー」
「おはよ、響ちゃん……と、優ちゃん」
「おはよ」
「おはよう」
(お、おはようって言ってもらえたぁ!)
「あ、あのの、あの、なんか、靴箱が……」
「……な、、、なんだよこれ。誰がやったんだ? 」
「……」
「わ、これはひどい……」
「イジメか」
「おはよう。子猫ちゃんと最バスたち。どうしたの? 」
最バスとは、『最強バスケットチーム』の略で、
この宇島センパイたちのことである。って、今はそんな説明はよくて、この状況!
「あ、美香さん!あの、これ……」
「俺、教室戻るわ」
「あ、ちょ、睦月センパイ……!」
「あ、睦月!なぁに帰ろうとしてんのよ!この状況で!」
はあ、睦月センパイ、ひどすぎ……なぁんて思わないな。
だって、睦月センパイって、モテるけど、女ったらしで、
相手によって性格変わるって知ってるもん。
「いいよ、睦月なんてほっとこうぜ、白瀬。それより、誰がこんなことしたんだよ」
「ほんとだな。犯人見つけたら俺らの権力で、その犯人の親の会社
潰そうぜ」
そうだわ!宇島センパイも金持ちだった!そしてカッコいい!!
「おお、怖いよ、宇島wwま、僕も同じこと考えてたw」
「私も!」
「俺も同じくw」
「みなさん、ありがとうございます!」
「いやぁ、少しは白瀬も俺に惚れ……」
「てねぇよ、クズ黒瀬」
「泣ける!」
「けど、みなさん本当にありがとうございます!私も嬉しいです!」
「いや、何も優が頭下げる必要はねえぜ? 」
「あ、ハイ!」
「んじゃ、犯人探しでもする……」
キーンコーンカーンコーン……
「至急、高等部、一年A組、神奈月 弥生、一年B組、花道京子、
放送室にツラ貸せ……失礼。放送室に来てください」
この声は……、睦月センパイ? なんで放送……?
確か、神奈月 弥生と花道 京子って、
仲いいよね。そんで、みんなを引っ張ってる存在で……、性格クズなんだよね。
「いやあ、相変わらず睦月は行動が早いな」
「だね」
「昔からそうなのよねぇ」
「ですよね〜」
「なんのこと? 」
白瀬と優はまた口を揃えて言った。
「2人とも、放送室いってみ」
う、うわぁ、カッケェわ!
「は、はいぃ!」
「こ、こっそり覗いてみよ」
「うん」
「おい、てめぇら何した? 」
「な、なんのことですかぁ? 睦月センパイ❤️」
「京子、わかんなぁい」
「おい、そのキモい声ねじ伏せてやろうか? 」
睦月は腐ったものを見るような目をして、神奈月たちを睨みつけた。
「えぇ、なんでぇ? もしかして、うちらたちが可愛すぎるから、
いじめたくなっちゃったって感じですかぁ? 」
「あ? てめぇ、何言ってんだ? てめぇみてえなブス女、
いじめたところでなんの得にもなんねえぜ? 」
「きゃん!ひっどぉい!」
「ほんとだわぁ、ひどぉい」
「……。いい、てめぇらもう戻れ」
「えぇ、もうですかぁ? 」
「いいから目の前から消えろっつってんだよ!!!」
ビクッ
「は、はい……」
「おい、見てんだろ? こいよ」
「あ、は、はい……」
白瀬は重い足取りで放送室に入った。
「ちょ、優も来てよ!」
「こ、怖い!」
「あぁ、いいよ、別に無理に来なくて」
「あ、はい。ゴ、ゴメン!響!」
「おい!」
優は逃げるように走って行った。
「んじゃ、ちょっと話すね」
「え? あ、はい……」
「あのさ、気づいてっと思うけど、犯人、今のキモい女」
「そ、そうなんですか!」
「気づいてなかったのかよwで、今からあいつらの会社潰すわ」
「え? そんなことできるんですか!? 」
「あー、えと、睦月財閥って聞いたことない?
あれの社長が俺の親なんだ」
「睦月財閥って、あの、世界一の石油の……
あの……? あれ? 」
「そうそう」
「や、やば!確か他にも睦月ホテル予約サイトっての、パソコンで見たこと
あるんだけど、睦月って名前の人多いんですかね〜」
「あぁ、あれもうち」
「マジで!? 」
「うんうん」
「年間いくらぐらい稼いでるんですか!? 」
「そんなでもないんだけど、ま、少なくても100億は、いってんじゃん? 」
「!?」
「俺と結婚したら毎日がバラ色……だったりしてね〜」
「はは、結婚できた人、幸せ者ですね〜」
「じゃあさ、俺と付き合わない? 」
「え? 」
白瀬は、目をまん丸く、大きく見開いた。