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やめようかなと思いました。

作者: な吉

 ぐーっと背筋を伸ばし朝の空気を肺に入れる。猫背がそのまま治ればいいのに。そんな事を考えながら学校までの道のりを歩いていく。


 肩より少し下の長さの髪を後ろ手一つに結んでいるだけ。一度も染めた事のない髪の毛はこれでもかというほど真っ黒だ。そんな髪の毛を切ろうかなとか考え、毛先を触っているとつま先に何かが当たる感覚。

 足元に落ちているものをに気が付き足を止める。よいしょ。と膝を曲げ拾えば、それはストラップ。前方五メートルあたりで鞄を開けたり、地面を見て何かを探している男子生徒の姿が見えた。


「すみません」

「ちょっと、今忙しいから後にしてくんない?」


 男子生徒は顔を見ず、辺りをキョロキョロと見渡し探し物をしているようだった。


「探してるのはこれですか?」

「お?」


***


 にこりと笑う男子生徒と何故だか投稿するはめになってしまった。ただ、落し物を渡しただけなのに。そう心の中で思いつつも、同じ学校に行くのに拒絶するのもおかしいかな。と自分自身に言い聞かせ小さく溜息を吐く。


「いやー、昨日トモと一緒に話してた子じゃんか。もっと早く言ってくれればよかったのにさ」


 学ランの前を開け、白いワイシャツは鎖骨辺りまでボタンを開け、胸元に光るのはシルバーのネックレス。黒い髪だが、毛先だけ赤く染めている隣の男は一体誰だろう。

そしてこの男が言っていた"トモ"とは誰の事だろうかと眉を潜めて、質問をしてみた。


「誰ですか、トモって……」

「んあ? 昨日放課後話してたじゃん、青い髪の男だよ。笹崎智也って言うんだぜー。言いにくいよな、笹崎って」


 あっははと笑う男を見上げて、瞬きを繰り返した。


「さっ……笹崎……」


 さが三つ並ぶと言い難い事この上ない。もういちど、さささき。と呟いた所で、隣の男が「ねぇ」と声をかけてきた。


「キミの名前はなんていうの?」


 探るように視線を合わせる男。カラーコンタクトをしているのか、瞳が赤く揺らめいていた。


「春山薫です。あなた誰ですか」


 そう言えば、名前を知らない男子生徒と一緒に登校なんて一体どういう状況なんだろうか。と首を捻って考えてみた。


「あー、俺ね。片倉大河っつーの。因みに二年五組。暇だったら遊びに来ていいよ」

「行きません」


 片倉くん、というのも何か違くて、うーん。と考えたら「片倉さん」と呼んだほうがしっくりきたので、うん。と頷いて隣を見上げ、片倉さんを呼んでみた。


「片倉さん」

「うっわ、すげぇ線引かれた感じ!」


 目を丸くして見下ろしてくる片倉さんに「そうですかね」と眉間に皺を入れて、顎に手を当て考えてみる。


「そんな深く考えないでさー。大河とかでいいよ」


 眉をさげ、くしゃりと笑う表情がすごく子供っぽく見えた。


「そうですねぇ……じゃあ、大河さん?」

「う、うん……」


 まあ、そんなもんか。と呟いた大河さんから視線を逸らせば、いつの間にか校門が見えていた。



 ギギギ、と立て付け悪く悲鳴を上げる教室の扉。教室の後ろから入り、自分の席に鞄を置いて椅子に座る。

前方の時計を見れば、HRまでまだ時間があるし、眠いなぁと思いながら隠しもしない大きな欠伸をひとつ。


「でけぇ、欠伸」

「うぐ」


 目の前に現れたのは、青く髪を染めている男子生徒。そう、先ほど名前を覚えたあの笹崎智也だ。


「さ、さ、ささきさん?」

「……さが多い」


 どもる私にツッコミを入れる笹崎さんは私の横を通り、右斜め後ろの席に着席した。

じっと見る私の視線に気が付いたのか、笹崎さんは視線を上げて「なにかあった?」と聞いてきた。


「……善処します」

「はい?」


 さ、ささきさん……そう繰り返し呟く私に、瞬きを繰り返す笹崎さんの顔が可笑しかった。

 言い難い。さん付けやめようかなと思いました。


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