~Epilogue~
事件から数日。結局戻りし楽園の目的はわからぬまま俺たちは日常にかえった。
ミーシャは昨日退院した。その後ミーシャの退院祝いとファイラの昇格祝いを合わせいつも行くオヤジの店で飲み食いした。
「それにしても昨日はライさんかなり酔ってましたよね」
「アイさんもかなり酒を飲んでいたからな。フローラがいなかったら滅茶苦茶になってただろうな」
「そうですね」
昨日の回では珍しくアイさんもやってきて久々に第四部隊全員が業務以外で顔を見合わせたのは久しぶりだった。
「それにしても、兄さんも来てもらえるなんて」
「ま、シャルと俺がはめたようなもんだったがな」
シャルの提案でセリヌさんを祝いということを隠して三人で飲みたいと誘ったのだ。その誘いに乗って今回の事が分かったときのセリヌさんの何とも言えない表情が思い出される。
セリヌさんとファイラは完全に和解。スゥイート家の因縁というものは存在するがそれでも存在する程度。きにしなくてもいい。
「あっ」
「おっ」
廊下を歩いていると偶然ミーシャと出会う。育成のための部隊交流は終わったためミーシャはすでに自分の部隊にかえっていた。
「怪我の跡とか、大丈夫か?」
俺は一番気になっていた部分が気になる。男ならともかく女性であるミーシャは気にするかもしれない。
「意外と傷跡はそんなに残ってないわ」
「そうか、よかったな」
「そうね……」
なにか迷ったように顔を伏せるミーシャ。だがすぐに顔を上げてファイラに向ける。
「ファイラ・スゥイート!」
「は、はい」
「不覚にも貴方に助けられたことについては礼を言いうわ!だけど、貴方には絶対負けないから」
「うん」
「そ、それと……貴方の事は少しだけ……認めてあげる。あり……がと」
最後は消え入りそうな声で言って走り去るミーシャ。
「あっ……なんだったん、でしょうね?」
ファイラが消えていったミーシャの方を茫然と見ながら呟く。それに少し苦笑いを浮かべる。
「どうしたんですか?」
「いや、なんでもない。急ごう」
俺はごまかして部隊のある部屋にはいる。
セリヌさんとの関係は変わったがミーシャとの関係は変わらないようだ。そこは、ミーシャが素直になるのを待つしかない。
「おー、帰ってきたか」
ライが俺達に声をかける。俺たちはファイラの能力の真の分を見出すべくちょっとした検査に顔をだしていたのだ。俺は付き添いだが。
「再現はできたのか?」
「一応は。だけど、あの時みたいにコントロールはまだできなくて」
「まっ、焦らず頑張れ」
「はい」
ライの励ましの言葉に嬉しげに頷く。
階級も少尉となり、彼なりに順風満帆なんだろう。
「ユウリくん」
「なんだ?」
小声で俺に話しかけてくるシャル。
「実はさっきミーシャちゃんが来てたんだけど、あった?」
「えっ、そうだったのか?さっき会ったぞ」
「そうなんだ。で、どうだった?」
「どうだったって……相変わらずだな」
「アハハ、だよね」
シャルも苦く笑って業務に戻った。俺も仕事に戻る。
また、戻りし楽園が襲ってくるかもしれない。しかし、それまでは平和なときを過ごせるだろう……そう未来の予定を描き実行へと移そうとする―――あわてたアイさんが部屋に入ってくるまで。
「みんな、キャラクスト王国が宣戦布告してきた―――戦争だ」
アイさんの言葉に頭が白く塗り替わっていった。