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第7話 予選 1

 はい、というわけで予選初日!


 昨日はほぼ丸一日修行に費やして終えたが、スキルのレベルは上がらなかった。まあそんな簡単に上がるわけもないとは思ってなかったから、それはいいとしよう。重要なのは、休憩は挟んだもののほぼ一日動いていてもまったく支障がなかったことだ。

 昨日までと違って、一日という限られた時間だったことで睡眠も食事も必要ないということの意味が、はっきりとわかった。いやあ、二十四時間自由に使えることの素晴らしさよ!

 あ、もちろんずっと訓練だけっていうのはきついから、風呂に入ったりイメちゃんと会話したりして適度に休憩は取ったけどな。


 訓練の他にも、どんな道具を持ち込むかを考えたぞ。結果、アイテムボックスは全部百円ライターで埋まることになった。


 ……うっせーな、他に考えつかなかったんだよ! RPGみたいに、ライフの回復アイテムでもあればよかったけどそれはなかったし、武器はそもそも使う予定がないし、食べ物なんて持ち込む意味もないし!

 これでも必死に考えたんだ、考えたけどライター以外に浮かばなかったんだからしゃーなしだろ!? この話はこれで終わりだ、おしまい! 何かあったらその時考えるからな!


 ……っつーわけで、俺は今湊さんが来るのを第九ポータルで待っている。 


 第九ポータルの中は、思っていたよりだいぶ狭かった。あるのは、ワープ用の装置と思われる大きめの機械。左右に台のようなものがあるのは、たぶん、一人ずつそこに乗って使うのだろう。

 人は俺以外誰もいない。イメちゃんも既に隠れているので、正真正銘俺一人だ。湊さんが来るのを待つだけ。壁に掛けられたディスプレイにも、「しばし待たれよ」と妙に堅苦しい指示が出ているので、それに従っているというわけだ。

 画面には、それ以外にも時間が表示されている。開始までのタイムリミットだろう。あれがゼロになったら不戦勝となるんだろうが……そんなことはそうそうないだろう。


 と思っていると、扉が開いて湊さんが入ってきた。ま、そりゃそうだ。普通は来るだろうよ。わざと負けたいなら話は別だが、昨日の控室の雰囲気を思い起こす限り、そんな人がいるとは思えない。


「待たせたかしら?」

「いや、大丈夫」


 社交辞令程度に言葉を交わして、彼女は俺とやや距離を置いた場所に立った。その瞬間、ディスプレイの表示が変わる。

 映し出されたのは、昨日開会式があった場所。観客席は、満員御礼って感じだな。……完全に俺らは見世物か? ちょっと癪だな。


 なんて考えていると、画面からあの妙にハイテンションな司会の声が響いてきた。


『さあ、おー待ーたーせーいたしました! いよいよ第十二リーグの予選が始まります!』


 続いて割れんばかりの大歓声が聞こえてくる。なんだこれ。


 あんまり面白くないのは湊さんも同じらしい。きれいな顔をしかめて立っている。


『赤コーナー! 明良亮選手!』


 歓声。


『青コーナー! 湊涼選手!』


 もっと歓声。

 く、悔しくなんてないんだからな!


『さあぁァァ両者とも! 転移装置に上がってください!』


 あ、今回はすぐに話を進めるのな。うん、開会式みたいなのは勘弁だ。

 言われるまま、俺たちはそれぞれ左右に分かれて台の上に立つ。


『ルーレット開始ィ!』


 と同時に、司会が手を掲げながら宣言。

 すると、ディスプレイの画面が半分だけ切り替わった。そこでは、いろんな写真がすごい速度で入れ替わり続けている。まさにルーレットだな。


『さあー、今回のバトルエリアは……!?』


 これで止まった時に出てきた写真の場所が、俺たちの戦う場所になるってことだろうな。

 写真の速度がだんだん遅くなっていく。

 そして……。


『シティエリアッ! だあぁぁーっ!!』


 画面に、居並ぶビル群が表示された。どうやらシティエリアとかいうエリアらしい。見た目的にも名前的にも、間違いなく市街地だろう。


『さあ、転移が始まるぞ! 両者、準備はいいかあー!?』


 いいかって聞かれてもなあ……「やっぱ待って」とか言ったところでどうにかなるもんじゃないだろう。

 それは湊さんもわかっているのか、腕を組んだまま無言で佇んでいる。絵になる子だな……モデルみたいだ。


『それでは、転移装置稼働!』


 視界の言葉と同時に、転移装置とやらから光があふれてきた。それは俺たちを包み込んで、一気に視界が真っ白になる。

 あまりのまぶしさに、俺は思わず目を閉じた。



▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽



 案外、光を感じていたのは短かった。すぐにそんな感じがなくなったのだ。

 恐る恐る目を開けてみると……。


「おお……」


 思わず声を漏らした。そこは既に違う場所だった。ワープすげえ。


 俺は交差点のど真ん中に立っていた。信号が動いているが、周りに車がいるような感じはしない。人の気配もゼロだ。超静か。周りが都市な分、それがむしろ怖い。

 湊さんの姿も見えない。このエリアの違う場所に飛ばされたんだろう。せっかく広い場所なのに、同じ場所に送り込んでも仕方ないだろうしな。

 とはいえ周りを見渡せば、高いビルがたくさん並んでいる。メニューのマップ機能がなかったら、そもそも九十分以内に遭遇できるかどうかも怪しい。


 しかし……。


「……まったく見覚えがないな。都内だったらわりとあちこち行ってるからわかるんだが」


 もしかしたら、トーキョーエリアとは違ってどこかをモデルにしているとかではないのかもしれない。

 俺が一人でそう結論付けると、空からクッソでかい声が降ってきた。


『さあ、両者が位置につきました!』

「うっせえ!?」


 思わず耳ふさいだわ! 音量絞ってくれ!


『それではレディー……!』


 シカトかよ!


『ゴォッ!』

「ぬおぉぉっ!?」


 司会のうるさい声が響いたと思ったら、突然目の前にトラックが現れた!


「ぎゃあーっ!」


 あまりにも突然すぎてどうすることもできず、俺はその直撃を食らって大空に舞い上がった。


『おーっと、明良選手開幕からトラックに轢かれてしまったぁー!!』

「うーるーせー! 実況しなくていいよ!」


 空をくるくる回転しながらもそうやって文句を言えるのは、この身体の特権みたいなもんだろうな。死んでてよかった。

 ……あ、バイタルゲージめっちゃ減ってるわ。トラックの一撃半端なく重いっすわ。


「ぐふうっ!」


 そして空中でどうにかできるわけもないので、俺はそのままビルの壁に激突する。

 ……いくらなんでもこの出だしはあんまりだろ……これが現世だったら普通に即死だぞ。


『明良選手立ち上がる! おーっと、既にゲージが半分だ!』


 立ち上がりながら頭上のゲージを確認してみれば、実況の言う通りだった。トラックに轢かれたダメージ、プラスビルに激突したダメージってところか。

 ……マジか。九十分もあるバトルなのに、開始一分も経たずに半分とか冗談じゃねーぞ。


 っていうか、さっきまでビルしかないゴーストタウンだったのに、バトルが始まると同時に車やら人やらが急に現れるってひどくね? そういうのは最初から配置しとけよ、紛らわしい。

 行き交う車や人を適当に目で追うが、ここが死後の世界とは思えないレベルの再現度だ。こういうところは完璧主義なんだろうな。


 しかしまあ、つまるところこれがこのエリアのフィールド効果ってやつなんだろう。そのエリアごとに固有の効果がそれぞれあるに違いない。この辺りはス○ブラのステージみたいだな。よく勉強してるよ、ホント。


「……ちょ、おいおい!? まっ、ストップストップ!」


 あれこれ考えていると、道端を歩いていた人たちが突然襲い掛かってきた。


 おいおいおい、勘弁してくれ! 俺はあんたらと戦うつもりはないんだぞ!?


 仕方ないので逃げるが、そいつらは構わず追いかけてくる。しかも、車も全力で俺を追いかけてくる。歩道とか車道とかお構いなし。派手な音を出しながら、車がガードレールを突き破っていった。プ○ウスってあんなパワー出るんだな。


 なんだこれ、どうなってるんだ!? なんか俺、全力で敵視されてるんだけど!?

 こ、こういう時はイメちゃんだ! 教えてイメちゃん!


 ……あ、ダメだ。今はメッセージじゃないと彼女と会話できなかったわ。この状況で悠長にメニューを開いているわけにはいかねーわ。


 くっそー、どうしろってんだ! ま、まずは逃げるしかないか!


「ええいどけどけどええぇーい!」


 通行人が俺の前に立ちはだかる。その見た目は明らかに訓練用のマネキンとは違って、ちゃんとした人間そのものだ。人相が悪い(具体的には角刈りにパンチパーマ、サングラス)のがちょっと気になるところだが、逆に殴るにはそっちのほうがいいかもしれない。


「ふんっ!」

「あがあっ!」


 遠慮なく顔面に正拳突きをぶちかますと、そいつは派手にぶっ飛んでビルの壁にめり込んだ。


 ……なんかめっちゃダメージ受けてるっぽいんだけど、いいのか? マネキンと違って普通のリアクションが返ってきたんだけど、この人たちってただのフィールド効果なんじゃないの?


 ていうか、俺そんなに自分を強化した覚えないんだけど……。パンチ一発であんなに吹っ飛ぶなんて思わなかった。無双ゲーか何かか。

 それともあれか、見た目よりも案外大したことないってことか?


 ……うーん、考えてても仕方ねーや。ちょっと手を休めるだけで十人くらいが一気に俺めがけて殺到してくるんだからもう。

 とりあえず、こいつらを相手にするのは無理だ。いくらスキル補正で普通より強くなってるって言っても、所詮俺一人じゃ多勢に無勢ってやつだ。


 俺は通行人の間を潜り抜けながら、ここを全力で離れることにした。とにかく人のいないところを目指して、逃げ回る!


 そこに、実況の声が降ってきた。


『明良選手、逃げることしかできなーい!!』


 うるせーよ!


当作品を読んでいただきありがとうございます。

感想、誤字脱字報告、意見など、何でも大歓迎です!


やはり対戦相手と遭遇するところまでは持って行けませんでした。

じ、次回。次回こそはバトル入りますので!

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