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来世になるけどまた会いましょう。  作者: ひさなぽぴー/天野緋真
終章

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61/62

第61話 それぞれの目指すもの

「せいやあぁーっ!!」

「のあーーっ!?」


 対戦相手の赤ん坊様が、俺の渾身のパンチを受けてとんでもない勢いで吹き飛んでいく。そのまま、建物という建物を突き抜けて突き抜けて……それでもなお、止まる気配が一切ない。

 そうこうしているうちに、頭上に「YOU WIN」と表示され、俺の視界が白く染まっていく。


 そして気づけば、俺はいつものポータル。いつもと違うことと言えば、達成感の規模かな。

 俺の胸に去来する、やりきったという感覚。それを抑えきれず、俺は思わず声を上げた。


「っしゃあ!」


 逆に、反対側のポータルでは悔しそうな声が。

 無理もない、無理もないが……引き分けのないルールである以上、これは仕方ない。これはこれと割り切ってもらわないとな。


『勝者! 明良亮! 選手ー!! 見事、見事な勝利でした! まさかの連続一発KO、とんでもない快進撃でしたーっ!! 優勝、決定です! おめでとうございます!!』


 ディスプレイから、司会の声が響いてくる。


 そう。俺は、……いや、俺たちは、見事トーナメントの決勝戦に勝利したのだ。


 まあそうは言っても、時間を止めたり相手に疲労を強制したり、そんな技が使えるようになってしまった俺たちだ。おまけに、その能力は涼とのバトルを経たことでさらに上がっている。

 バトル一回分の経験が他とは違う上に、その経験の質があまりにもすさまじいものだったせいで、準決勝も決勝もあっさりと終わってしまった。


 司会も言っていた通り、どちらも一発でKOだったから、壊之天狼フェンリルの破壊力は本当にとんでもない。逆に言うと、アレを数発食らっても動けていた俺たちのライフってどんだけだよ、って話でもあるが……。


『それではこれより三十分後、表彰式を行います! 優勝した明良選手含め、上位入賞を果たした四人の選手は、三十分以内にどこでもいいのでポータルに上がって待機してください! 繰り返します……』


 ああ、やっぱ表彰式はあるんだな。ま、そりゃそうか。

 でも三十分の余裕があるってことは……せっかくだ、一回みんなと合流しておこう。


 そう思ったら、勝手に足が動いていた。俺は勢いよく部屋を飛び出すと、みんながいる第一ポータルに向かって走り出す。


「お、おいっ、ちょっと待て!」

「んおっ?」


 そんな俺を、呼び止める声が一つ。

 慌てて足を止めて後ろを振り返れば、そこにはザ・阿修羅像なサポーターに支えられた赤ん坊が俺をにらんでいた。


 決勝戦の対戦相手だった人だ。真琴と並ぶもう一人のシードで、今大会の最年少だと言う。


「なんだよあのチートじみた技!? わけわかんなかったぞ!?」

「……それはそーかもなあ」


 無理もないだろうけどな。涼と空さんの能力は発展性が強い上に、持ち主である二人の発想がすごいおかげで、出来上がった技がどれもめちゃくちゃ強いからな。

 でも、全部レベルの範囲内に収まっていて、反則というわけではないことは、イメちゃんはおろかイザナミ様からも言われていることなので、後ろめたいことなんてまったくない。


「何をどうしたらあんなことが……!」


 口泡を飛ばしながら、赤ん坊が言う。

 俺は肩をすくめながらも、彼に答えた。


「訓練、訓練、ただ訓練、かな。もちろん、それずれのスキルにも相当のポイントをつぎ込んだけど。あとは……まあ強いて言えば、うちの参謀が英雄レベルの魂の持ち主だったから、かな?」

「な……」


 赤ん坊様が絶句した。うん……これで納得してはくれないだろう。したらそれは、あまりにも素直すぎるってもんだ。

 けど、一応義理は果たしておかないとな。聞かれたから、答えた。その事実は必要ってことだ。


「そんじゃ、俺急ぐから!」

「あ、ちょ……!」


 俺はさっさとくるっと向きを変えて、改めてメンバーの待つポータルへ急いだ。


 あ、ちなみに彼が赤ん坊なのにも拘らずどうしてしゃべれるのかというと、彼が実は転生者だからだ。

 前回のリバーストーナメントで入賞経験があったらしく、そのまま前世の記憶を引き継いで転生……したのにもかかわらず流産だったらしい。

 さすがに不幸すぎる話だが、こうやって今回のトーナメントで銃優勝まで持ってきたんだから、別にそこまで悲観することもないだろう。


 それはさておき、目当てのポータルまで来てみると、既に全員外に出ていた。そして俺の姿を見ると同時に、全員が駆け寄ってきた。


「お館様!」

「やーリョー君お疲れー! まあ楽勝だったねぇー」

「はは、まああんだけステ上げまくってればそりゃあなって感じだ」


 織江ちゃんや空さんにひらひらと手を振って、俺は笑う。対する彼らもまた、憂いのまったく感じない笑みを見せていた。

 そんな彼らの中で、涼だけがあくまで涼しい表情をしていた。


「当然の結果だからね」

「相変わらず要求ハードル高いっつーの」


 俺の心を読んだようなセリフで応じた涼に、俺は苦笑するしかない。


「おにーさーん!」


 そこに、後ろからこれまた聞き覚えのある声が飛んできた。

 振り返れば、俺は勢いよく現れた真琴に飛びつかれるところだった。


「おぅわ……っ、ま、真琴お前なあ……」

「えへへっ、お疲れさま! 優勝おめでとう!」

「おう、……サンキューな」


 腕の中の真琴の頭を撫で、俺は笑う。真琴も、それに対して満面の笑みで応えてくれた。


 真琴は、元々俺たちのメンバーじゃない。目的の一致があって涼とのバトルでは協力したが、あくまでこのトーナメントにおいては味方というわけではないのだ。

 なので、彼は俺の決勝戦を観客席で観戦していた。俺が勝ったのを見て、すぐにこっちに向かって走ってきたんだろう。


「これで、我々全員が無事に転生できますな!」

「だねー! いやー、予選でリョー君に負けたときはどうしようかと思ったもんだけど……ここまで来れるとはねえ……」

「そうだね、ボクも同感っ。転生につけれる条件は一つだけど……むしろ四つもいらないよね」

「むしろ、四つも設定できるのは元からパーティメンバー用なんでしょうよ」

「かもな。確かに百文字って多くはないけど、そこまで少なくもねーもんな」


 そんなことをしばらく五人で話し合う俺たち。少しずつ、ゆっくりとした時間が流れていく。


 なんだかんだで、この五人で過ごす時間ももうあまり多くはないんだな、と思うとちょっとさみしいものもあるなあ。

 ……なんて、ちょっと俺にしちゃセンチメンタルな考えだったか? でも、もう二度と会えない可能性があるのは事実だし、これくらい大目に見てくれよな。


 とと……そろそろ時間か? こういう時はあっという間に過ぎるよな。


「んじゃ、俺そろそろ表彰式ってやつに行ってくるわ」

「うぃ、りょーかいだよー」

「こちらのことは、我々にお任せくださいませ」

「お兄さん、式でへましないようにねー?」

「んな、おい真琴ぉ、そりゃどーいうこったよっ!」

「あはははっ、冗談、冗談だよぉ」


 もはや恒例のような感じもする、真琴とのやり取りだ。

 そこに、スッと涼が割って入る。


「遅れるわよ」

「はい」


 こえええぇぇーっ、目が笑ってなかった……!


「こほん、……えーっと、その、涼……あれだ。式がどんくらいかかるかわかんねーけど、その間に転生の条件百文字考えといてくれねーか? 俺がやるとうまくまとまらなさそうで……」

「まったくもう……わかったわよ、考えとく。その代わり、文句は言いっこなしよ?」

「ああ、そこは全面的に信じてるから大丈夫。それに、最初に言ったろ?

 俺は元々、転生したかったわけじゃねーからな。よっぽどのことじゃない限り気にしやしねーよ」

「……はいはい、了解です」


 呆れるように笑う涼であった。


 さて、そろそろマジで動かないとね。


「んじゃ、マジで行くわ。みんなまた後でな」


 そうして俺は、四人と一旦別れてポータルに入るのだった。



▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽



 表彰式は特に問題もなく、スムーズに進行して終わった。

 内容はまあ、オリンピックとか世界大会とかでよくある感じだ。ただ参加者は全員日本人だから国歌は流れない。そういう意味では、全国大会みたいな雰囲気だったかもしれない。


 優勝ってことで金メダルを授与されたが、聞くところによるとこのメダル、持っているだけで魂の質を上げる品らしい。一回の生まれ変わりに当たるほどじゃないけど、あらゆるものに対する能力が上がった状態で転生できるっぽい。

 転生すればその段階で全能力が上がるらしいが、メダルによる補正を受けられるのは実際に勝ち抜いた人間だけ。ってことは、これは五人の中で俺だけの特権ってことになるんだろう。


 細かい説明はなかったけど、話の内容を考えるとたぶんそう言うことになると思う。この辺は、魂に関する話を知ってしまっている俺だからかもな。

 ま、ぶっちゃけ俺、転生するつもりがあるわけじゃないから、そこまでほしくはないんだけどな。そんなことを言ったら今まで倒してきた相手に失礼だろうから、言わないけど。


 とまあ、そんな感じの表彰式を終えて、俺は式後指定された、関係者以外立ち入り禁止のポータルへ来ていた。

 そう、オリジンエリアへ向かったときに使ったあのやたらでかいポータルだ。


 そこで俺は、イメちゃんの応対を受けている。が、その姿はいつもの姿ではなく、オリジンエリアやヘルヘイムで見せていた「元の姿」ってやつだ。


「なんで元の姿のほうなんだ?」

「えぇ? だって、今の状態で『理想の異性』を映したらボク、涼様の姿になりますよ? それでいいんですか?」

「聞かなかったことにしてくれ」


 というやりとりがあったが、それについては一切考えないことにしている。


「というわけで、亮様は四つの転生条件を自分独り占めすることも、自分以外の参加者に分け与えることもできます。どうなさいますかー?」

「決まってる、他の人に分けるよ」

「了解でーす。では、どなたに分けますか? 今まであったことのある参加者の中から選んでください」

「涼、織江ちゃん、空さん、それに真琴。以上四人だ」

「繰り返します。湊涼選手、織江伊月選手、空永治選手、龍治真琴選手。以上四人ですね?」

「おう」

「かしこまりました。では、以上の四人を招へいします」


 そう言うと同時に、イメちゃんはポータルに向かって何かを操作した。

 しばらくそれが続いていたが……やがて何か決定を行ったのだろう、パソコンで言うところのエンターキーを推したときみたいな小気味いい音を響かせた。


 その瞬間。例の白い光と共に、涼たち四人がポータルの上に現れる。


「おお……呼び寄せた、のか……?」

「はい、そういうことですね。このポータルは、普通のポータルと異なりよそから呼び寄せることが可能なのです」


 解説しながら、イメちゃんはポータルから下りるように四人を誘導していく。


「いや、心底驚きましてござる」

「ねー、四人で話してたらいきなりこれだもんね」

「心臓に悪いよ……」


 そう言ってるところを見るに、本当に突然だったんだろうな。

 一方で、涼は相変わらず表情を変えていない。


「オーディンから話は聞いてるからね」

「俺の心を読まんでくれ」


 ……本当に相変わらずな彼女だった。


「はい、それじゃあ説明に戻りますですよー」


 またしてもとりとめのない話に移りかけた俺たちを、イメちゃんが手を叩きながら遮った。

 そして、全員の注目を集めたところで懐かしの先生ポーズで説明を再開する。


「まずは……イザナミ様からメッセージを預かっておりますので読みますねー」


 メッセージ?


「こほん……。

『今回は、妾の失敗に付き合ってくれて、本当にありがとう。それに何より、妾を本気で叱ってくれてありがとう。身に染みました。おかげで、妾ももう少しがんばれそうです。

 ……転生は、色々有利なことが多いですが、不利なところもあります。ですが、輝ける魂を持つあなたたちなら、きっと大丈夫でしょう。それに、妾の権限で、色々協力してくれたあなたたちの転生先は優遇しようと思っています。

 ですから、安心してください……』」


 イザナミ様……神様にもいろいろあるって教えてくれた人だけど……最後に一言挨拶できないのはやっぱりちょっとさみしいもんがあるな。

 けど、こうやってメッセージをくれただけでも十分……。


「『追伸。亮、もし神様になりたいと思ったら、いつでも呼んでください。すぐに迎えに行きます』以上です」

「ぶふぁっ!? がはっ、げほっ!?」


 なんてことを言ってくれるんですかイザナミ様!?

 マジでびびった、むせたじゃねーかよ!


「亮様、これわりとガチな宣言だと思いますので気を付けてくださいね。イザナミ様、あらゆる次元を飛び越えて日本にいる限りはすぐそこにいるので……」

「えっ、ちょ、それなんか怖いよ!?」

「ヤンデレか……」

「空さん、何か言いましたっ?」

「んーん、なんにもー?」


 うう……何がどうしてこうなったんだ……。

 ……涼に肩を叩かれた。励ましてくれ……るわけないよな! 何そのなんかさげすんだような目!?


「それでは話を戻しますねー」


 イメちゃんにまで俺はスルーされるのか……。いくらなんでも話の流れぶった切りすぎだろっ?


「こちらを……ご覧ください」


 ガチスルーでした。


 …………。


 ……うん、よし。俺、くじけないぞ!


 と、いうわけで、イメちゃんの言葉と同時に、彼女の前に四つのメニュー画面に似た画面が現れた。


「こちらは転生条件記入画面です。以前にもお話した通り、転生の条件に指定できる文字数は百文字です。この範囲内で、自由に文言を設定してください。

 四つを五人でどう分けるか……は、もう決まってるでしょうからその説明は省きます」


 彼女の説明と共に、四つの画面がそれぞれ俺、織江ちゃん、空さん、真琴の元へ飛んできた。


 なるほど、パソコンみたいな画面だな。ご丁寧にキーボードまである上、文字数の状態まで表示されて、……ってこれまるっきりツ○ッターじゃねーか!


「入力の際の注意点は、画面にも表示されている通りです。その点は守っていただかないと、ご期待に添えない可能性もありますのでご注意くださいね」

「ふむ……何々?」


 言われた場所には、確かに注意書きが列挙されている。思ったよりたくさんあるな……。

 ゆっくり文字を目で追う俺の隣に、涼が並んで同じく黙読を始める。


1.条件文の書き出しは、「○○(転生する人間のフルネーム)は~」で始めること。複数人を指定する場合、「○○および××は~」と記すこと。

2.条件文で使える文字は日本語のみである。この際、必ずしも漢字を使う必要はないが、すべての文字は一文字として認識される。

3.句読点やカッコ等の記号も文字に含む。ただし、頭出しの一段下げは必要ない。

4.賽の河原での記憶を引き継ぐこと、および蘇生は不可とする。ただし、同じ親の元に生まれなおすことは可。

5.転生先の親を指定する場合、その親の名前も必ずフルネームで明記すること。ただし、転生先を過去の人物に指定する際に、その人物に戒名が与えられている場合、戒名を指定する必要がある。


 この五つ。うーむ、思ったよりいろいろあるな。


「どうだ、この注意点見て大丈夫そうか?」

「もちろん。この注意点もオーディンから聞いてたから、最初からそのつもりで条件は考えてあるわ」

「わお、さっすが涼」


 そんなことを話す俺たちだが、一方他の三人は思っていたものと勝手が違うのか、腕を組んだり頭をかいたりして考えているようだ。


「時間はいくらでもありますので、たくさん考えてくださいね。決定したら、申告をお願いします。その時点で、転生を開始します。それでは、どうぞお考えください!」


 そう締めくくって、イメちゃんはポータルの前でやすめの姿勢を取るのだった。


「……だ、そうだけど。どうする? もう入力やっちまうか?……って、してるのな」

「内容にあんたが異議あるかもしれないでしょ」

「……それもそうか。確かに」

「言われてみればって顔してんじゃないわよ……はい、入れたわ」


 言いながら、涼が画面を見るように促してくる。

 言われるままにそれを覗き込む……そこに書かれていた条件文は、こうだった。


『明良亮、湊涼の両名は、転生ではなく生まれ変わりを行う。その上で、同じ時代に同年齢の存在として、必ず早い段階で巡り合い、共に生きる運命を持つこと。』


 文字数は62文字……か。


「どう? 無理のない範囲に収まってると思うんだけど」

「うん、問題ないぜ。っつーか、これ以上の文章は俺じゃぜってー思いつかない」

「あんたはたまに、そういうところで妙に自分を卑下するわよね」

「事実だからなあ」

「まああんたがそう言うなら、私はいいんだけど……で、どうするの? これで行く?」

「ん……そうだな。これで行こう。んで、どうする、もう行くか?」

「私は構わないわ。でも……あんたはそうでもないでしょ。他の三人に言いたいこととかあるでしょう?」


 どこまでもお見通しだな、涼には。

 俺はわり、とだけ言うと彼女の元を離れた。


 最初に、空さんのところへ向かう。


「空さん」

「ん、リョー君まだいかないの? スズちゃんが待ってるよー?」

「はは……。いや、最後のあいさつはしときたいなって思って」

「律儀だなあ。でも、ありがとー。ぼくらが転生できるのも、リョー君のおかげだもんね」


 ははは、と笑う空さんの顔は、相変わらずどことなく生気が薄い。生前の生活を思わせる顔だ。


「それを言ったら、俺なんて空さんに助けられっぱなしでしたよ。考えろって言葉、身に染みたっす」

「ああ。いやあ、あれはちょっと出過ぎたこと言ったよ。ぼくだって、ただ君より長く生きてるだけだからねえ、君の歳でできたかってなるとあやしいもんねー」

「グロウロードだって、最初から最後までマジで世話になったっすよ」

「あはは、あれは自分でも傑作だったなーって思う!」


 そこで俺たちは、互いにくくくっと笑うのだった。


「……その、空さんはやっぱ漫画家に?」

「そうだね! 漫画家になるうえで、両親の理解はほしいし、できれば両親がパトロンになってくれるくらいの財力があったらいいかなって思って、その辺入れようかなって思ってるよ」

「そうかー、漫画家って大変って聞きますしね」

「そーそー、世間的にはやっぱ、アングラなトコあるからね」

「来世、がんばってくださいよ。覚えてないかもしんねっすけど、出たら絶対買います」

「あはは、よろしくお願いだよー! がんばるさっ!」


 それだけ話し終えて、俺は織江ちゃんのところへ移る。


「織江ちゃん」

「あ、お館様。……このたびは、本当にお世話になりました」

「いやいや、織江ちゃんがいてくれてよかったよ」

「さ、左様でしょうか? 結局、拙者は最初から最後までほとんどお役に立てずじまいで……」


 そう言う織江ちゃんは、心底申し訳なさそうだ。

 そんなことないぞ。


「いーや、織江ちゃんには俺、結構救われてんだぜ。涼からメタクソ言われた時とか、励ましてくれただろ。あんときは俺も参ってたからな……」

「……お館様のお力に、少しでもなれたのでしたらこの伊月、これ以上の幸せはございませぬ」

「はは……うん、そういうわけだから、ありがとうな」

「はい。拙者のほうこそ、勝ち抜いていただきありがとうございます!」


 そう言って、深々と頭を下げる彼女は、いつもの彼女に見えた。


「……なあ、織江ちゃんはどうするつもりなんだ?」

「拙者は、やはり戦国時代に行きとうございます。それで……拙者たちの知る歴史よりも早く、戦乱を終わらせたく。そのために、誰かを常に支え続けられるくらいの力がほしい……そう、思っております」


 あー……まだ本調子じゃなさそうだな。


 でも、そういう力をほしいって思うことは決して悪いことでもないだろう。

 悪いことにもいいことにも、力は必要だ。それを使うやつの問題なだけだが、その点で言えば織江ちゃんは文句なしだ。俺が保証する。


「そっか。その歴史、俺も見てみたいな」

「あはは、お館様が教科書でそのように習えるよう、最大の努力をいたします!」

「おう、その意気だ。がんばれ!」

「はいっ!」


 さて次は……。


「あ、お館様」

「うん?」


 と思ったら、織江ちゃんから呼び止められた。

 なんだろう、と振り返ると……。


「……亮さん。転生したら亮さんのこと忘れちゃうけど、でも、わたし忘れません! その、ホントに、ホントにありがとうございましたっ!」

「お……おう、どういたしまして!」


 素の織江ちゃんに、思わず一瞬気が抜けちまったい。

 が、すぐに持ち直して、俺はサムズアップを彼女に向けた。それに応じて、彼女もにっこりと笑う。


 いやー、最後の最後に自分から素を見せてくれるとは。

 でも、うん。君はそんな感じのほうがかわいくていいと思うぜ、織江ちゃんよ……。


「……真琴」

「お兄さん」


 最後は真琴だ。いろいろ考えているようだが、俺が声をかけるとすぐに顔を上げてにっこりと笑う。


「最後は一緒に戦えなくて悪かったな」

「んーん、だってそういうルールだもん。仕方ないよ」

「最後、お前のライトロードも使えたらもっと威力出せたんだけどな」

「オーバーキルすぎるよ、それはちょっとかわいそう」


 くすっと笑う真琴は、相変わらず男には見えん。

 こいつは……本当に俺を色々と惑わしてくれるよ、本当に。


「あー、その、お前はどう?」

「ん……ん、ふふ、ナイショ」

「えー、教えてくれよ。俺とお前の仲じゃねーか」

「な、ナイショったらナイショだもん。お兄さんでも教えてあーげない」

「……ちえ、わかった、わかったよ。無理にとは言わねーさ」

「……そこで無理強いしないところ、ボク好きだよ」

「……お、おう」


 いきなり好きとかいうな、お前のそういう物言いは本当に勘違いしやすいから。

 ……いかんなあ、俺、どうやらそっちの趣味があったのかもしれん。来世をまっとうに生き抜く自信がなくなってきたな……。


「ねえ、お兄さん?」

「んー?」

「ボクね、できれば生きてるうちにお兄さんに会いたかったよ。お兄さんなら、きっといろいろ楽しくできたと思うし」

「そりゃ光栄なこった。ありがとな」

「だから……、……ううん、やっぱやめとく。これは、ボクが言うことじゃないや」

「はあ? よくわかんねーやつだなあ」

「いいんだ、気にしないで」


 ふるふると首を振る真琴。本当によくわからん。

 まあ、本人がそう言うならそれでいいんだろう。俺は、頷きながら彼の頭をそっと撫でた。


「んじゃな。じっくり考えろ」

「うん、そうする」


 そうして俺は、真琴からも離れて涼の元に戻ってきた。


「お待たせ」

「もういいの?」

「ああ。行こうぜ」

「わかったわ」


 それだけかわして、俺はイメちゃんに準備ができたことを告げる。

 最後に、彼女からこれでいいかと最終確認をされ、オッケーを出し……そして、導かれるまま巨大ポータルに上がる。


 そんな俺たちに、みんなの視線が集まった。思わず笑いながら、手を振る俺。


「それでは、転生を開始します。処理が開始してから、そこで意識は少しずつ薄れていきます。眠るときと同じですので、ご安心ください」


 そう説明するイメちゃんに、俺たちは頷く。


「条件に転生ではなく生まれ変わりとあるので、それでもって明良亮、湊涼という人物の記憶は消えます。それでよろしいですね?」

「ああ、それでいい」

「むしろそれが望みよ」

「……かしこまりました。それでは……転生開始!」


 その言葉と共に、イメちゃんは入力画面にハンコのようなものを押した。

 それと同時に、その画面はすうっと消えて見えなくなり、それから巨大ポータルからいつもと同じような白い光があふれ出して何も見えなくなる。


 そんな中、俺の手を涼が握った。もう、何も見えない。そこに彼女がいるかどうかすら。

 けど、涼がそうしてくれたから、そこに間違いなく彼女がいることがはっきりわかって、なんとなく安心した。


 最後に、


「お館様、さようなら!」

「リョー君、ありがとー!」

「お兄さん、バイバイ!」


 そういう三人の声が聞こえたので、もう一度彼らに……見えないかもしれないけど空いていた片手を振った。


 ああ、さよならだ。みんな、ありがとな。


 そう思うと同時に、意識が少し遠くなる。そこに、涼の声が届いた。


「……ねえ、亮」

「ん?」

「私のわがままに付き合ってくれて、ありがとね」

「なんだよ今更。らしくねーぞ」


 それは薄れゆく意識の中でもはっきりと、すぐ近くから聞こえる。


「……最後だからね。少しくらい、いいでしょ」

「ま……そりゃ、確かにそうだ」


 そう返事すると同時に、手にだけあった感触が全身に広がる。

 どうやら、正面から抱きしめられたらしい。


「……涼?」


 返事はなかった。代わりに……口が何かでふさがれた。

 それが何かは見えないが、……しかしなんとなく予想はつくもので、かといって見えないのでそれを深く考えないようにとも思い……。


 ……また、意識が遠くなる。それでもなお、涼の感触はそこにある。


「……亮」

「……うん?」


 すぐ目の前で……耳元で、涼がささやく。その声はどこか眠そうで、彼女もまた、意識が次第に薄れているんだろうということがよくわかる……。


「そろそろ、最後ね。もう……自分を支えられそうにないわ……」

「ああ……そうだな、俺もだ……」

「だから、今のうちに……言っておくわ……」

「おう、……なんだ?」


 そこで、少しだけ間が開いた。

 深呼吸をしているような空気が、白の向こうから伝わってくる。


「来世になるけど……また、会いましょう」

「……ああ、そうだな。また会おう。また!…………」


 そして……その会話と共に、俺、明良亮という人間の意識は完全に消滅した――。


当作品を読んでいただきありがとうございます。

感想、誤字脱字報告、意見など、何でも大歓迎です!


準決勝、決勝はどうあがいても主人公たちが負けることがあり得ない状況になってしまったので、冗長と判断しカットしました。

ともあれ、ひとまずメインメンバーたちの賽の河原での戦いはこれでおしまいです。

次回、転生ではなく生まれ変わりを選択した亮と涼のその後を少しだけ触れて今作のおしまいといたします。

なお最終話は、今夜中に投稿する予定でいますのでよろしくお願いします。

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