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来世になるけどまた会いましょう。  作者: ひさなぽぴー/天野緋真
第三章 涼編

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第55話 決戦 1

 俺たちから放たれた光線はしかし、湊さんには当たらなかった。小さく飛んで空中に逃れたのだ。発射のタイミングを、うまく見計らって避けたらしい。さすがすぎる。


「うそっ!?」


 真琴が思わず悲鳴のような声を上げる。


 一方湊さんは、そのまま闘之飛翔ヘルモーズを使って空中で姿勢を整えるや否や、タイムラグなしに大量の手りゅう弾をばらまいてきた。

 例のバグ技だな!? こんな使い方するのはさすがっつーかなんっつーか……!

 降り注ぐ手りゅう弾が、次から次へと爆発する。その密集率と量は、明らかに俺たちに致命打を与えうるレベルで、そんな大量の武器を一体いつの間に手に入れたのかと、疑問が脳裏をよぎる。


 ……ともあれ、考えても仕方ない。俺は手りゅう弾を避けるために跳び、その場から離れる。他のメンバーも同様だ。


 だが、それを見計らったかのように湊さんの身体は高速で移動していた。

 とっさに思考加速を使い、その動きに気を配る。彼女が向かう先は……一直線に織江ちゃん!


「織江ちゃん、来るぞ!」

「はっ!」


 俺の声を受け、織江ちゃんは身構える。その周囲には水がいくつも玉となって浮かび、来たるべき攻撃に備えた万全の態勢になる。


 一方俺たちも、湊さんを迎撃すべく動くが……ダメだ、手りゅう弾を避けたせいで距離が遠い! おまけに、爆発の炎と煙で、狙いが定まらねえ!

 しかも想像以上に彼女のスピードが速いぞ。おかしいな、俺が使った感覚じゃ、闘之飛翔ヘルモーズはあんなにスピード出ないはずなんだが……。


 ともあれ、色んな理由でクライムバスターで狙いをつけるのが難しい。それにこのままでは、織江ちゃんに当たる可能性も否定できない。


 しゃーなしだ。俺は地面を蹴って、横から湊さんを攻撃するため走り出した。

 その俺とは正反対の方向から、真琴が剣を抜き払って迫り、空さんはレーザに速度では劣るものの、使い慣れた狙撃銃を構える。


 直後、湊さんの鋭いパンチが織江ちゃんに吸い込まれていく。だが……。


水鎧ワタツミ!」


 その声と共に、周囲の水が湊さんの身体がピタリと止まる。


 水鎧ワタツミは、俺の乱取討モードスナッチと同じタイプの技で、絶対王権ロイヤルガードによる攻撃の停止と、それに連動した攻撃を行う技だ。

 つまり……攻撃を止められた湊さんを、周囲に漂っていた水が一斉に弾丸となって襲うわけだ! 素手で攻撃をした以上、止まるのは彼女そのものになる。この技はかわせないだろう。


 俺も追撃を加えるべく、足を速める……!


氷之死病ヘル

「な……っ!?」


 しかし、俺は目を疑った。湊さんを襲った水弾が、一斉に凍りついたのである。

 固体になってしまえば、もはやアクアロードの範囲外。操ることはできない。攻撃は不発に終わって地面に落ちた。


 そしてそれよりも早く、湊さんから湧き上がったオーラが周囲の水を凍りつかせながら織江ちゃんに襲い掛かる。

 止められてるのになぜ、と思ったが……そりゃそうだ、絶対王権ロイヤルガードの効果は攻撃を止めるだけで、本来は人の動きそのものを制限するものじゃない。


 そんなことを加速した思考の中で思いつくが、それができたところでどうにもならないことはある。身体が追いつかない……!


「織江ちゃん!!」

「ひゃあああ!?」


 次の瞬間、織江ちゃんの身体が氷で覆われた。そのまま氷はみるみるうちに大きくなっていき、彼女の身体はあっという間に見えなくなる。


地之錫杖ヨルムンガンド


 手を伸ばした俺の先で、湊さんが笑う。氷の塊をなでながら、今度はそのオーラが妖しく輝き、それに触れた周囲の土が溶け始めた。

 その中に、織江ちゃんを閉じ込めた巨大な氷塊が沈み込んでいく……。


「ちょちょちょ……! いくらなんでもそりゃないよ!」


 空さんが上ずった叫びを上げながら、狙撃銃を連射する。俺と真琴も、遅れるものかとレーザーで湊さんを攻撃する……が!


狡之星者ロキ


 それすらも見切っていたのだろう、次の瞬間湊さんの姿が地面に沈んで掻き消える。

 そして……彼女の姿は、いつの間にかワルプルギスの夜の魔法陣の前へ移っていた。


「ば……」


 バカな。

 俺は、その率直な感想を口に出すことすら、できなかった。


 空さんも、真琴も、似たような様子だ。ただ、瞬時に移動した湊さんを見つめることしかできない。


「あら、何もそう驚くことないじゃない。全部オーラロードの応用よ? もっとも、ネ○能力を教えてもらわなかったらここまでできなかったのは間違いないけど」


 湊さんがくすくすと笑う。


 オーラロードの応用、だと……!?

 い、一体いつの間に、こんなレベルにまで能力を成長させたんだ……!?


「嘘だろおい……」

「ありえない……! 個々の技は確かに説明できるけど、そんなにたくさんの、そんなに複雑な技を構築なんて、ただの人間にできるわけないじゃん! メモリー不足になるのが普通だよ!?」

「メモリー不足……個人の能力の限界値、とあの奇術師は定義してたわね。そうね、そうなるでしょうね。

 でも、所詮このシステムはゲームの模倣……実のところの限界なんて存在しない。あるのはただ、スキルレベルによる限界だけよ。そしてそれは、ポイントとアイテムで解決できる」

「……り、リンクリングだ……!?」


 笑いながら、右手を掲げる湊さん。その腕に着けられた腕輪を見て、真琴が気色ばむ。

 それは、確かにリンクリングだった。俺たちが身に着けているそれと同じ。見る角度によって色を変える、不思議な腕輪。


「な、なんでそれを!? それは、イザナミ様が……!」

「作ったものよね。でも、リバーストーナメントのシステムはとっくに解明されてるの。オーディンがずっと付け狙ってたのはあんたたちも聞いてるでしょ?

 彼は何も、私がいたから今回のトーナメントを狙ったわけじゃないのよ。自分一人でも付け込めるだけの準備を終えたから、今回のトーナメントを狙ったの。私がいたのは偶然にすぎない」

「つ、つまり……オーディンはリンクリングのコピーに成功を……!?」

「完全ではないけどね。そこは単純に技術の差ってやつで、リンクできてるのはトーナメントのシステムとパッシブスキルに関する一部の項目だけ。あんたたちの能力は使えないわ。

 でも、それで十分。それだけあれば、能力の構築はできた。装備も整えることができた……」


 ……マジかよ。

 つまり、俺たちが万全だと思っていた装備を、湊さんもしていたってことか……!

 ステータスの差し引きがゼロってことは……俺たちの優位性なんて、人数だけじゃねーか!


「……!?」


 愕然としている俺たちの背後で、轟音が響いた。

 何事かと思ってつい振り返れば……そこには、粉々に砕け散った土と氷の山の中に、織江ちゃんが横たわっていた。


「織江ちゃん!?」

「お姉さん!」


 慌てて俺たちはそこに駆け寄る。余裕のつもりか、湊さんが動く気配はない。


「いーちゃん! しっかりするんだいーちゃん!……なに、これ、どゆこと!?」

「空さん、織江ちゃんは……!?」


 位置的に真っ先に駆け寄った空さんが、力なく首を振った。

 その腕の中で、織江ちゃんが「申し訳ありませぬ」とつぶやく。


「湊さん、何をした!?」

壊之天狼フェンリル


 俺の問いに、湊さんは笑いながら応じた。瞬間、彼女を包むオーラがさらに激しく輝き、その長い黒髪が金に、そして瞳が緑に近い青になる。

 見覚えのある姿だ。それは、その状態は……!


「す、スー○ーサイ○人……」

「ええ。それをオーディンが改良、発展させたものよ」


 ふわっと、湊さんが小さく空に浮かぶ。それから、オーラと髪の色が更に変化する。青みがかった白(あるいは銀?)へ……。


「あんたがゲンさんとのバトルで経験した、特異な倦怠感。あれは、魂が疲弊したことで起こる一種の筋肉痛のようなものらしいわよ。

 それを引き起こす代わりに、勇之闘気テュール以上の出力を得るのがこの技、壊之天狼フェンリル


 説明と共に、さらに湊さんの姿が変わっていく。耳が、狼のそれになった。そして、白銀の尻尾が現れる。


「そしてこの技の特徴は、攻撃対象の魂も同時に疲弊させること。彼女は今、重度の全身筋肉痛とでも言うべき状態だからしばらくは、戦力にならないわよ。

 ……あ、でも命に別状はないから安心して。それはお墨付きをもらってるわ」


 狼人間(ただし、その要素は耳と尻尾くらいのもんだが)となった湊さんが、くすっと笑いながら髪をかきあげた。

 その姿は美しく、またどこまでも絵になる。けれど、今の彼女に見とれるような余裕は、俺たちには存在しなかった。


 何も言えねえ。悪い意味で、何も。


 ……でも、でもだ。ここで立ち尽くして終わりになるほど、俺たちゃまだほとんど何もしてねーだろ。

 なあ、そうだろ、俺ッ! 考えろ、考えるんだ!


「……空さん、真琴」


 俺は、絞り出すように言う。言いながら、どうするかを何倍にも加速した思考の海で考える。


「……な、なに?」

「持久戦に持ち込む、だよねー?」


 二人の返事に、俺は湊さんから目を離すことなく頷く。


 ……へっ、結局俺は人任せか。ったくよ、この頭の悪さにはうんざりするぜ。

 でも……そうだ、んなこと考えてる場合じゃねー。サンキュー空さん、俺はあんたが言ったような答えは見えちゃいなかったが、おかげでどうすべきかが見えたぜ。


 俺は、湊さんの頭上に浮かぶライフゲージをにらんだ。それは、一発のダメージを与えていないにも関わらず、四分の三辺りまで減っている。

 そう、どれだけ強力な技であろうと、結局それがオーラロードの応用である以上、使うにはライフを消費するのだ。それを見たうえで、空さんは「持久戦」って言った……そういうことだな!


 真琴も同じ結論に辿り着いたようだ。小さく「あっ」という声が、それから剣を振る音が聞こえてきた。


「ただ……それはスズちゃんだってわかってるはず。向こうが絶対にわからないように仕掛ける必要があるよね」

「そう、だな……うん……気づいてないわけがねーよな……」

「空お兄さん、あれでしょ? 必殺技、あれ使うんでしょ?」

「ごめいとー」


 ふふっと笑いながら、空さんが俺の隣に並んだ。少し遅れて、真琴も続く。

 それを見た湊さんが、やはり余裕たっぷりに言った。


「続きをするのね? いいわよ、無駄だと思うけど」


 くっ、完全に勝った気でいやがる! 無理もないけど、でも、まだこっちにだって奥の手はあるんだからな!

 そう思ったら、俺は勝手に口を開いていた。


「そう思ってるなら、思っていればいいさ」


 お、なんかかっけーセリフが出たぞ。ほぼ空さん任せの、はったり度百二十パーセントなセリフだけど。


「そうだよ、お姉さん。だってボクたち、転生したいんだから」

「そのとーり。……スズちゃん、悪いけど君じゃ絶対に解けない謎をしかけることにする」


 空さんの言葉に、湊さんがへえ、と小さく首を傾げる。


「私じゃ解けない謎? あんたが言うってことは、主に漫画アニメ関係ってことよね。悪いけど、時空のはざまの道中で大体は……」

「いーや、絶対にスズちゃんがわからないやつだ。ぼくの……『』を賭けよう……!」


 ……? 空さん、何そのよくわかんないポージング?


「……、ふふ……面白いこと言うじゃない。そこまで言うなら、どんなものか見せてもらおうかしら」


 湊さんが、どこか嬉しそうに笑った。そして、全身を覆う白銀のオーラをさらに膨らませながら、ゆっくりとこちらに歩を進める――!


当作品を読んでいただきありがとうございます。

感想、誤字脱字報告、意見など、何でも大歓迎です!


遂にはじまりました、VS涼。やはりラスボスは圧倒的な姿をまず見せるべきでしょう、ということで反則技のオンパレードです。

黒歴史を赤裸々にするかのごとく恥ずかしい単語が並んでますが、気持ちはお察しいただけるかと思います……。

そも、彼女の能力が北欧神話由来なのは、オーディンとのかかわりをにお併せるためでもありましたが……ここまで来ると、彼女自身がフェンリルって感じですな。別に誰も取って食いやしませんけども……。


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