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来世になるけどまた会いましょう。  作者: ひさなぽぴー/天野緋真
第二章 本選編

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第44話 本選 7

「どうしてこうなった」


 周囲を飛び交う宇宙船? らしきものを尻目に俺はつぶやいた。


 それから、ため息交じりに下を向く。不可思議な金属で造られた足場は、美しい流線形をしていた。

 そしてそれの端まで目を向けると……目にも鮮やかな青い光を放出して、宇宙に向かって宇宙船であることがわかる。


 そう、俺は今大空にいる。


 なぜこんなところにいるのかというと、話は数分前にさかのぼる。


 マスラさんから一定の距離を保ったまま逃げに徹していた俺は、袋小路へと追いつめられた。そしてそこが、宇宙船のドックだったのである。

 なんとかそこから脱出しようと、その中の一つに飛び乗ったところ……考える暇もなくそいつは動きだし、あっという間に空の彼方へ来てしまったというわけだ。


 ……うん、まあなんていうか、つまるところ自業自得って奴な! 湊さんからは、即刻バカとドヤされました!


 なんつって言ってる場合じゃねーや。さすがにこのまま宇宙まで連れて行かれたらたまったもんじゃない。

 死ぬことはないだろうけど、どうなるか想像もつかないし……ゲームがゲームなら、このまま場外に持っていかれてライフが一つ減る、なんてことも十分考えられるしな。


 暗闇の中浮かび上がるさまざまな光、という夜景は圧巻ではあるんだが。そうも言ってられん。一応バトル中だし。


闘之飛翔ヘルモーズで飛べばいいかな……」


 ちらっと、縁から下をのぞいてみる。言った通り、問題なく飛べるだろうけど……さすがにこの高さは少しばかりしり込みできるな。シティエリアのビルの比じゃない。


 まあ高さはいい。飛べるんだからな。問題は、空で宇宙船やら飛行船やらエアカーやらが大渋滞を起こしているってことかな。何も考えずに飛び降りたら、それこそ車? にはねられるのは間違いないだろう。

 この宇宙船が通ってきたルートなら大丈夫だろうけど、なんか既に後ろから別のやつ来てるし……。


 なんていうか、動いてるものはめっちゃ未来的だけど、この辺の交通事情は現代とそう変わらないようにしか見えないな。


「……ん?」


 下を眺めていた俺は、ふと妙な光を感じて首をひねった。

 そしてその瞬間、光が俺の真下を一直線に貫いていく。


「え、ちょ、ま」


 そして、轟音と爆発を響かせて宇宙船が失速する。がくりと船首が下を向き、高度がみるみるうちに下がっていく……。


 ……え、なに。もしかして、撃墜された?


 と思っている間にも、光がばしばし飛んでくる。そして、既に制御を失いつつある船に回避はもはやできない。ほとんどすべての光を食らい、次々と爆破炎上していく。

 それは、まさにSFチックな光線によるものだった。


「ダメだ、さっさと脱出しないととんでもないことになる!」


 もはや考えている余裕はない。俺は闘之飛翔ヘルモーズを発動させると、意を決して宇宙船から飛び出した。

 最後にちらっと後ろを振り返ったが、そこには連射される光線で撃沈されていく宇宙船の無残な姿があるだけだった。


「……真琴だな?」


 マップを確認。光線の飛んできた方向と照らし合わせてみれば、ビンゴ。そちらに、真琴がいることがはっきりと表示されていた。


「遠距離攻撃は苦手だぜ……こいつはさっさと接近するに限る」


 俺は権利章典コンスティテューションで一時姿を消し、全力で真琴に向かって飛ぶ。

 どういう攻撃かわからねーが、マーカーだけじゃ正確な狙撃なんて不可能だかんな。うん、この能力マジ便利。改めて、空さんが味方でよかったと思う。


 さて、ともあれ真琴だが……場所の特定はさほど難しくはなかった。光線の発射されているところに行けばいいんだからな。

 俺は地面に降り立って、オーラロードを湊さんのサポートに切り替えてもらいながら真琴の前に立つ。


「よう、派手にやってくれんじゃねーか」

「ふふ、すごかったでしょ?」


 正面に立つ真琴は、そう言ってにこっと笑う。

 相変わらずの美少年っぷりだが、ここは戦場だ。そこに気を取られてる場合じゃない。


『そこ、工業区ね。そこのフィールド効果はたまに暴走するドロイドよ。ビームとか飛んでくると思うから、気をつけてね』


 そんな設備で大丈夫なのか、工業区……。


「お兄さん、マスラどうだった?」

「やりづらかった。会話に応じてくれねーから、考えも読みづらいし」

「ああ、やっぱりそうなんだ。……でも、お兄さん作戦勝ちだったね」

「まーな。半分は逃げてただけだけどよ」

「いいんじゃないかな。ボクも、お兄さんと戦いたかったもん」


 言いながら、真琴は剣を取り出した。わりとどこにでもありそうな剣だ。

 それを見て、俺も水筒を取り出す。対するのは、もちろん聖焔剣モードセイバーだ。


「オーケー、どこからでもかかってきな!」

「それじゃ、遠慮なく!」


 俺の言葉を皮切りに、真琴が地面を蹴った。

 その瞬間、俺は風を感じる。そして、それに沿うようにして真琴の身体がものすごいスピードで迫ってくる。


 ……思考加速!


「ぬうっ!」


 あっぶね。ギリギリのところで攻撃を受け止め、俺はふんばる。

 揺らめく炎の向こう側で、真琴が笑っていた。


「速いなオイ」

「ふふ、でしょ?」


 そしてその言葉と共に、俺たちは切り結び始める。


 剣の腕は互角と言ったところか。だが、攻守に万能な俺のそれに対して、真琴の戦い方は攻撃的だ。おそらく、い式の剣術にスキルを振っているのだろう。

 俺の使うは式は万能な分、突出したものがない。だから、激しく切り込んでくる真琴に対して、どうしても後手に回りがちだ。


 だが、ごくごく普通の剣を使う真琴と違って、俺の剣は火そのもの。フレアロードで制御されたその熱は極めて高く、ただの剣では攻撃を受け止めるだけでその耐久力を著しく減っていく。

 真琴の剣もそうだ。みるみるうちにその形が無残なものになっていく。

 そして……ほどなくして、真琴の剣が折れた。火花と溶けた鉄を散らしながら、刃が明後日の方向へ飛んでいく。


 当然、これを見逃すわけがない。俺はチャンスとばかりに大きく剣を振りかぶる。


 だが、剣が折れると同時にそれを捨てた真琴が虚空をつかんで……。


「なにィ!?」


 何もないところから、美しく輝く太い刃が現れた。そしてそのまま、その切っ先が俺の身体を薙ぎ払う。

 俺は直撃を食らい、それでもそれ以上の追撃を避けるために大きく後ろに跳んだ。剣を構えながら、現れたばかりの剣に目を向ける。


「びっくりした?」

「……した、めっちゃした」


 新たに現れた剣。それは美しく磨き上げられた刀身に華美な装飾の柄を持つ、見事な剣だった。刃も長く、本来であれば真琴のような少年が扱えるような代物ではない。

 その、どこからどう見ても伝説の逸品な剣をゆらりと構え、真琴が笑う。


「まだ終わらないよ」


 そう言うや否や、彼は刃の根元にそっと手を当てる。そしてその手を、ゆっくりと切っ先へとずらしていく。

 その瞬間だ――。


「な……うお……!?」


 真琴の手が通り過ぎた刃が、まばゆい光を放ち始める。程なくしてその光は刀身をすべて包み込み、文字通り光の剣が誕生した。

 光は若干の青さを持つ。だがその柄の意匠から、スペースオペラな映画のそれではなく、昔の特撮ヒーローのそれを思い起こさせる。


「レーザーブレード!」

「なにそれめちゃくちゃかっけえじゃん!?」


 光あふれる剣を手にした、紅顔の美少年。

 なんだそれ、絵になりすぎるってレベルじゃないぞ! 反則だ反則!


「行くよ!」


 だが文句を言う暇なんてない。真琴の言葉に俺も構えなおし、迎え撃つ。

 しかし俺の驚きはまだ続く。


「!?」


 なんと、途中で真琴の姿が忽然と消えたのだ。あれだけ光り輝いていた剣の姿も見えなくなる。


 しかし攻撃が迫っていることは確かだろうと考え、とりあえず適当なところで剣を構えなおす……が。


「うがっ!」


 そことは別のところから衝撃を食らい、俺は吹き飛ぶ。

 そして空中の俺の目の前に、不意に真琴の姿が現れる。その上段で、光り輝く剣が俺を見下ろしていた。


 当然ながら、今の俺に攻撃をかわしたり防ぐことはできない。そんな体勢じゃない。ならば取れる手段は一つのみ。


絶対王権ロイヤルガード!……あれっ?」


 満を持して発動させた絶対王権ロイヤルガードだったが、不発に終わった。

 なぜなら、真琴は攻撃をしてこなかったのだ。直前まで剣は振り下ろしたが、いわゆる寸止め(絶対王権ロイヤルガードが発動しなかったので、寸止めというレベルではないが)で、能力の影響下に入らなかったのである。


 正面に、自信にあふれる真琴の顔が迫る。それを見て、俺はやられたとようやく理解した。


 真琴は、グロウロードの性質をかなり理解しているようだ。そうでなければ、このタイミングで攻撃を中断するという選択はしないだろう。

 まさかこんな方法で対応してくるとは思っていなかった俺は、それによって対応がさらに遅れてしまう。


 そうこうしているうちに、真琴の姿がまたしても消える。俺の前で風が吹き、そして着地したと同時に、俺は背後から攻撃を受ける。


「こなくそ……っ!」


 俺はグロウロードの基本的な能力でもって、空中で無理やり止まる。そのまま着地して振り返りざまに剣を振った。


「うわっ!……さすがお兄さん!」

「さすがじゃねえよ! なんだお前、その技はんぱねえな!?」


 光り輝く剣と燃え盛る剣が、ぎりぎりと音を立てながらぶつかりあう。めっちゃまぶしい。


「何言ってるの、お兄さんだって透明になれるじゃない」

「い、いや、そりゃ確かにそうだが……っていやいや!」


 言葉を交わしながら、剣も交わす。


 先ほどとは異なり、光の分威力が増しているのか一撃一撃がめちゃくちゃ重い。その上鋭く、聖焔剣モードセイバーの油の刀身が飛び散ることを考えると、威力は聖焔剣モードセイバーにも勝るかもしれない。


 これはまずいな……。真琴の攻撃が予想以上に激しく、深く考えるだけの余裕がない。一旦、湊さんたちと相談するために撤退したほうがいいかもしれないぞ。


 そんなことを考えてながら、少し距離を取ろうとするが……。


「クライムバスター!」

「なあああ!?」


 真琴が突き出した左手から、俺めがけて光線が放たれた!

 当然だが、それは光速で俺を撃ちぬく。またしても、ライフがぐっと減る。


 いや、そんな速度で飛んでくる攻撃をどう防げと!? グロウロード使う余裕皆無だわ!


「どんだけ万能なんだよ、お前の能力!?」

「えへへ、逃がさないよ!」


 にっこり笑い、光剣を振り回しながら真琴が俺へと迫る!

 かわいいけど怖いよ!?


 思考加速を並行しながら防御をはかる。そして、やはり不意に真琴の姿が消えた。


 くそう……やっぱりどうにも癪だけど……ここは……逃げる!


権利章典コンスティテューション!」


 頼れる新技の名前を叫び、俺は夜闇にまぎれる。そしてそのまま全力で走ると、中空に浮かぶそのフィールドから躊躇なく飛び降りた――!


当作品を読んでいただきありがとうございます。

感想、誤字脱字報告、意見など、何でも大歓迎です!


遂にVS真琴本格的に始動です。

真琴が複数の能力を使っていますが、これはマスラの能力を使っているためです。

そして……レーザーブレードにクライムバスターは、思いっきり赤い宇宙刑事のアレです。使いたかったんです……。

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