第35話 振り分けタイム 3
と、いうわけで。さらに四日が経った。
訓練やポイントの振り分け、持ち込む道具の整理など、いろいろ済ませて遂に本選一回戦が始まる。
俺と乙女さん――ダメだ、この呼び方はいろいろとしっくりこない。
ゲンさん。うん、彼の生前のニックネームを借りて、ゲンさんと呼ぼう。
テイクツー。
俺とゲンさんのバトルは、本選一回戦としては三回戦に当たるようだ。だが、やはりできる限り訓練に時間を使いたかったので、他の人のバトルは見ていない。
もちろんこれは、俺が訓練に集中したかったというのもあるが、湊さんがバトルの確認を買って出てくれたというのもある。
トーナメントの妨害という目的を持つ彼女にそれを許すのはどうかとも思ったので、同じく高い分析能力を持つ空さんにもついていってもらうことにはなったが、ともあれ我がチームの頭脳二人がバトルを観戦するのだ。対戦相手がどういうタイプの人で、どういう能力を使うのか。その辺りの見立てはバッチリって言ってもいいだろう。
さて、バトルが始まる前に、今の俺の状態を確認しておこう。
ちょっと長くなるが、大体こんな感じである。
◆獲得スキル
・技能系
い式格闘術 レベル5
ろ式格闘術 レベル5
は式剣術 レベル3+1
拳銃リボルバータイプシングルアクション レベル4
狙撃銃ボルトアクション レベル5
拳銃フルオートマチック レベル2
爆発物 レベル2
・ステータス系
攻撃力アップ レベル4
防御力アップ レベル4
素早さアップ レベル4
動体視力アップ レベル4
筋力アップ レベル4
脚力アップ レベル4
体力アップ レベル4
ライフアップ レベル4
反射速度アップ レベル4
思考速度アップ レベル8
特殊能力攻撃アップ レベル2
特殊能力防御アップ エベル2
・抵抗系
水属性軽減 レベル1
打撃属性軽減 レベル1
刺突属性軽減 レベル2+1
斬撃属性軽減 レベル2+1
銃撃属性軽減 レベル2
爆発属性軽減 レベル2
全状態異常軽減 レベル2
以上。
もちろん言うまでもないが、このスキルのいくつかは俺が直接ゲットしたものじゃない。
仲間のスキルも反映されるというシステム上、俺に反映されているものもまとめて入れたので、そこはあしからずだ。
ポイントの振り方としては、今までとあまり変わらない。ただ、事前の打ち合わせの通り最初は狙撃で戦う予定でいるので、狙撃に関するスキルは少し上げてある。
刺突と斬撃の軽減にプラス1ってついてるのは、新しく買ったアクセサリのおかげ。湊さんが割り出してくれたセールを見計らって、剣士のお守りというものを購入したのだ。
これももちろん、ゲンさんが剣の達人であるということを考慮に入れたチョイス。剣を武器にする人は今後も少なからずいるだろうから、持っていて損はないだろう。身に着けていても、動きを特に制限されるってこともないしな。
次に、なんだかんだで今まであまり話をしてこなかった特殊能力について。
今さらだが、特殊能力のほうのスキルには、威力、時間、範囲、強度、精密、連結の六つの分野がある。
威力は文字通り、特殊能力を使った攻撃力に直結する。グロウロードみたいに、直接的な攻撃力を持たない能力の場合どういう効果を及ぼすのかは今のところ不明。
時間も文字通り。特殊能力をどれくらいの間維持できるかに繋がる。
範囲は、特殊能力をどれくらいの規模で使えるかだな。射程範囲って言ったほうがわかりやすいかも。
強度は、ちょっとわかりづらいんだが、相手の能力で能力に干渉された時に、どれだけ能力を維持できるかという分野だ。織江ちゃんとのバトルで俺たちの能力がぶつかり合って相殺したのは、このスキルが同レベルだったからだな。
精密は、地味だがかなり重要だ。これが高いと、より少ない労力で、より短時間で能力を発動することができる。これは、グロウロードのように複数のことに対応したい能力では特に大事だな。
連結は、この間湊さんから説明が合った通りだ。このスキルが高いと、他人が能力を使う時に能力にプラス補正がかかる。技を組み合わせたりするとスキルが上がるから、他にも何かありそうだが、その辺りは今のところわからない。
これらを踏まえたうえで、四人の能力を見てみよう。スキルよりも長いが、勘弁してほしい。
◆フレアロード
威力 レベル4
時間 レベル4
範囲 レベル3
強度 レベル4
精密 レベル2
連結 レベル1
・使用技
破焔拳:手に炎を集めて素手での攻撃力を上昇。対象物を炎上させるかどうかは任意。
焼夷弾:炎を弾丸にして発射。着弾と同時に対象物を炎上させる。
焼殲滅:小さな炎の弾丸を広範囲に発射。着弾と同時に対象物を炎上させる。アクアロードとの連携で、効果上昇。
聖焔剣:炎を剣にして攻撃。切断と同時に対象物を炎上させる。アクアロードとの連携が前提。
◆アクアロード
威力 レベル5
時間 レベル4
範囲 レベル4
強度 レベル4
精密 レベル4
連結 レベル3
・使用技
神水:液体で対象を覆う。攻撃、防御、拘束、様々な使用方法あり。
破邪:液体を弾丸にして発射。水鉄砲の併用で威力、射程が上昇。
奉納:バトルエリアから水を集める。バトルエリアによって効果は左右される。
水刃:液体を剣にして攻撃。使用する液体によって威力が上昇。聖焔剣の大元。
海嘯:大量の液体で広範囲を圧殺する。大量の液体の存在が前提。
◆グロウロード
威力 レベル2
時間 レベル2
範囲 レベル5
強度 レベル4
精密 レベル3
連結 レベル2
・使用技
絶対王権:認識した攻撃を自動で停止する。後方にも有効範囲あり。
王権発布:対象の行動を封じる。対象に触れる必要あり。
中央集権:音波の動きを止め、周辺の音を完全に消す。発動中は、他の技が使用できない。
権利章典:光の動きを止め、周囲から姿を消す。開発中。ただし、小さいものには使用可能。
◆オーラロード
威力 レベル1
時間 レベル2
範囲 レベル1
強度 レベル1
精密 レベル4
連結 レベル1
・使用技
勇之闘気:生命力を放って攻撃する。
枝之破滅:生命力を火に変換する。
以上。
いくつか開発中の技もあるが、それは一覧から省いた。
能力のほうのスキルは、いろんな意味で織江ちゃんが一番って感じだな。湊さんは予選が終わるまで能力を使ってなかったから、この状態はしゃーなしだ。
それでも彼女なら、これを短時間でとんでもないものに押し上げるんじゃないかと思えてならない。過剰評価かもしれないけど……何せ今のところ失敗なしの人だからなあ。
次に持ち込む道具だが、これは一つにまとめるという方法を取ることでかなり持ち込めるので、結構好き放題やらせてもらった。
ライターは三十本くらいひとまとめでボックスに放り込んだし、灯油を詰めたハンディタイプの水筒も十本ひとまとめ。
それから回復用の○ィダー○ンゼリーは、クーラーボックスに二十個と、いつでも手軽に飲めるようにと一個を別枠で用意。
残りは空さんから借りた狙撃銃と、その弾丸一式をたくさん。それに織江ちゃんから借りた水鉄砲と、水一杯のドラム缶、硝酸をつめた瓶。
これだけあれば十分だろ、いくらなんでも。それでも足りなくなったら、ストックが織江ちゃんや空さんがそれぞれ持っているから逐次届けてもらうってことで。
さて。
ようやくバトルだ!
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「おう、おめぇが次の相手かい」
「うぃっす、明良亮っす。よろしくおなしゃっす!」
ポータルで鉢合わせて、最初の会話である。
ゲンさんの、パッと見た第一印象はまさに頑固おやじって感じだ。白髪交じりの角刈り、よく日焼けした強面とか、ほぼテンプレって言ってもいい。
ただその服装は道着で、ピンと伸びた背筋に凛としたたたずまいからは、貫録やオーラみたいなものを感じる。
なるほど、剣の達人という話はガチなんだろう……というわけで、冒頭のあいさつとなる。
「おう、オレぁ乙女元だ。よろしくな、坊主!」
体育会系のノリ全開でばしんと肩を叩かれた。痛みは感じないが、迫力は十分伝わる。
が、ここで返事しないという選択肢はこのノリ相手ではありえない。俺は、なるべくでかい声を意識して返事した。
「最近の若ぇのにしちゃあ威勢がいいな! こいつはやりがいがありそうだな!」
「うぃっす! でも俺も負けねっす!」
「はっはっは! いいぞ、さすが本選楽しめそうだ!」
「うぃーっす!」
それからも、ゲンさんは笑いながら気さくに話に応じてくれた。なんていうか、気難しい性格って聞いていたが、ただの気のいいおっさんにしか見えない。波長が合うと感じてくれてるってことか。
……あ、これも湊さんの策略の一環な。相手の心の懐をこじ開けるなんて方法、俺が思いつくわけないだろ。
湊さんが言うには、相手から好印象を得ることで正攻法以外の手段を取りづらくするという。
ゲンさんの性格からして邪道を使うとは思えないが、何せ本選は当人以外にサポーターがいる。彼らのアイディアによっては、そういう手に出る可能性も否定できない。
俺という人間に対して好印象を持ってもらえれば、せっかくの相手と汚い手でやり合うという方法は取りづらくなるだろう。まして、一本気な性格のゲンさんだ。味方からの献策を却下してくれるだろう、と……そんな感じだな。
もちろん、デメリットはある。結果として相手のやる気を引き出していることになるので、戦闘力は基本的に上がるだろう。精神状態で身体の調子が左右されるのは、死んでからも変わらないのだ。
が、それに対してちょっとワクワクしてる俺がいる。やはりというかなんというか、俺はゲンさんには親近感を感じているようだ。
ちなみに、このポータルにいるのは俺とゲンさんだけだ。互いのサポーターたちは、またそれぞれ別のポータルで待機している。そこから俺たちに援護をしてくれるのだ。
『さああァァァ皆さんッお待たせしましたッ! いよいよ本選一回戦、第三戦の面子が出そろいましたッ!!』
ディスプレイから、ハイテンション極まりない司会の声が響いてきた。この感じ、なんかすげー久々な気がするな。
観客席も……予選以上に盛り上がっているみたいで何よりだよ。湊さんは嫌だろうけどな。
『赤コーナー! 今大会最年長っ! 剣術冴えるいぶし銀っ! 乙女元選手!!』
歓声。
おお、なんだそれ。本選じゃ紹介まで添えられるのか? ゲンさんの紹介、かっこいいな!
『青コーナー! 敵すら助ける義の男っ! その優しさがどこまで通じるか!? 明良亮選手!!』
歓声。
……うわ、なんか、こう。なんだ。かっこいいの期待してたし、実際カッコよく言ってくれたけど。
これ、めっちゃ恥ずかしいじゃねーか! 嬉しいけど! 嬉しいんだけど!
『さて、今度のバトルエリアはどうだ!? ルーレットスタート!』
俺の赤面をよそに、エリア決めのルーレットが始まる。
ぐるぐるといろんな映像が入れ代わり立ち代わり現れるが、さてどうなるか……。あ、もう二度とフジヤマエリアはごめんです。
『出たーッ! ダンジョンエリアッ、だーッ!!』
画面に映し出されたのは、いかにもファンタジーですと言いたげなダンジョンだった。
おお、なんか楽しそうなエリアが出てきたな。どうなるんだろう。もうまったく日本らしさとか感じないけど、こういうの嫌いじゃないぜ。
だが、ゲンさんは肌に合わないのだろう。画面にそれが出た瞬間、なんだいそりゃあ、とつぶやいていたのを俺は聞き逃さなかった。
『それではいよいよ、バトルスタートです! 両者、転移装置へ上がってください!』
司会に導かれて、転移装置へ上がる。
そしてその瞬間、俺の視界は白一色で満たされていった。
当作品を読んでいただきありがとうございます。
感想、誤字脱字報告、意見など、何でも大歓迎です!
ようやくここまで来ました……次回、遂に本選バトル開始です!
◆アイディアを提供してくださったみなさん◆
・ダンジョンエリア:夢意識の梟様
いただいた案よりももうちょっと凝ったものになりそうです。
せっかくなので、モンスターとか用意したいなあと。
皆さん、アイディア提供ありがとうございます!
来世に(ryではまだまだ能力とバトルエリアの募集をしています。
もし案がありましたら、どうかよろしくお願いいたします!




