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来世になるけどまた会いましょう。  作者: ひさなぽぴー/天野緋真
第一章 予選編

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25/62

第25話 予選突破

 気がついたら、俺たちは元いたポータルに戻ってきていた。

 そして、いつも通りの司会の声で我に返る。


『勝者! 明良亮選手ー!! 全勝同士の戦いに勝ち、見事本選出場をもぎ取ったー!!』


 ディスプレイからは、大歓声が聞こえてくる。


 ふふふ、ちょっと……いや、かなり気分いいな、こういうの。我ながら単純な気もするが、嬉しいものは嬉しい。

 まあ、どうせ喝さいを浴びるなら直にとも思うけど。


 そう、俺は予選に勝ち抜いた。それも全勝で、だ。

 うち一つは不戦勝のようなものだが、勝ちは勝ちだ。っていうか、彼女は全員に勝ちを譲ってるようなものだから、実質ノーカンでいいだろう。


 ともあれ、予選突破だ。これで本選出場、ようやく本番が見えてきたな。


 調子に乗りかかっていた俺は、視界の端で空さんが転移装置の縁に座ってがっくりとうなだれているのが見えて我に返る。

 俺は、彼に勝った。だが、彼はどんなことをしてでも転生しようとしていた。勝負は勝負だが、そんな彼の目的を砕いてしまったのは、紛れもない事実なのだ。


「……負けたよ」


 だが、俺がどう声をかけるべきか迷っているうちに、空さんが口を開いた。


「お見事だったね。最後はミスったなー……あそこは絶対王権ロイヤルガードじゃなくて王権発布ファーストドミニオンが正解だったよね……」


 そう言って薄く笑う彼の表情は、やはり暗い。元々ほおがこけて痩せ細っていたからか、幽霊か何かみたいに見えるレベルで。

 しかし声をかけられた以上は、俺も何か返さないとな……。


「いや、その、実際はどうかわかんなかったっすよ。効果が切れるタイミングを狙ってたわけじゃないし、ホントにギリギリのとこでしたよ」

「そういうリアクションがすぐに返ってくるあたり、君の性格がわかる気がするなあ……」


 ……褒めてる……のか?

 さっき以上にどう返していいかわからず、口をつぐんでいると……。


『さて、ではこの後のことについて説明させていただきます!』

「おっと」


 司会の人がいいタイミングで割って入ってきてくれた。……これ、もしかしてここの会話も聞こえてる?

 俺がディスプレイに目を向けると同時に、空さんはのっそりと立ち上がる。


「……負けたぼくには関係なさそうだ。さっさと退散するとしようかな」

『この後、明良選手たちには本選についての説明が行われます!

 第十二リーグ所属の四名は、現在明良選手がいる第三ポータルにお集まりください!』

「……え?」

「なんだって?」


 俺と空さんは、視界の言葉にほぼ同じタイミングで声を上げた。


「今、四人ここに集まれって言ったの?」

「いや、俺もそう聞こえたっすよ」

「どういうことだろう? 予選敗退者に連絡入れるにしたって、わざわざ勝者と同じところでするのはちょっと不自然だし……」

「ですよねえー」


 司会の言葉の意味がわからず、俺たちは首をひねる。とはいえ当然だが、それで答えが出てくるはずもない。

 しばらく実りのない話が続いたが、結局本当に意味がなかったので俺たちはそれについては考えないことにした。


 そしてそれと同時に、扉が開いて湊さんがポータルに入ってくる。


「あ、湊さん」

「やあ、いらっしゃい」

「ええ。とりあえず、二人ともお疲れ様」


 俺たちの顔を見て、彼女はそう言ってうっすらとほほ笑む。

 おお……そういう表情もできるんじゃないか。元々清楚な美人だから、そんな感じの顔をしていたほうがいろいろと得じゃないかなー。


「……よく来たな?」

「来ざるを得ないもの」


 俺の問いに肩をすくめ、湊さんは壁に背を預ける。その顔は、先ほどまでとは違って不機嫌がありありと見て取れる。

 まあ……トーナメントそのものを否定してる子だから、そうなりもするか。


 とはいえ、この辺りのことはあまり追及しないほうがいいんだろう。俺はそうかと頷くだけにして、話を変えることにした。


「しっかし、なんで全員集めるんだろうな? 湊さん、何か知らないか?」


 湊さんは頭いいからな。何か納得できる答えを持っているかもしれない。

 そう思って聞いたんだが……。


「言葉通り、本選についての説明に決まってるじゃない」


 それ以外に何があるんだ、とでも言うかのような調子で言われて、俺と空さんは一瞬言葉を失った。


「……いや、でもスズちゃん。ぼくたち負けた人間まで集める意味なんてないでしょ?」


 先に回復したのは空さんだ。小さく首を傾げ、湊さんの様子を窺うようにして聞き返す。

 一方湊さんは、それを受けて小さくため息をついた。


「私たち敗退者も本選に出るのよ? 意味なら大いにあるわ」


 そして、そう言った。その調子は先ほどよりも強く、さながらそんなことも知らないのかと言いたげだ。

 だが、言われた俺たちはそれどころじゃない。ほぼ同時に素っ頓狂な声を上げ、しばらく硬直する。


 敗退者も? 本選に出る? なんだそれ、そんな話聞いてないぞ!?


「ど、どういうことだ?」

「ナニソレどういう意味?」


 今度は、俺と空さん同時に回復した。そして、同時に湊さんに聞くことになる。


「全員揃ったらイメが教えに来るわ。どうせわかるんだから、大人しく待ってなさいよ」


 が、今度は答えを返してくれなかった。

 言いたいことはわかるが、わかるけどさあ、もうちょっとこう、言い方って言うか……。


「スズちゃん……君、何をどれだけ知ってるワケ?」


 俺が黙ったのに対して、空さんは食い下がる。疑うような視線が、湊さんに刺さる。

 だが、彼女は動じない。ふっと笑うと、やや顔を伏せて腕を組む。


「さあ、どうかしら。でも、参加者の中で一番トーナメントの情報を知っているって自信はあるわ」


 うわー、さすがにちょっとイラっときた!

 でもその振る舞いがやたら堂に入ってる上に似合ってるから複雑!

 美人がやるとなんでも絵になるってのは本当らしいな……。


「……答えになってないんだよなあ」

「機会があればそのうち説明するわ」

「機会があれば、ねえ……」


 俺が感想を抱いただけで終わったのに対し、二人ともすぐに対応できるのは素直にすごいと思う。

 ただ、二人の会話は、頭のいい人の腹の探り合いって感じがして怖い。俺は首を突っ込まないほうがいいような気がしてならない。


 なんて思って二人のやり取りを眺めていると、ポータルにノックの音が響いた。


「あ、はい。どぞー」


 話を続けていた二人はとりあえず置いておき、俺は返事をする。

 すると、静かに扉が開いて小柄な女の子――織江ちゃんがおずおずと中に入ってきた。


「失礼つかまつります!」


 そんなことを言いながら。相変わらずだな、この子は。


「おう、織江ちゃん」

「明良殿、大勝利でございましたな! 本選出場おめでとうございまする!」


 彼女は、俺の顔を見るや否や駆け寄ってきてそんなことを言う。

 言い方は時代ががっていて大げさだが、身体の動きやポーズは年頃の女の子が有名人にサインをねだりに来たような感じなので、ギャップがすごい。かわいいけどさ。


「ありがとさん。いやま、運も良かったからな」

「運だけでもありますまい。まさに侵掠すること火のごとし、風林火山の戦いぶりでござった!」

「い、いやそう褒めるほどのことはしてねーからさ……」


 褒められて悪い気はしないけど、運が良かったことも間違いない。ダメージもかなり食らったし、内容は決していいとは言えないんだよな。


 決して、言われたことの意味がほぼ理解できなかったからではない。心からの謙遜である。


「またまたご謙遜を……」

「みなさん、お集まりくださりありがとうございます!」


 さらに続きそうな織江ちゃんの褒め殺しを遮ったのは、イメちゃんだった。転移装置の前に立って両手を広げている。

 一体いつの間に現れたんだ……いや、彼女はいつでも自由に姿を出したり消したりできるけど。


 突然の出現に、全員の視線が彼女に注がれた。


「もう少し集まるまでに一悶着あるかと思いましたが、スムーズに進んだようで何よりです」


 そう言って、イメちゃんは湊さんのほうを見てにっこり笑った。


 ……あれは湊さんに対する嫌味か何かだろうか。まあ、湊さんのほうは顔色一つ変えなかったけど。


「申し遅れました、ボクはこれから皆さんのサポートをさせていただきますイメと申します。よろしくお願いします!」


 俺以外の相手にぺこりと頭を下げて、イメちゃんが言う。

 その言葉に、空さんと織江ちゃんが不思議そうな顔をした。


「……イメ? 君が? ぼくの知ってるイメじゃないなあ」

「拙者のサポーターもそう名乗りましたが、同名の別人でございましょうか?」


 ……ん?

 どういうことだろう。他のみんなのサポーターも、イメって名前なんだろうか?


「イメという存在を、私たちと同じ存在と考えたらダメよ」


 妙な空気が満ちたポータル内で、湊さんがそれを切り払うようにして口を開いた。今度は、彼女に視線が集まる。


「イメはあくまで、参加者全員にあてがわれるサポーターというシステムでしかないわ。

 そしてイメの姿や性格は、その参加者が持つ理性の異性像が投影される。参加者の数だけイメは存在するのよ」


 そのすべてが一つの意識で統一された群体だけど、と締めくくり彼女は小さく鼻で笑った。

 その際視線はイメちゃんに向けられていて、先ほどの趣向返しとでもいった感じだ。


 そして対するイメちゃんは、実際そう受け取ったようで、むう、と頬を膨らませて湊さんにじとっとした目を向ける。


「涼様ぁ、今そこまで言わなくたっていいじゃないですかあー」

「あら、共有しておいたほうがいい知識と思ったんだけど」


 う、視線がぶつかりって火花が見える……。

 湊さん、いくらなんでもトーナメント側の人間に対して敵意持ちすぎだろって……。


「ま、まーまー二人とも。イメちゃんについて気になることは確かにあるけどさー。

 ここにはホラ、説明のためにみんな集まったんだし? まずは本題を片づけようよっ」

 そこに、空さんが割って入った。


 ああ……さすが年長者だ。さっとあの中に入って仲裁しようとするのは、大人だよなあ。

 俺、湊さんが言った意味もわからないし、この場を何とかしようなんて空気読むのもできないしだよ。ああいう風に気配りができるようになりたいもんだな。


 そんな空さんの仲介で、イメちゃんは頷く。


「仰る通りですね……まずはそれを最優先にすべきでしょう」


 気を取り直して。そんな感じで、彼女はいつもの調子に戻った。

 湊さんのほうも、涼しい顔でたたずんでいる。直前のやり取りなんてなかったみたいだ。


 ……女の人って、こういうところあるよね。たまに怖くなるときがあるよ。


「それでは、リバーストーナメント本選について、説明させていただきます!」


 こうして、俺たち四人は改めて本選の説明を受けることになる。


 しかし、それによって受ける衝撃がどれほどのものか、湊さんを除いた三人はまだ知らない――。


当作品を読んでいただきありがとうございます。

感想、誤字脱字報告、意見など、何でも大歓迎です!


第一章予選編、これにておしまいです。

次回から、第二章本選編を始める予定でいます。


本選開始にあたって、読者の皆さんに募集……というよりお願いがあります。

特殊能力とバトルエリアのネタが尽きまして(白目

もし名案がありましたら、アイディアをお貸しいただけると幸いです。

募集の詳細については、活動報告に書かせていただきましたのでそちらをご参照ください。

そちらへのリンクは、目次とあとがきの下部にも掲載いたしますのでご確認いただければ幸いです。

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当作品の異能力バトルにおいてキャラクターが使う特殊能力と、彼らが戦うバトルエリアのアイディアを募集しています。
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【急募】能力とエリアのアイディア【来世に(ry】
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