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来世になるけどまた会いましょう。  作者: ひさなぽぴー/天野緋真
第一章 予選編

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第24話 予選 13

「……よし、これで完成だ!」


 森に火をつけて回ること数十分。俺は順調に空さん包囲網を構築し終わった。既に森には揺らめく炎の赤い光が隅々まで伸び、煙が充満し始めている。

 途中で油が切れた時はどうしようかと思ったが、その頃にはもう油なんて必要ないくらい火がたくさんあった。


 赤々と燃え盛る炎をバックに、マップを確認する。


 空さんの位置は、当初からあまり変わっていない。森の異変に気がついた時には、既に俺を正面から突っ切らないとどうしようもないところまで来ていたのだ。


 妨害もなかった。やっぱり弾切れだろうか?……まあいいや。ここまで来たんだし、行けるところまで行ってやれ。


 あとは、この一繋ぎになった円形の炎を、フレアロードで一気に拡張するだけだ。


 俺は今し方繋げた炎に両手をかざし、完成形をイメージしながら全力を能力に注ぎ込む。


「フレアロード!」


 その瞬間、炎が一気に勢いを強めた。大きさも、熱も、あらゆる部分が強化された火が、瞬く間に森の植物を飲み込んでいく。それはこの円形の外にも、中にも等しく進む。

 もちろん、今の俺に炎を拡張し続けるだけの力はない。だから一度能力を発動させてしばらく休憩、というパターンを繰り返すことになる。


 ただ、休憩とは言ってもフレアロードの行使を休むだけで足は休めない。炎の拡張に合わせて、空さんのほうへと進むのだ。


 究極、フレアロードには攻撃力がない。炎を相手にぶつけることで発生するダメージは、あくまで炎が持つ熱によるダメージでしかないのだ。だからできるだけ相手を直接炎上させるのが効率的で、そのためにはある程度近づく必要があるのだ。

 ここまで火を広げれば大丈夫なような気もするが、俺と空さんのライフ残量の差を考えると、ここは危険を冒してでも接近したほうがいいと思ってな。


 マップは、早い段階で拡大モードへ移行している。さっきみたいなミスはもうしないぜ。


 タイムリミットまで、およそ十五分。それだけあれば、十分だ。念のためライターも手に持ったし、大丈夫。


 ……しかし、こうやって炎をバックに前進する俺って、観客席じゃどんな実況されてるんだろうな。実況が漏れるなんて運営側のミスは二度とごめんだが、こういう時はちょっと気になるね。


「む、動き出したか」


 マップに移る空さんのポイントが、こちらに向かってくることに気づいて俺は身構えた。銃は、さすがに集中しないと回避できない。回復したとはいえ、ライフは半分程度だからな。食らわないに越したことはない。


「ぬおーっ!?」


 と思ってたら早速一発きたあぁ!

 無音の銃弾に対して、後ろに倒れることでなんとか回避。そのまま後ろ手に地面をついてブリッジ、それから横に転がる。


 相変わらず速い! 拳銃よりも速かったから、あれはスナイパーライフルだな?


 弾切れじゃなかったか、くっそ!

 弾切れだったらこの進撃も楽だったが、やっぱり現実はそうはいかないな。


 マップと実際を見比べながら、なるべく狙撃できない場所を選んで前へ進む。進みながらも、フレアロードはもちろん続ける。

 火の回りが普通より絶対的に速いからか、ところどころ燃え落ちた木が倒れてきて危ないこともあったが、気合があれば銃弾すら避けられる今の俺にとっては、倒木にはそこまでの脅威は感じない。


 ……二発目が来た。今度は正面ではなく、かなり横から飛んできたため回避が遅れた。直撃こそしなかったが、それでもダメージはダメージだ。


 三発目。これは運よく外れ。それから燃える木の陰に隠れて、追撃を防ぐ。


「もう数発は大丈夫だな。……そろそろ突っ込むか」


 空さんは、やっぱり狙撃というスタイルから極力俺と距離を取ろうとしている。移動できるか所はもうだいぶ限られているとは思うが、時間も残り少なくなってきたし、ここは仕掛けてみるとしよう。


「おらああぁぁっ!」


 そうと決まれば、突撃あるのみ。俺はフレアロードを発動させながら、空さんがいるほうへ全力で駆けだした。

 四発目を走りながらもかわし、しかし速度は落とさず走る!


 そして……。


「動かないで」

「うおっ!?」


 またしても死角(真後ろではないが)から突然銃を突きつけられて、思わず変な声が出た。

 急停止してみれば、そこには空さんがスナイパーライフルでフリーズをかけている。……それでフリーズかけるとか、ゲームでしか見たことなかったよ。


「……まさか森を焼き払うなんて思ってなかったよ」

「たまたまいいものを持ってたんすよ」


 深いため息をつく空さんのゲージは、半分くらいまで減っている。まだ俺のほうが少ないが、この火の海でやはり相当消耗したみたいだ。後はスキをついてとどめを……。

 俺は会話がもう少し続くことを願いつつ、周りで逆巻く炎を少しずつ操る。目標は空さん……ではなく、彼の持つ銃だ。見た目はそのままに、熱だけをできる限り高く持っていく。

 俺たちの身体は熱によるダメージを感じないが、同時に熱も感じない。そのメリットを逆に利用するわけだな。


「しかも、まさか狙撃をかわしてたなんてね。どうりでライフの減りが鈍いわけだ」

「パッシブスキルメインに振ってるんで」


 それだけじゃないけどな。でも、確かにインパクトの上では狙撃をかわすほうが大きいか。


「俺としちゃ、またしても死角とられたのが不思議っすけどね? こんな森の中で完全に無音って、どういうことすか?」


 もうちょっと粘りたいので、俺も少し聞いてみる。見た目は俺のほうが明らかに不利だからな、冥土の土産みたいな感じで教えてくれよ。


「能力の応用、って言っておこうか。それ以上は言えないかな」

「そりゃそーっすね」

「君だって、能力のことは言えないだろ? たぶん、火を操るんだと思うけど」


 あ、はい、ビンゴです。当たりです。

 まあ、ここまでやればわかるか。そんな俺の沈黙を、肯定と見たのか空さんが言葉を続ける。


「そんな君に聞きたいんだけど、この大火事を収めてくれないかな。ぼくとしては、このまま危なげなく勝ちたいんだけど」

「あー、それ無理っすわ。ここまで広がったら、もうどうにも」

「……まあそう言うよね、普通」


 いや、マジなんだけどさ。……信じてもらえないのも無理はないか。


「じゃあ仕方ない。悪いけど、これで本当に終わりにさせてもらうよ」


 もう一度ため息をついた空さんは、一瞬申し訳なさそうに顔をゆがめた。が、すぐに表情を抑えると、トリガーに置いた指を引く。

 ……念のため、もうちょっと引っ張りたかったが、ここらが限界か。まあいいだろう。


 俺は、絶対安全の確信をもって空さんに改めて身体を向け、直後銃の暴発に巻き込まれて目を丸くしている空さんのみぞおち目がけて拳を叩きこむ!


「うぐぅっ!?」


 悲鳴と共に空さんの身体が少し宙に浮き、それから後ろへ大きくのけぞる。


「逃すかよ!」


 この状況を見逃すほど、さすがに俺はお人よしじゃねーぜ!


「フレアロード! モードッ、ラッシュ!!」


 周りの炎を両の拳に集め、それでもって大量のパンチをお見舞いする!


「ぅおおおおらああああぁぁーっ!!」


 パッシブスキルによる攻撃力の補正、そして炎による補正がかかった連続パンチが次々に決まり、空さんのライフが見る見るうちに減っていく。

 だが、途中で俺の動きが止まる。


絶対王権ロイヤルガード!」

「特殊能力か! 動きを止める能力だったっけか!?」

「やっぱりわかってたね! でも、わかってたって防ぐ方法はない! 食ら……」

「それは俺のセリフだぜ!」


 動けないながらも、俺は空さんの言葉を遮ってフレアロードを発動させた。身体を完全に止められるほうじゃなかったからできた芸当と言える。

 対象は、もちろん周りで燃えている火。それを、空さん目がけて一斉に襲わせる!


「……っ!」


 熱はもちろん、上げてある! 具体的な温度はわかんねーし、俺たちは熱を感じねーが、それだけの火に一斉にまかれたらダメージは相当だ!


 そして火ってのは、やっぱり怖いものなんだよ。いくら俺たちが死んでたって、感性が生前のままなら感じ方は一緒だ。目の前に迫る大量の火を見て、ひるまない一般人なんているもんか。

 もちろんひるむのは一瞬だが、その一瞬さえあればいい!


「うあっ!?」


 ギリギリのタイミングで能力による制止が解け、俺はラッシュを再開する。そして、空さんが俺にぶんなげようとしていた虎の子の手りゅう弾五連発を、彼の手から弾き飛ばす。離れたところで爆発が巻き起こった。

 その爆風に耐えながら、全身の力をみなぎらせる。


 行くぜ、とどめだ!


「せいやーっ!!」


 俺は足にできる限りの炎を集めて、空さんの顎目がけてハイキックをぶちかました!


「グワーッ!」


 その直撃を食らった空さんは悲鳴と共に、大きく吹き飛んで燃えたぎる木に激突する。

 そしてその瞬間、彼のゲージがなくなり、エリアの上空にでかでかと「YOU WIN」の文字が浮かび上がった。


 っしゃあああ! 俺の、勝ちだ!


当作品を読んでいただきありがとうございます。

感想、誤字脱字報告、意見など、何でも大歓迎です!


VS永治、これにておしまいです。運も実力のうち。

出だしといい結末といい、永治がどういう人間なのかわかる人にはわかるでしょうが、彼含め予選で登場してきた人物のことももうちょっと掘り下げていきたいところですね。

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