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第18話 観戦しよう 2

 ただ待つとなると、九十分ってのは結構長い。というわけで、真琴とあれやこれやと話をしてより親睦を深めた。


 エリアのフィールド効果について。好きなものや嫌いなもの。転生してどうしたいか。女の子の好み。


 なんでも聞くところによると、真琴君はボーイッシュな子が好きらしいですよ?

 顔赤くしてもじもじしながら話す、なんていう初心な反応は、見ていてこっちが恥ずかしくなるレベルだったわ。俺にもあんな頃があったね。


 あ、転生については、俺がそこまで興味ないと言うとかなり驚かれた。


「純粋にバトルを楽しみに来てる人なんて、お兄さんくらいなんじゃないかな……」


 と言われて、呆れられたりして。ちょっと悔しかったので、ヘッドロックをお返ししておいた。


 些細なことだが、こういうやりとりは死ぬ前のことが思い出せて楽しい。少しさみしくもあるけどな。


 ちなみに俺は一人っ子だったので、歳の違うやつとこうやって戯れるのは新鮮な気分でもある。兄弟のいる友達からは、いてもうっとーしいだけなんて聞いてたが、なかなかどうしていいもんじゃないか。

 真琴みたいな素直で人懐こい弟なら、むしろ俺は何人でもって感じ。……こいつの場合、同年代の男に比べても間違いなくいい子だろうから、話は別かもしれんが。


 まあともあれ、そんな真琴も転生はしたいらしい。歴史学者になって、本能寺の変の真実を突き止めたいと言っていた。俺には高尚すぎて、とてもじゃないがついていけない。


 他の参加者も、それぞれがそれぞれの目的を持ってるんだろうなあ。


 もし優勝できた時のことを考えて、俺もそれっぽい目的を用意しておいたほうがいいかもしれない。何がしたいかと言われても、特にこれ、っていうのはないけどさ。


 それから、生前のこともいろいろ聞いた。あんまり話したくないこともあるだろうとは思っていたが、その辺りはわざと言わなかったか、それともそういうことはなかったか……。

 俺としては後者であってほしいところだが、本当のところどうなのかは、それこそ聞くわけにはいかない話だ。


 真琴が言うには、こいつが死んだのは落雷による感電死らしい。夏休みの午後、夕立の中チャリで疾走していたところ、ズドンと来てそのままここに来たという。


 雷で死ぬ確率ってのが死亡者の何割を占めてるのか俺にはわからんが、たぶん俺よりは珍しいケースなんじゃないかと思う。雷が落ちるところは遠目に見たことは何度もあるが、実際にそれが人に落ちたって話はあまり聞かないし。


「でも、一瞬だったからそこはよかったよ」


 そう言う真琴は、死んだことについてはさほど気にした感じはない。


「餓死とか、そういうのでは死にたくないよね。苦しみたくないもん」

「そーだな。俺は一瞬じゃなかったかもしれんが、気づかなかったからまあ同じだろう」

「お兄さんは……どう、だったの?」

「俺か? 俺は焼死」


 どこか遠慮がちな問いだったので、気にするなと言わんばかりに俺は笑って答える。


「家が燃えたらしいんだけどさー、ぜんっぜん気づかなかったよ。気づけっつー話だよな」


 さすがに、父さんの不始末ってことは言わないでおく。言わないほうがいいだろうし、無理に言わないといけないわけでもないしな。


「それは……確かに気づきそうだよね……」

「意外とそういうもんかもしれねーぞ?」

「だといいねえ」


 そうして俺たちは笑い合う。


「でも、だからお兄さんの能力が火を操る、なんだね」

「そういう真琴は、電気を操る、とかか?」


 能力は、死因に関係したものになるってのは最初聞いたからな。感電死なら、やっぱ電気だろう。

 と思ったが、真琴はにやっと笑って否定した。


「ぶっぶー、違います」

「マジで?」

「うん。ボクより先に感電死した人がいたみたいで、ボクの能力はそうじゃないんだ」

「そうか……そういや、ダブったら違うのになるとも言ってたっけか」

「そゆこと」


 一つ選択肢が消えたという意味では、よかったのかもしれない。

 逆に考えれば、真琴以外の誰かで、電気を操る能力を持った参加者がどこかにいるということが確実、ということでもあるし。

 電気はそれ自体が攻撃力高いものだからなあ。もし対戦相手で出てきたら、注意しなきゃいけないのは間違いない。


 ……なんとなくだが、空さんは違う気がする。あの人が織江ちゃんとのバトルで見せたのは、攻撃を防ぐことだったわけだし。


「でも、どういうものかはお兄さんにも教えられないからね」

「そりゃそーだ! まあ、それを抜きにしてもあんまし真琴とは戦いたくねーけどさ」

「……うん、それはね」


 やっぱり知り合いとはやりづらいんだよな。こいつがまだ小さいからってのもあるけど、こいつの目的聞いちゃったからなあ。

 もちろんやるからには負けたくはないが、それとこれとはまた別だ。


「大体、お兄さんって対戦相手助けようとするじゃん? それも結構本気で危ない時に。あれってずるいよねぇ」

「え、なんで? どの辺が?」

「……なんでわかんないのかなあ……」

「なんでわかるんだろう……ん?」


 真琴のちょいと理不尽な話の途中だが、見覚えのある姿が視界に飛び込んできたので、思わず俺は言葉を切った。

 それに釣られる形で、真琴が俺の見ているほうへ顔を向ける。


 そこには、きょろきょろしながら観客席を歩く織江ちゃんの姿があった。服装も戦った時と変わらない。あの独特の格好を見間違えることはたぶんないだろう。


「あれ? あれって、さっき戦ってたお姉さんじゃない?」

「ああ、織江ちゃんだな。観戦にでも来たのかな」

「そういえば次、お姉さんが負けた人が出るもんね。気になるのかな?」

「なるだろうなあ……あの負けは、かなり気にしてたっぽいし」


 織江ちゃんを眺めながらそんなことを話していると、彼女のほうも俺たちに気づいたらしい。少し早足で、こちらに向かってやってきた。


「明良殿ではありませぬか」

「よう、さっきぶり。観戦か?」

「はい、せっかく教えていただいたので見ておこうかと……」


 返事をする織江ちゃんの視線が、真琴に注がれている。こいつにも輪っかがあるからな、同じ参加者ってことはわかるはずだし。

 その参加者が並んで観客席にいるのは、不思議に思えるかもしれないな。普通なら敵同士だし。


「こいつはこっち来てから知り合った真琴。一緒に観戦してるんだ」

「初めまして、お姉さん。龍治真琴です」

「あ、お……おお、ご丁寧に。拙者、織江伊月と申す。よしなに」


 相変わらずだなあ、この子は……。経験あるから思うんだけど、これって結構疲れるよね。精神的にさ。


「せっしゃ?」


 うわあああ真琴ー! そこには突っ込んじゃダメだ! 気になっても聞いちゃダメだ!

 子供らしい純粋な問いかけなんだろうけど! だってこれ、いわゆる中学生にありがちな勘違いした個性の類!


「何か?」


 織江ちゃんキメ顔で応じちゃうか!? そこでその顔できるか!?

 言われ慣れてるのか、すげー堂に入ったいい表情! めっちゃキリッてしてる! ここまで行ったらもう十分個性かもしれない!


 い、いや。頭の中で勝手に盛り上がるのはやめておこう、うん。


 素じゃないことは明らかだけど、織江ちゃんにとってこの口調は、それなりにアイデンティティなところがあるんだろう。だからこそのリアクションなんだろう。

 一方、真琴の反応は当然と言えるだろう。現代じゃありえないしな。ただ、あまりそこは気にしないでやってくれというか。こう、もう二、三年もすればお前もわかるようになると思うからさ。な?


 というわけで、ここは話題を切り替えておくのが年長者として正しい対処だろう。


「それよか、もしかして席探してる?」

「あ、はい。ですがどこも既に埋まっていて……」

「だろうなあ……」


 俺もマスラさんに譲ってもらって、かろうじてここに滑り込んだようなもんだしなあ。

 譲れるものなら譲ってやりたいが、俺もここ以外に当てがないからさすがにちょっと……。


 と思っていると、隣から服の裾を引っ張られた。


「どうした?」

「こうすれば空くんじゃないかなー、って」


 真琴はそう言うと、自分の席を立って俺の目の前まで来て、そのまま俺の膝の上に座った。軽い。


 ……あの、真琴君?


「えへへ」

「いや、えへへじゃなくてな?」

「……ダメ?」


 なんだこいつ、天使か。俺をどうするつもりだ。


「……いいけど」


 俺の返事に、真琴はにっこり笑うと織江ちゃんに顔を向ける。


「お兄さんもいいって。よかったらそこ、使っていいよ」

「え、はあ。その……」


 ちらり、と織江ちゃんの視線。


 まあうん。どうせ足しびれたりとか痛くなったりとかないだろうし……っと、視界の半分近くが真琴の頭で隠れてしまうな。

 えーっと、じゃあ、膝の上じゃなくて俺の股の間に収まってもらえば……うん見える、大丈夫そうだ。


 ……絵的にはかなり大丈夫じゃない感じになった気がする。うっかり腕を前に回そうものなら、いたいけな男の子を後ろから抱きすくめる不審者って構図じゃねーか、これ。

 いっそ俺が女だったら、もう少し健全な見た目になったんだろうが……ええい、考えても仕方ない!


 俺は半笑いで小さく頷いて、織江ちゃんに座れと手で促すのだった。

 ……なんかすごく負けた気分なんだが、なんだろうな?


「で、ではその、ありがたく」


 やけに複雑な表情で織江ちゃんは頷き、おずおずと俺の隣に座った。

「はい、ポップコーンよかったら」

「あ、ありがと……かたじけない」


 そこに真琴がポップコーンを渡し、織江ちゃんが箱を受け取る。

 ……食いきるまでもう少しってところか。長い戦いだな。


 そんなこんなで俺たちは三人になり、今までとはまた別の方向にも話が飛んで、なかなかに盛り上がる。


 聞けば、織江ちゃんは十四歳とのこと。リアルに中学二年生だったということで、彼女の言動に対してやたら納得いったのはここだけの話だ。


 懐かしいなあ。俺もそれくらいの時は、お気に入りだった漫画キャラの言動を……いや、なんでもない。

 ああなんでもないともさ。葬り去った過去の話だ。聞かなかったことにしてくれ。


 何もなかったから! 何もなかったんだってば!!


 察して!!

当作品を読んでいただきありがとうございます。

感想、誤字脱字報告、意見など、何でも大歓迎です!


亮と真琴の輪に、伊月が加わりましたとさ。

おかしいな、メインヒロインが一向に話に混ざってこない。

そして真琴がどんどんあざとくなっていく気がする……これが人間ショタコンの業なのかもしれません。


※風邪、なんとか治りました! 今日から平常運転に戻れると思います!


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