非リア、生まれる。
県立愛美ヶ丘高校。
県での頭の良さはベスト5。まぁ賢い高校だな。
俺は…まぁ良い方だな。正直言うと。
この高校でベスト10に入ってるし。
あ、でも授業聞かずにだけどな、俺は基本的に授業とか聞かねータチなんだ。
そう、今はちょうど四限目の最中。
体育館の屋根の上でひなたぼっこしている、俺は塚本 創。
趣味は昼寝。とくにこの体育館の屋根で寝るのはサイコーだ。
日陰もあるし、日なたもある。どちらでも選べるのだ。
ついでに言うと、屋根はめちゃくちゃ綺麗なので、寝っ転がってもなんら問題は無い。
どうやって体育館の屋根に上るのか、と言われれば、
「企業秘密」と普段は答える所だが、今回は特別に教えてやろう。
この学校には、本館と体育館をつなぐ道、即ち、「渡り廊下」が存在する。
渡り廊下には雨対策に屋根がついていて、
体育館の屋根へは、その雨対策の屋根の上を通って行く。
渡り廊下の屋根へは、学校の屋上から行く。
ウチの学校は5階の上にある、屋上がオープンだが、皆知らないポイントが一つだけある。
屋上の隅の隅。金網と貯水タンクに囲まれたその場所には、
一人が「かに歩き」で通れるくらいのスペースがあるのだ。
そのスペースに入ると、貯水タンク用の梯子が、5、4、3階と下に続いている。
梯子を降り、3階の所から非常階段の屋根に移れば、
その屋根からちょちょいと渡り廊下の屋根へ行く事が出来るのだ。
…長くなったが、理解できたか?
つまり、
学校の屋上の隅にある貯水タンクの裏に回り、梯子を降りて非常階段の屋根に移り、
そのまま渡り廊下の屋根へ歩いて行けば、体育館の屋根にたどり着くと言う事だ。
どうでもいい?それは心外だな。
このルートを発見するのにどれだけの面倒臭さがあったかも知らないで……。
まぁ、そんな努力のおかげで、俺は毎日、このスペースを一人で占領できている。
しかし、このスペースを知らず知らずのうちに侵食していってる輩がいる。
/=キーンコーンカーンコーン=/
おっ…チャイムが鳴った。そろそろ来るか……。
っ!来た…!来やがった……!この聖なる土地をけがす輩たち!
…「リア充」。
「リア充」とは、「リアルが充実している」という意味の略称。造語。
主に彼氏、彼女がいる輩の事を指す(他の意味はこの小説では扱わない)。
また、「恋している」を「半リア」、「リア充でない」を「非リア」と呼んだりする。
あーうっとうしい。
飯の時間になると必ずこの聖地から見える所でリア充たちが食事をするのだ。
俺は昼飯時でピークを迎えた自分の凹んだ腹を撫でると、
「リア充爆ぜろ……」とつぶやいた。