何で本人に聞かないんだよ
名前を借りました
私には婚約者クヌムがいる。
ヒロインとヒーローは、両片思いなのに、婚約者のヒーローは、噂とか人の話だけで判断して、ヒロインを誤解して、すれ違い、婚約破棄する。
なんだかんだあって、お互いに傷付くが、最後には誤解が解け、結ばれる…
という小説のヒロイン、ハトホルに、私は転生した。
え?噂を信じて誤解して婚約破棄までした婚約者に傷付けられたのに、結ばれるの?
何で許したヒロイン。
本人に話を聞きに来ないで、婚約者より噂を信じる男はいらなくない?
婚約者を信じなかった裏切り者のくせに、自分が悲劇のヒーローみたいな顔して。
ヒロインの愛の上に胡座をかいて、ヒロインを顧みなかったくせに。
ヒロインに甘えて、やり直そうとか言って、やり直してもらえると思うなんてバカにしている。
と、思っていたから、早く婚約がなくなれば良いと思っていた。
ある日、とうとう婚約破棄をされた。
「ハトホル!お前みたいな悪女とは婚約破棄だ!」
噂は、今、婚約者クヌムの隣にいる男爵令嬢セクメトが学園に流した嘘だ。
そう、嘘なのだ。全部嘘。悪意しかない。
私が、不正をして成績優秀者になったとか。
教師に賄賂を渡して成績を上げているとか。
沢山の男子生徒と遊び回っているとか。
領地の収入を私用に使っているとか。
話にならない。
男爵令嬢から聞いたそれらを、信じた愚かな婚約者。
貴族には向いてないんじゃない?
「かしこまりました」
さっさと別れよう。
「言い訳しないのか?」
しても、どうせ嘘だと決めつけ、セクメトを信じるんでしょ。
私は無言で、クヌムの前から去った。
私は、父の尻を叩き、婚約破棄の手続きを、爆速で終わらせた。
父同士が友人で、幼馴染だったから婚約をしただけであり、両家に不利益がある訳では無い。
父は、諦めて他の婚約者を探した。
クヌムの父は、申し訳無さそうにはしていたが、噂は信じているようだったからだ。
新しい婚約者が決まった。
新しい婚約者アモン様は、顔合わせの時に、噂は本当かどうか聞いてきた。
信頼できると思い、私は婚約を受け入れた。
アモン様は、きちんと私に噂の事を聞いたし、また、自分でも調べた。
落ち着いた雰囲気のアモン様は、きちんと私をエスコートしてくれたし、贈り物もしてくれた。
2人で出かけたり、一緒に勉強したりもした。
おかしいな?
元婚約者は、そんな事しなかったぞ。
これは、婚約破棄して正解だったんじゃないかな。
噂が嘘だと分かった。
学園側が、不正は無いし、賄賂など受取る訳が無い、と発表した為だ。
アモン様が、侯爵家の地位を利用して「不正を明らかにしろ」と言った為、学園が焦って調査をし、嘘だと分かって慌てて発表したのだ。
噂の発生源が誰かも。
「どうして言わなかったんだ!」
元婚約者が言った。
「どうして聞きに来なかったの?」
そもそも、聞きに来なかった自分が悪いのだ。
何でわざわざ、私を信じない人に弁明しに行かないといけないのか。
真実を知りたいなら自分で調べて。
「え?」
驚く元婚約者。何故驚く?普通は、自分から聞きに来るし、自分で調べるものだ。
幼児ではないのだし。
「婚約者だったのだから、本当のところはどうなのか、聞くのが普通じゃない?なのに、貴方は聞きにも来なかった。婚約者である私より、噂を信じて婚約破棄までした。真実を調べもしなかった、ご自分が悪いのでは?」
私が言うと
「そもそも、婚約者なのに何で本人に聞かないんだよ。だがもう遅い。今は私の婚約者だ。軽々しく話し掛けるな」
アモン様が言った。
元婚約者は項垂れて去った。
むしろ、何で私を責めてきたの?バカなの?あ、バカだった。
名前も言いたくない。さっさと忘れよう。忘れた。
覚えておく価値もない。
元婚約者は、周りから、噂に踊らされて婚約破棄した愚か者として、冷たい目で見られた。
アモン様は、噂に踊らされず真実をきちんと調べる堅実な者として信頼された。
セクメトは、悪質な嘘の噂を流し、婚約破棄までさせた詐欺師で、身分が上の伯爵令嬢である私に名誉毀損をしたと、社交界から締め出され、家から勘当された。今は平民になっているらしい。
元婚約者が好きで、婚約者の私が邪魔だったので、噂を流し、婚約破棄させたかったらしい。
元婚約者の両親も、家に損害を与えたと元婚約者を勘当し、セクメトと結婚させ、領地の片隅に家を与えた。
2人は、お互いのせいで平民になったと喧嘩ばかりだが、与えられた家を出たら生きていけないから、逃げられずにいた。
元婚約者の家も、私を信じなかったので、慰謝料すら払っていなかったから、侯爵家から相手にされなくなり、没落していった。
親子共々、噂に踊らされたダメ貴族だった。
けど、もうどうでもいい。無関係だし。
私とアモン様は、結婚して穏やかな家庭を築いた。
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