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何で本人に聞かないんだよ

作者: 井上さん
掲載日:2026/06/09

名前を借りました

 私には婚約者クヌムがいる。




 ヒロインとヒーローは、両片思いなのに、婚約者のヒーローは、噂とか人の話だけで判断して、ヒロインを誤解して、すれ違い、婚約破棄する。

 なんだかんだあって、お互いに傷付くが、最後には誤解が解け、結ばれる…



 という小説のヒロイン、ハトホルに、私は転生した。




 え?噂を信じて誤解して婚約破棄までした婚約者に傷付けられたのに、結ばれるの?


何で許したヒロイン。



 本人に話を聞きに来ないで、婚約者より噂を信じる男はいらなくない?



 婚約者を信じなかった裏切り者のくせに、自分が悲劇のヒーローみたいな顔して。

 ヒロインの愛の上に胡座をかいて、ヒロインを顧みなかったくせに。

 ヒロインに甘えて、やり直そうとか言って、やり直してもらえると思うなんてバカにしている。




 と、思っていたから、早く婚約がなくなれば良いと思っていた。






 ある日、とうとう婚約破棄をされた。


「ハトホル!お前みたいな悪女とは婚約破棄だ!」


 噂は、今、婚約者クヌムの隣にいる男爵令嬢セクメトが学園に流した嘘だ。


そう、嘘なのだ。全部嘘。悪意しかない。




私が、不正をして成績優秀者になったとか。

教師に賄賂を渡して成績を上げているとか。

沢山の男子生徒と遊び回っているとか。

領地の収入を私用に使っているとか。




 話にならない。

男爵令嬢から聞いたそれらを、信じた愚かな婚約者。


 貴族には向いてないんじゃない?


「かしこまりました」


 さっさと別れよう。


「言い訳しないのか?」


 しても、どうせ嘘だと決めつけ、セクメトを信じるんでしょ。


私は無言で、クヌムの前から去った。




 私は、父の尻を叩き、婚約破棄の手続きを、爆速で終わらせた。


 父同士が友人で、幼馴染だったから婚約をしただけであり、両家に不利益がある訳では無い。


 父は、諦めて他の婚約者を探した。

クヌムの父は、申し訳無さそうにはしていたが、噂は信じているようだったからだ。






 新しい婚約者が決まった。


新しい婚約者アモン様は、顔合わせの時に、噂は本当かどうか聞いてきた。


信頼できると思い、私は婚約を受け入れた。


アモン様は、きちんと私に噂の事を聞いたし、また、自分でも調べた。


 落ち着いた雰囲気のアモン様は、きちんと私をエスコートしてくれたし、贈り物もしてくれた。

2人で出かけたり、一緒に勉強したりもした。


 おかしいな?

元婚約者は、そんな事しなかったぞ。

これは、婚約破棄して正解だったんじゃないかな。






 噂が嘘だと分かった。


学園側が、不正は無いし、賄賂など受取る訳が無い、と発表した為だ。


 アモン様が、侯爵家の地位を利用して「不正を明らかにしろ」と言った為、学園が焦って調査をし、嘘だと分かって慌てて発表したのだ。


 噂の発生源が誰かも。


「どうして言わなかったんだ!」


 元婚約者が言った。


「どうして聞きに来なかったの?」


 そもそも、聞きに来なかった自分が悪いのだ。

何でわざわざ、私を信じない人に弁明しに行かないといけないのか。


 真実を知りたいなら自分で調べて。


「え?」


 驚く元婚約者。何故驚く?普通は、自分から聞きに来るし、自分で調べるものだ。

幼児ではないのだし。


「婚約者だったのだから、本当のところはどうなのか、聞くのが普通じゃない?なのに、貴方は聞きにも来なかった。婚約者である私より、噂を信じて婚約破棄までした。真実を調べもしなかった、ご自分が悪いのでは?」


 私が言うと


「そもそも、婚約者なのに何で本人に聞かないんだよ。だがもう遅い。今は私の婚約者だ。軽々しく話し掛けるな」


 アモン様が言った。


元婚約者は項垂れて去った。

むしろ、何で私を責めてきたの?バカなの?あ、バカだった。

名前も言いたくない。さっさと忘れよう。忘れた。

覚えておく価値もない。




 元婚約者は、周りから、噂に踊らされて婚約破棄した愚か者として、冷たい目で見られた。


 アモン様は、噂に踊らされず真実をきちんと調べる堅実な者として信頼された。



 セクメトは、悪質な嘘の噂を流し、婚約破棄までさせた詐欺師で、身分が上の伯爵令嬢である私に名誉毀損をしたと、社交界から締め出され、家から勘当された。今は平民になっているらしい。


 元婚約者が好きで、婚約者の私が邪魔だったので、噂を流し、婚約破棄させたかったらしい。


 元婚約者の両親も、家に損害を与えたと元婚約者を勘当し、セクメトと結婚させ、領地の片隅に家を与えた。


2人は、お互いのせいで平民になったと喧嘩ばかりだが、与えられた家を出たら生きていけないから、逃げられずにいた。


 元婚約者の家も、私を信じなかったので、慰謝料すら払っていなかったから、侯爵家から相手にされなくなり、没落していった。

親子共々、噂に踊らされたダメ貴族だった。



 けど、もうどうでもいい。無関係だし。


私とアモン様は、結婚して穏やかな家庭を築いた。

読んでいただきありがとうございます

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― 新着の感想 ―
>私が、不正をして成績優秀者になったとか。 →不正を見逃した学園が無能だと? >教師に賄賂を渡して成績を上げているとか。 →受け取った教師も悪いだろ。で誰? 教師一人への賄賂で全科目(科目ごとの担当教…
エジプト神話の神々の名前を使うなら、せめてハトホルの相手はアモンではなくホルスにして欲しかった(もしくはアモンの婚約者ならムト、とか)な……と思う以外は、サクッと読めて面白かったです。
だよねー 本人に聞けや そして自分で調べろや、貴族なら 噂に踊らされたら貴族としてやってけないよね
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