第6話 例外処理
最初に違和感が出たのは、
数字でも、掲示板でもなかった。
相談が、来なくなった。
正確には、
深い相談が来なくなった。
軽い愚痴。
確認だけの質問。
それで終わる。
途中で言葉を選ばなくていい話ばかりだ。
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理由は分かっている。
私が、
安全な答えしか返さないと
知られてしまったからだ。
問題にならない。
波風が立たない。
赤にならない。
それは、安心でもある。
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ある日、
珍しく長い相談が来た。
話は複雑だった。
感情も、絡まっていた。
私は、いつものように
頭の中で整理を始める。
どこを削るか。
どこを薄めるか。
そこで、手が止まった。
削ったら、
何も残らない気がした。
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「……これ、どうしたい?」
自分でも驚くほど、
直接的な言葉が出た。
相手は、少し黙ってから言った。
「本当は、
誰かにちゃんと聞いてほしかった」
その一言で、
分類が崩れた。
青でも、黄でもない。
赤にするほどでもない。
例外だ。
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私は、
「今日は結論を出さなくていい」と言った。
それは、
いつもの“様子見”とは違う。
処理を先延ばしにしただけだ。
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家に帰って、
ノートを開く。
その件の欄は、
空白にした。
色を付けなかった。
それだけで、
少し落ち着かなかった。
でも、
赤を付けるよりは、
ましだった。
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例外は、
処理できない。
だから、
存在しないことにする。
そうすれば、
安定は保たれる。
私はノートを閉じた。
例外処理は、
後回しにした。




