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捨て駒少年兵と死神騎士  作者: 彩ぺん


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6/7

守りたかった君と

 故郷のアストライアへ戻る前に、別の街へ寄ってサシャの職場へ行ったらクビになっていた。

 探してみたものの、彼女は見つからなかった。

 流行病が蔓延って、俺たちの様子を見るために一時的に帰ってきたように、アストライアにいるかも。

 もう仲間は俺しかいないけど、だからこそ、俺の帰りを待つために。

 アストライアに帰り、最後に住んだ極安アパートに行ってみたけど、他の住人がいただけ。

 元々の根城、スラムの一つにも行ったけどいない。

 死んだかも……と最悪な予想が脳裏をよぎったけど、サシャは図太くて強いから平気だろうと自分に言い聞かせる。根気よく探すしかない。

 

 予定通り騎士署へ行って、警務の仕事を手に入れた。

 狭くて汚いけど格安の寮で暮らせることになった。

 母が病で死に、暴力父を捨て、スラムの仲間になった元浮浪児の俺が警務騎士になれるなんて。

 ただし、準騎士のそのまた見習いからなので勉強と訓練から開始。

 準騎士になり、見回り仕事をしていたら、サシャと再会できた。

 多分、だけど。

 サシャらしき女性が横を通り過ぎたので、思わず振り返って叫んだ。


「サシャ!」


 俺の声で振り返った髪の短い少女は、瞬きを何度かして首を傾げた。


「騎士さんが私になんですか? 歩いていただけで何も悪いことはしてません」


 彼女は明らかに狼狽えた。しかし、悪いことをしたようには見えない。

 戦争前にしていた仕事、宿屋の使用人みたいな服装をしているし、痩せこけていない。

 髪にも肌にもちゃんと艶がある。まともな仕事をして、逞しく生きていると伝わってきて、体中が喜びに包まれた。


「俺だよマルクだ! お前、生きてたんだな!」


 すると、サシャは目を大きく見開いてから、屈託のない笑顔を浮かべた。


「マルクなの⁈ 何その格好! 生きてたんだはこっちの台詞だよ!」


 どちらともなく駆け寄って、思わず抱き合った。二年前は俺より背が高かったのに小さくなっている。

 その日、俺たちは仕事後に待ち合わせた。

 街を歩きながら、俺はサシャをレストランに誘った。夕焼けが消えかけている。

 今夜は星は見えそう。流れ星は落ちるだろうか。

 気取ったところで話したくないこともあるから、酒場にしようと言われた。


「何かあった? 大丈夫か?」


「図太いから平気だけど、あのクソ野郎って愚痴りたい話もあるよ。レストランじゃ無理でしょう?」


 騒がしい酒場の出入り口近くに座り、「出世したからご馳走する」と格好つけた。

 帰還祝いでご馳走すると返されて、喧嘩っ早いサシャと揉めるのは嫌だから、「お互いご馳走しよう。割り勘」と話をまとめる。

 血に塗れた戦場での話はしたくなくて、笑い話だけにして、サシャのあの後の話を聞き出す。

 サシャは相変わらず豪胆で、前職をクビになるとすぐ、この街であちこちの扉を叩いて仕事を得たという。

 門前払いばかりされていた時に、街中で貴族夫人を助けて、それがきっかけで領主屋敷で洗濯人だそうだ。


「だからそんなに手が荒れて痛そうなんだ」


「でもお給金が今までで一番いいの。制服も可愛いし、かなり狭いけど寮もあるから寒くないの」


「昔の薬のお礼にさ。俺が手にいいクリームを探してきてやるよ。署の医務官なら知ってそう」


「やった! お礼を受け取らないとしつこそうだからありがたくもらう。ありがとう」


 代わりに、「二度と金のために危ないことはするな」と念押しされた。

 仲間たちが流行病で死んでしまって、俺たちはこの世にたった二人の姉弟なんだからと。


「俺が兄貴だろう」


「はぁ? マルクのどこが兄なの⁈」


「俺は兄だし、俺には兄貴が増えた」


「へぇ。兵になって誰と仲良くなったの? それとも同僚?」


「超格好いい兄貴だから、自分が姉って言うなら秘密ー!」


「マルクのくせに生意気!」


 些細な喧嘩でさえ愛おしい平和な日常だ。

 こうして、俺は悪魔のような戦場や野戦病院から本当の意味で帰還した。

 死神騎士の部下になれた幸福が、俺を帰りたいところへ帰してくれた。

 毎日祈っているけど、どうか、彼が死の淵から甦り、回復していますように。

 

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